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監督はすべてを知っている ~技術委員長 反町康治「サッカーを語ろう」第5回~

2020年12月29日

監督はすべてを知っている ~技術委員長 反町康治「サッカーを語ろう」第5回~

2020年も残りわずかとなった。サムライブルーのこの1年を振り返ったとき、10月オランダ、11月オーストリアで計4試合の国際試合ができたことは本当に大きかった。FIFAワールドカップカタール大会のアジア2次予選の残り試合を含め、代表戦が軒並み延期・中止されていく中、国際サッカー連盟(FIFA)が定めるインターナショナルウィンドウ(IW)を活用したこのチャレンジがなければ、サムライブルーのチームとしての活動は「無」に等しいものになるところだった。同時期に日本と同じく欧州で試合を行った他国の代表チームから新型コロナの感染者が出たことを思うと、無事にやりとげられて本当に良かったと思う。10月は9日にカメルーン(△0-0)、13日にコートジボワール(○1-0)とユトレヒトで、11月は13日にパナマ(○1-0)、17日にメキシコ(●0-2)とグラーツで戦った。短期間とはいえ、選手が一つの場所に集まって寝泊まりし、集中的にトレーニングをともにし、試合を行えたことは、すべてが21年に控える東京オリンピック、FIFAワールドカップアジア2次、最終予選の強化につながったと思っている。

今回欧州で組んだ4試合の中でメキシコ戦は最初に決まった試合だった。日本がゴールラッシュできるような相手とマッチメークしても強化にならないし、とにかく強い相手と戦いたいという現場サイドの要請に沿ったものだった。FIFAランキング11位のメキシコに敗れ、森保一監督とチームに対してネガティブな論調があることは耳にしているが、メキシコのような世界のトップトップのチームと対戦すれば、思うに任せないところがあらわになるのは、ある意味で想定内のことだ。私もJリーグの監督をしていたから分かるのだが、シーズン前とかシーズン中の空いた期間にどんな相手とトレーニングマッチを組むかは結構気を使った。やはり、ガチンコの勝負になって拮抗した試合になる方が課題は浮き彫りになる。評価も定めやすい。格下相手には華麗に何でもできるけれどレベルがちょっと上がると消えてしまう選手もいれば、逆に相手が強くなればなるほど力を発揮する、いぶし銀のような選手もいる。強化を目的とした試合は「5点も取れてうれしい。強くなったな」とはならないし、負けても「あそこで取った1点は価値があるな」と感じることもある。

人々は日本の連戦連勝を期待するのかもしれないが、FIFAランキングでアジア最上位の27位まで来たサムライブルーが自分たちより強い相手を求めてマッチメークし、実現させれば、そんなことにならないのは考えればわかることだ。圧倒的に情報量に差があるので仕方がないとはいえ、考え方のずれとしては、1998年のFIFAワールドカップで地元優勝したフランスのエメ・ジャケ監督とレキップの確執が有名だ。93年にコーチから昇格したジャケ監督はそれまで代表の主力だったエリック・カントナやダヴィッド・ジノラらスーパースターを外し、ジヌディーヌ・ジダンを中心とするチームづくりに移行した。フランス最大のスポーツ専門紙のレキップはそんな監督を批判し続けた。地元優勝を飾った直後の晴れの共同記者会見でジャケ監督はレキップの記者の名前を挙げ、それまでためにためた怒りをぶつけた。よほど腹に据えかねたのだろう。ただ、チームというのは不思議なもので、外部との間でそういういろいろな摩擦があった方がチームは案外強くなったりするものである。人間性を疑うような、目や耳を疑うような論調は論外としても、ただただ褒めてばかりというのも気持ちが悪い。ある程度の緊張感は両者の間に必要なのだろう。

監督は目の前の試合に勝つことと同時にもっと先を見据えてもいる。目の前の勝ち負けに一喜一憂できない立場だ。どうすれば、ターゲットと定めた大会で、チームとして90分間、機能し協調して戦えるようになるのかに常に心を砕いている。誰か一人の力に頼るようなチームづくりでは、その選手がケガで欠けようものならすべてが台無しになる。どんな選手であれチームの中の一人。そういう意味で、今季のJリーグを独走優勝した川崎フロンターレは理想的なチームづくりに成功したように思う。今季のJリーグのMVPは得点王の柏のオルンガが獲得したが、川崎からは誰をMVPに推していいのか分からない事情もあったように思う。誰が出てもチーム力は落ちないしスタイルも変わらない。どこからでも攻められて、得点者も多数に分散した。2位に食い込んだガンバ大阪もそうだが、三笘薫、田中碧のようにアカデミー出身の選手も戦力化できているのも理想的だった。

21年のサムライブルーは3月と6月にFIFAワールドカップアジア2次予選の残り4試合を行う予定だ。8月、10月、11月のIWのどこかで同最終予選も始まるだろう。U-24日本代表は3月、6月、7月と強化試合を重ね、本番の東京オリンピック(7月22日~8月7日)に臨む。非常に残念なのは、5月にインドネシアで開催予定だったU-20ワールドカップが中止になってしまったことだ。U-20ワールドカップ、東京オリンピックで台頭する若い力も吸い上げてFIFAワールドカップアジア最終予選に臨む。そんな構想に、サムライブルー一歩手前の若い力を鍛える舞台が一つなくなったことで、ひびが入ってしまった。

U-20ワールドカップの中止が示すように、コロナ禍は依然として予断を許さない。今年がそうだったように、貴重な代表の活動期間が削られるほど、チームとしてのコンセプトの落とし込み、連係連動の浸透に支障をきたす。それをカバーするために、日本代表のスタッフは朝から晩まで、セレクトすべき選手たちのプレーを映像でチェックしている。Jリーガーの現地視察も欠かさない。ただ、そうした外から見ているだけ、画面越しだけでは分からないことが、選手にはやはりある。実際に集まって一緒に活動しないと見えない部分がある。
そこにはうれしい驚きもあって、例えば、吉田麻也(サンプドリア)は10月、11月の欧州合宿で私を感激させてくれた。彼を最初に代表チームに呼んだのは、08年北京五輪監督時代の私だが、本大会の08年になるまで私の頭の中に「吉田のヨの字もなかった」というのが正直なところ。それが視察に訪れた試合で「こいつはモノが違う」と感じてチームに招き入れた。「私が選んだのではなく、彼が選ばせた」という感じだった。

今回、欧州で吉田と久しぶりに対面したが、メディアに対する受け答えにしてもチーム内での立ち居振る舞いにしても「すごいなあ」と仰ぎ見るような思いがした。プレーヤーとしてのみならず、人間的な成長に感じ入ったのだ。GKの川島永嗣(ストラスブール)も常に前向きだ。弱音を絶対に吐かない。所属クラブや代表の立場・状況で練習態度がぶれるとか、そういうことが一切ない。通常の練習の後も居残りで個人的な鍛錬にこつこつと取り組んでいた。サムライブルーとは、そういう選手の集合体であり、生半可な選手では生き残れないことをあらためて感じた。コロナ禍で行動を厳しく制限したキャンプの形態を取らざるを得なくなり、かえって優れた人間性がより浮き彫りになったというか。団体行動ができない、決めたルールを守れない、そんな次元の低いところでうろうろしている人間は皆無だ。社会性はしっかり備えた上で、サッカーIQの高さで勝負する者、何も考えていないようでたくさんの攻撃のアイデアを持っている者、いろんな個性をピッチ上では発揮できる。そんな選手が今のサムライブルーはそろっていると感じる。

選手のそんな特長をどう生かし、チームを回していくか。与えられる時間はコロナ禍で削られるばかりだが、森保監督も横内昭展コーチも選手のセレクトにいろいろな制約がある中で、いろいろな情報を手元に集め、先を見据え、しっかり取り組んでくれていると思う。読者の皆さんに強調しておきたいのは「監督は、チームに関する、すべてを知っている」ということだ。監督というのは、余人にはうかがい知れぬ問題に直面しながら、常に圧倒的な情報量をもとに総合的に判断して決断を下している。

さて、新型コロナという未知のウイルスの脅威にさらされたこの1年は、誰にとっても厳しいことばかりだったと思います。21年は少しでも明るい展望が開けることを心から祈っています。良いお年をお迎えください。

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