「サッカーは
取り組みやすく、奥が深い。
可能性はますます
広がっていくのではないか」荒蒔康一郎会長
(日本サッカー後援会)インタビュー
2021/08/27サッカーファミリーの声
日本サッカー協会(JFA)は2021年9月に創立100周年を迎えます。ここではサッカーの魅力について考えるきっかけにするために、さまざまなサッカーファミリーにインタビューを実施します。第16回目はキリンホールディングス株式会社元会長で、現在は日本サッカー後援会の会長を務める荒蒔康一郎さんに登場いただきました。 ○オンライン取材日:2021年8月11日
幼少期や学生時代、スポーツとどのように関わってこられたのでしょうか。
子どもの頃は草野球などはやっていました。クラブに入って本格的に取り組んだのは、1960年に東京大学に進学してヨット部に入ったのが最初です。ちょうどローマオリンピックが開催された年で、大学の先輩が3人ほどセーリング競技に出場したので、1年の夏休みにその先輩たちと一緒に合宿をしたことを覚えています。
サッカーとの出合いについて教えてください。
大学で体育実技の授業があり、いくつかの競技の中からサッカーを選びました。実はその時の担当が、竹腰重丸先生(元サッカー日本代表、日本代表監督)だったんです。また、大学のグラウンドで時々リーグ戦が行われていて、ある試合で「ずいぶんスピーディーな選手がいるな」と思いながら見ていたら、実はそれが杉山隆一選手(元サッカー日本代表)でした。
その後、1964年にキリンビール株式会社に入社されます。同社がサッカー日本代表のサポートを始めたのは1978年ですが、当時、サッカーやJFAはどのような存在だったのでしょうか。
1976年にキリンが本社を原宿に移転し、線路を挟んで向かい合う位置にあった岸記念体育会館にJFAさんのオフィスが入っていました。当時の小西秀次社長が近隣にあいさつ回りをし、その時にJFAさんにも伺ったそうです。小西社長自身はサッカーにあまり関心がなかったようですが、秘書役の久保田秀一さんが大学でサッカーをしていた方で、小西社長から「サッカーはどういったスポーツなんだ?」と聞かれて「世界的に人気のスポーツです。オリンピックは有名ですが、もっとすごいワールドカップという大会があります」と答えたそうです。その後、JFAさんからサポートの依頼があり、協賛することになったと聞いています。
荒蒔会長ご自身は、サッカーにどのような魅力を感じていますか?
キリングループがサッカーをサポートするようになってから、私自身もサッカーにより強い関心を持つようになりました。今では大ファンです。
サッカーを通じて特に印象に残っている出来事を教えてください。
実際にスタジアムで観戦した2002年のFIFAワールドカップのドイツ対ブラジルの決勝戦です。ブラジルが勝った後、ドイツのGKオリバー・カーン選手がゴールポストにもたれかかり、しばらく動かなかったのが印象的でした。また、2006年のドイツ大会も記憶に残っています。日本とブラジルの試合も強烈でしたが、ヨーロッパの人々のサッカーに対する関心の高さ、ワールドカップの試合に一喜一憂している様子、行くところ全てがサッカーで満たされている様子を見て、サッカーは本当に世界最大のスポーツなんだと実感しました。
サッカーの可能性についてどのように感じていますか?
サッカーはルールも非常にシンプルですし、ボールが1個あればどこでもできるという非常に優れた特性を持っているスポーツです。取り組みやすく、なおかつ奥が深い。大衆性も高い。見る側も非常にエキサイティングな場面に遭遇できるということで、サッカーの可能性はますます広がっていくのではないかと思います。
日本サッカー後援会は1977年以来、JFAをはじめ関連団体の諸活動に対して資金面での援助をされており、会員の方々の会費が日本サッカーのさらなる普及と日本代表の強化に生かされています。荒蒔会長は2015年から現職を務められていますが、後援会長としてどのような思いを抱いているのでしょうか?
サッカーは世界で最も多くの人が楽しんでいるスポーツです。一方で、障がい者サッカーや女子サッカーなど、まだまだ広がっていく可能性があります。国や民族の壁を越えて誰もが楽しめる素晴らしいスポーツだと思います。私自身は、日本サッカー後援会はサッカーの普及に少しでも役に立ちたいという思いで地道な活動を続けています。会員の皆さんだけでなく、その周辺の人たちにもサッカーの良さを広めていく努力をしていきたいと考えています。
JFAは今年9月に創設100周年を迎えます。率直なご感想をお願いします。
日本という国の長い歴史を考えると、100年というのは大正時代からの話になるので、それほど古くはないと思います。ですが、これだけサッカーが広まり、みんなに愛されるスポーツとなり、多くの人が関心を持つようになったのは、この100年間の成果だと思います。これを一つの節目として、サッカーの世界でさらに大きく羽ばたいていってほしいと思っています。
これからの100年間でサッカーやJFAに期待することを教えてください。
JFAはサッカーのすそ野を広げ、人々の関心を高める努力を続けられています。サッカーの本当の良さを多くの人に伝え、それを世界の人たちと共有することを一層、進めていかなければいけないですし、JFAにはその中心的な役割を担ってほしいと思っています。
- プロフィール
- 荒蒔 康一郎(あらまき こういちろう)
1939年生まれ、茨城県出身
1964年東京大学農学部卒業後、同年キリンビール株式会社入社。2001年に代表取締役社長、2006年に代表取締役会長を歴任し、2007年にキリンホールディングス株式会社代表取締役会長に就任。2012年に同社相談役を退任。2015年に一般財団法人日本サッカー後援会の会長に就任した。 - 日本サッカー後援会はこちら(https://www.jssc-soccer.jp/)