「サッカーは
周囲の喜怒哀楽を
揺り動かすことができる」長谷部誠選手(フランクフルト)
インタビュー
2021/06/11サッカーファミリーの声
日本サッカー協会(JFA)は2021年9月に創立100周年を迎えます。ここではサッカーの魅力について考えるきっかけにするために、さまざまなサッカーファミリーにインタビューを実施します。第6回目はSAMURAI BLUE(日本代表)でキャプテンを務めた長谷部誠選手(フランクフルト/ドイツ)に登場いただきました。 ○オンライン取材日:2021年5月17日
まずはサッカーとの出合いについて聞かせてください。
明確に覚えているわけではないですが、両親から聞いたところによると、3歳の時に地元である静岡県藤枝市のサッカークラブで始めました。家でもサッカーばかりしていて、両親や祖父が相手しきれなくなった、ということだそうです。ブラジルの元プロ選手が教えてくれるようなクラブで、本来は3歳では入れなかったのですが、強引に入れてもらいました。
サッカーと出合ったことで、人生はどのように豊かになったのでしょうか。
サッカーを通じた人との出会いが、僕の人生に彩りや豊かさを与えてくれました。自分一人ではここまで到達することはできなかったですし、チームメイトやライバルなど、サッカーを通じて出会った人たちが今の自分の財産になっている気がします。
サッカーの魅力はどこにあると思いますか?
サッカーはチームスポーツであり、チームメイトや監督、スタッフだけでなく、その家族やファン・サポーターなど、多くの人間が関わっていることをイメージしなければなりません。その中で、自分のプレーで周囲の人たちの喜怒哀楽を揺り動かすことができる点が魅力だと思います。
これまでのサッカー人生で特に印象深い出来事を教えてください。
今、日本ユニセフ協会大使をやらせていただいていて、エチオピアやバングラデシュ、ギリシャなどを訪問して厳しい環境で生活する子どもたちとサッカーをしたのですが、言葉が通じなくても、ボールが1個あれば会話ができるんですよね。それは本当にサッカーのすごいところだと思います。僕のことをよく知らなくても、プロ選手だということで一緒にプレーをすると子どもたちが喜んでくれる。サッカーをやっていてよかったな、と思う瞬間ですね。
長谷部選手は長い間、SAMURAI BLUE(日本代表)のキャプテンを務めました。その間はさまざまな感情があったと思います。
もちろんプレッシャーありましたし、キャプテンは日本サッカーの象徴となる立ち位置であり、ピッチ上だけではなくピッチ外の責任も伴うと思っていたので、背負う必要はなかったのかもしれないですけど、いろいろなものを背負っていました。逆に、誰もが務められるものではないという誇りも感じていましたし、最初の頃はあまり余裕がなかったですが、徐々にキャプテンの立場を楽しむ心も芽生え、時間が経つにつれてそういったバランス感覚を整えられるようになりました。
長谷部選手にとってサッカーはどのような存在でしょうか。
自分の人生に彩りを与えてくれるものですね。サッカーを通して酸いも甘いも経験しましたし、その経験が自分の人間形成にすごく大きな影響を与えてくれました。
JFAは今年9月に100周年を迎えます。
日本サッカーの歴史は浅いと言われますが、それでもJFAの歴史はこれだけ長いんだな、ということを感じますし、自分が今こうしてヨーロッパでプレーできているのも、諸先輩方が土台を築いてきてくれたからこそであって、それに対する感謝の思いは本当に強く持っています。これからの若い世代にも感じてほしい部分ですし、僕自身も今後の日本サッカーの発展の一部でありたいというか、先輩方から受け継いだものをさらに良い形で後輩たちにつないでいかなければいけないと感じています。
未来を担う子どもたちへのメッセージをお願いします。
Jリーグができて、FIFAワールドカップに出場して、海外で活躍する選手が増えて、というここまでの日本サッカーの成長はすごく順調で、比較的、想像しやすいものだったと思います。ただ、ここからが本当に難しいと僕は思っていて、日本代表がワールドカップで優勝するため、UEFAチャンピオンズリーグの決勝に日本人選手が出場するためには、想像を超えるものが出てこなければならないと思っています。これからの子どもたちにとっては非常に難しい世界が待っていると思いますが、想像をはるかに超えるものを勝ち取ってほしいですし、そのためにどんどん考えてトライしてほしいです。もちろん僕自身もトライし続けたいと思っているので、一緒に高いところを目指していきましょう。
これからの100年間で、サッカーやJFAに期待することを教えてください。
日本サッカー界に関わる全ての人が、日本サッカーに対する情熱を、これからも熱く持ち続けてほしいです。ヨーロッパにいるとサッカーが文化として根付いていることを感じますが、日本でもそうなるように変えていくのは簡単なことではないと思います。環境面、サッカーに対する国民の関心の高さ、地域に根差したクラブのシステムなど、そういうものはまだまだ及ばない部分があります。でも、日本にもそのポテンシャルはあると信じているので、サッカーファミリーの力を結集してより良いものにしていくこと、そして近い将来、SAMURAI BLUEがワールドカップで優勝し、チャンピオンズリーグ決勝で日本人選手が活躍する姿を、一人のサッカー人として期待しています。
- プロフィール
- 長谷部 誠(はせべ まこと)
1984年1月18日生まれ、静岡県出身
幼少期からサッカーを始め、藤枝東高校を経て、02年に浦和レッズに加入する。プロ2年目から頭角を現し、2006年に日本代表に初選出。07年からはドイツに渡り、ヴォルフスブルクでプレー。08年のキリンカップを機に不動のボランチとして定着し、10年のFIFAワールドカップ南アフリカからチームのキャプテンを任された。以降、14年と18年のワールドカップでもキャプテンマークを巻いて出場した。14-15シーズンからはフランクフルトに加入し、7シーズン目を迎えた。