2021.12.29
第30回全日本高等学校女子サッカー選手権大会が2022年1月3日(月)に開幕します。高校日本一を決する大会に出場した選手はどのような青春時代を過ごしてきたのか。ここでは名門・常盤木学園高校で大会に出場した小林里歌子選手(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)の高校時代のストーリーをお届けします。
日テレ・東京ヴェルディベレーザで10番を背負う小林里歌子は、幼少期から兄である小林成豪(現・大分トリニータ)と一緒にボールを蹴っていた。「兄の試合について行って、試合をしている横でボールを蹴ったり、リフティングをしたりしていた」という少女が、小学生になると同時に兄と同じ若草少年サッカークラブに入団したのは自然な流れだった。
中学1年の時、小林は初めてJFAエリートプログラム女子U-13のトレーニングキャンプに参加した。その時に初めて「なでしこジャパンに入りたい」という思いが沸き上がり、年代別の日本女子選抜の活動に何度も参加する中で「高校に進学したら、もっとレベルの高いところでサッカーをしたい」と考えるようになっていった。寮生活ができ、高校の女子サッカー部で一番強いところに行きたい――小林は2013年、常盤木学園高校へと進学した。
当時の常盤木学園は、全日本高等学校女子サッカー選手権大会において2008年度の第17回大会から2連覇、2010年度・第19回大会の準優勝を挟み、続く2011年度の第20回大会から再び2連覇と、まさに“常勝軍団”だった。年代別代表に名を連ねる選手もいる環境だったが、小林は「近い年代の選手と切磋琢磨できるのですごく楽しかったですし、入った当初から『やれなくはないな』と思っていました」という。
その言葉どおり、小林は女子選手権も1年時の第22回大会から出場している。当時は「正直、女子選手権がどんな大会で、みんながどういう思いで臨んでいる大会なのかがよく分かっていなかった」という。それでも、後半から出場して白木星(現・マイナビ仙台レディース)の決勝点をアシストした準々決勝の岡山県作陽高校戦を「すごく楽しくプレーできた」と表現する一方、1-1の同点からPK戦の末に惜敗した準決勝の藤枝順心高校戦では「すごく緊張して、ガチガチに体が固まってしまった」と振り返るなど、大会を通じてさまざまな感情を経験した。この大会での敗北は、3年生の引退を意味する。号泣する先輩たちの姿を見て「もう一緒にできないのか……」という寂しさも味わった。
常盤木学園で1年生ながら主力を務めていた小林は、必然的に年代別女子代表にも名を連ねるようになっていった。1年時には中国で行われたAFC U-16女子選手権大会に出場して大会得点王に輝き、1年から2年に上がるタイミングでは、コスタリカで開催されたFIFA U-17女子ワールドカップでU-17女子日本代表の世界一に貢献した。小林は年代別女子代表での活動について「すごく楽しくて、レベルの高いところに行けるという感覚で参加していた」と語っている。そこで学んだこと、経験したことを、常盤木学園に戻ってチームに還元できる部分にも意義を見いだしていたという。
一方で、「遠征に行っている間にチーム内の決まり事などが大きく変わっていて、戸惑うことも多かった」と苦笑する。一緒に年代別代表に招集されることの多かった市瀬菜々(現・マイナビ仙台レディース)とともに「帰ってくるたびに驚いていた」というが、もちろんその時はチームメートがサポートしてくれた。定期的にチームを離れることで仲間たちとの絆はさらに深まり、小林自身も成長を遂げていった。
常盤木学園は当時、なでしこ2部にあたるチャレンジリーグにも参加していた。大人たちと対戦するリーグ戦で、2年生の小林は1学年上の白木や西川彩華(現INAC神戸レオネッサ)ら、年代別代表女子の選手たちとともに中軸を担った。チャレンジリーグでは19試合に出場し、14ゴールを記録。「自分らしくプレーできた」と振り返る小林は、自覚と責任感を胸に2年時の女子選手権・第23回大会に臨んだ。
前年度までは静岡県磐田市で開催されていたが、この年からは神戸市を中心とした兵庫県内での開催に変更になった。小林にとっては生まれ育った地元での大会。「自分が知っているピッチばかりでやりやすかったし、家族はもちろん、知り合いも見に来てくれてうれしかった」という環境の中、トップ下で出場した小林は躍動を見せる。
初戦の相手は岡山県作陽。前年度の大会では勝利した相手だが、実はこの年、夏の全国高等学校総合体育大会では2回戦で激突し、PK戦で敗れている。それもあって「みんな気合が入っていた」というこの試合で、小林は2ゴールを挙げる活躍を見せ、チームを4-1の勝利に導いた。
常盤木学園は2回戦で星槎国際湘南を2-1、準々決勝で聖和学園を9-1と下し、順調に勝ち進んだ。小林自身も2回戦で2ゴール、準々決勝で1ゴールと得点を積み重ねている。迎えた準決勝の藤枝順心戦は、1-1の同点からPK戦突入と、前回大会と全く同じ展開となった。小林は4人目のキッカーを務めて見事に成功させ、チームも昨年のリベンジを果たして決勝へと駒を進めた。
大会期間:2022年1月3日(月)~2022年1月9日(日)
大会会場:三木総合防災公園(兵庫県三木市)、五色台運動公園(兵庫県洲本市)、いぶきの森球技場(兵庫県神戸市)、ノエビアスタジアム神戸(兵庫県神戸市)