「サッカーは
一番好きなスポーツ。
人間として成長するために
今でも大事なもの」前田遼一さん
(ジュビロ磐田U-18コーチ)インタビュー
2021/07/16サッカーファミリーの声
日本サッカー協会(JFA)は2021年9月に創立100周年を迎えます。ここではサッカーの魅力について考えるきっかけにするために、さまざまなサッカーファミリーにインタビューを実施します。第11回目は、元日本代表で現在はジュビロ磐田U-18でコーチを務める前田遼一さんに登場いただきました。 ○オンライン取材日:2021年6月17日
サッカーと出合ったきっかけを教えてください。
幼稚園生の頃、両親が僕に何かスポーツをやらせたいということでサッカーチームに入ったのが最初です。当時、アメリカに住んでいましたが、現地の子たちと一緒にボールを蹴ったことを記憶しています。小学2年生の時に帰国し、当初は遊びで野球をしていましたが、小学3年生で横浜市に転居し、サッカーが盛んな地域だったので、クラブチームに入りました。日本体育大学サッカー部の方がコーチとして来てくれるチームで、サッカーの楽しさ、厳しさを教えてくれました。
その後、サッカーに魅了されていった理由を教えてください。
そのクラブチームに入ってからもいろいろなスポーツが好きで、たまに野球やバスケットボール、テニスなどを家族や友達としていました。でも、ボールを蹴ったり、ドリブルで相手を抜いたりというサッカーの動きに楽しさを感じていました。
サッカーと出合ったことで、人生はどのように豊かになったのでしょうか。
僕は暁星中学校、暁星高校に進みましたけど、サッカーをやっていなかったら学校内の人だけとしか知り合えなかったと思います。サッカーをすることによって選抜チームやトレセン活動で他の中学、高校の選手や先生と知り合い、他の学校には違う考えを持っている人、全く違う感覚の人が多いと知り、僕自身も枠にとらわれない考え方ができるようになりました。
これまでのサッカー人生で特に印象深い出来事を教えてください。
学生時代の思い出としては、サッカー部の仲間たちと試合後にいろいろな話をしたり、帰宅途中にみんなでご飯を食べたりと、サッカーで出会えた仲間たちと、サッカー以外の時間を一緒に過ごせたことが強く印象に残っています。オン・ザ・ピッチの話では、日本代表の試合に出場して国歌を聞く瞬間とか、満員の国立競技場でナビスコカップに優勝した時の風景(2010シーズン、決勝でサンフレッチェ広島に5-3で勝利)は忘れられないですね。
サッカーを通じて学んだことはありますか?
中学、高校の時は、チームスポーツといっても一人でやっている感覚がけっこう強くて、ボールを持ったらすぐにドリブルを仕掛けるようなスタイルでした。プロ入り後は、サッカーがチームスポーツであることを改めて教えていただきました。特にジュビロ磐田はチームプレーを重視するチームでしたし、その中で自分の個を出すことの大切さを学びました。
改めて、前田さんにとってサッカーはどのような存在ですか?
ボールを蹴るのが楽しいというところから始めて、中学、高校では部活で真剣に取り組み、毎日の練習が本当にきつかったけどやっぱり大好きで。それがプロになったら今度は仕事になり、自分の中で少しずつ存在意義が変わっていったんですけど、やっぱり一番好きなスポーツですし、選手として、人間として成長するために、今でも大事なものですね。
今春から磐田のU-18でコーチをされていますが、指導者としての生活はいかがですか?
やっと少し慣れてきた感じです。現役時代とは生活リズムが異なりますし、夜の練習が多いので最初は戸惑いがありましたが、そういうことにもだいぶ慣れました。いろいろ勉強中ですが、楽しくやらせていただいています。
現役時代は寡黙なイメージがありました。指導者に転身されて、選手に言葉で伝えることの難しさは感じていますか?
すごく感じています。喋りがそんなにうまくないのは自覚していますし、言葉でうまく伝えられていない部分もありますけど、自分が伝えようとしっかり話せば理解してもらえると思っているので、試行錯誤しながら楽しくやらせてもらっています。
JFAは今年9月に100周年を迎えます。
まずはそんなに長いんだ、と率直に思いました。U-18日本代表の候補に呼んでいただいた時、監督やコーチの他にたまに来てくださる指導者の方がいたんですが、そういった方たちが後にクラブの監督やコーチになっているので、大勢の指導者を育成されているんだな、と感じたことを覚えています。代表キットマネージャーの山根威信さんは今でも代表で活躍されていますし、長年、支えてくださる方が多い印象があります。
未来を担う子どもたちへのメッセージをお願いします。
僕の若い頃に比べて、日本から世界へと羽ばたいていく選手が格段に多くなっています。僕自身は海外に行くことができなかったので、その姿を見るとうらやましくもありますし、これからも日本を代表して各国のリーグに移籍し、活躍する選手が増えていくことを望んでいます。日本の選手は素晴らしいとさらに認めてもらえるよう、子どもたちには日々、努力してほしいです。
これからの100年間でサッカーやJFAに期待することを教えてください。
JリーグやWEリーグ、フットサルなど、国内のサッカーのレベルが上がり、これまで以上に人気が出て盛り上がってほしいですし、日本国内のリーグが世界に認められることを期待しています。僕自身もその力になりたいと思っています。
- プロフィール
- 前田 遼一(まえだ りょういち)
1981年10月9日生まれ、兵庫県出身
幼少期をアメリカで過ごし、帰国後、本格的にサッカーを始める。暁星中学校、暁星高校に進学すると、各年代の日本代表に選出されるなどプロ注目の選手に成長。2000年にジュビロ磐田に加入、徐々に出場機会を増やすと左右両足、ヘディングでゴールを奪う万能型FWとして得点を量産。2009、2010シーズンには2年連続得点王に輝く。2006年に日本代表に初選出され、以後33試合に出場し10得点を記録した。FC東京移籍を経て、FC岐阜で2020シーズンまでプレーし現役を引退した。J1リーグ429試合、154ゴールは歴代5位の記録。2021年から古巣の磐田でU-18のコーチに就任した。