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2023年のはじめに ~技術委員長 反町康治「サッカーを語ろう」第26回~

2023年01月16日

2023年のはじめに ~技術委員長 反町康治「サッカーを語ろう」第26回~

寒中御見舞申し上げます。

2023年の抱負を述べる前に、やはり昨年のFIFAワールドカップカタール2022についての総括をしておきたい。結果については、いまさら詳述する必要はないだろう。SAMURAI BLUE(日本代表)は優勝経験のあるドイツ、スペインを撃破し、1次リーグE組を見事に首位で通過した。残念ながらラウンド16の戦いで前回準優勝のクロアチアにPK戦で敗れ、目標に掲げたベスト8以上という「新しい景色」を見ることはできなかった。それでも森保一監督を中心に選手、スタッフが一丸となった戦いは日本中を感動で満たし、大きな賛辞を浴びることになった。私としては悔しさが先に立ち、多くの人に「感動をありがとう」と感謝されて正直なところ戸惑っている部分もある。それでも、スポーツの一番の良さであるライブの感動、つくりものではないノンフィクションの感動というものを、日本の皆様に届けられたという手応えはある。その発信源となったのはSAMURAI BLUEの面々ではあるが、JFAの田嶋幸三会長が繰り返し語るように、キッズからシニアまで日本サッカーの発展には多くの人々が「ファミリー」として関わっており、それぞれの場所での地道な努力の積み重ねがあってこそ、SAMURAI BLUEの活躍もあるという認識も絶対に忘れてはならないと思うのである。この場を借りて私もサッカーに関わるすべての人に、応援して下さったすべての皆様に「本当にありがとうございました」とお伝えしたい。

技術委員会を司る立場として帰国後、ただちに技術委員会強化部会を開催し、そしてその後は技術委員会を開催しそれぞれのメンバーを招集した。カタールでの日本の戦いを検証するために。そこで活発かつ冷静な議論を重ね、最終的に森保一監督の再任を技術委員会から上程し、12月28日のJFA臨時理事会で承認を得られた。契約更新で森保監督と合意できたことを大変うれしく思っている。FIFAワールドカップを戦い終えた監督に、引き続き指揮を執ってもらうのは日本サッカー界では初めてのこと。いろんな意見があることは承知しているが、世界のサッカーの流れを踏まえた上で技術委員会が出した答申には自信を持っている。

サッカーの試合を戦術面から腑分けすると、個人、グループ、チーム、ゲームという各層に分かれると思っている。個人戦術やグループ戦術はプロになる前に身につけるものであり、どの国のどのチームにも共通する普遍的なベースの部分となる。チーム戦術やゲーム戦術になると監督の「色」が出て、手腕が問われるところでもある。SAMURAI BLUEを率いてからの森保監督はチーム戦術を浸透させることに重きを置いてやってきた。その上で、本番で戦うドイツやスペインの分析をすると、これまで積み上げてきたチーム戦術だけでは勝ちきれないものが見えてきた。勝つ確率を少しでも高めるために、対戦相手に対応していけるゲーム戦術をトレーニングで加えていった。それまでのチーム戦術だけに固執してドイツやスペインに粉砕されたら感動もへったくれもないわけだから、勝つために理にかなった戦術の採用だったと我々は評価している。採用するゲーム戦術を短期間の大会で浸透させていくには、それに応えられる選手がいないと難しい。幸い、その変更に耐えられる人選を今回はしていた。ドイツ、スペインと戦うために、こちらは最終ラインを低くして背後のスペースを消しつつ、全体をコンパクトな状態に保つことに腐心した。日本の陣内に入って戦うドイツの背後には逆に大きなスペースがぽっかり空いているからファーストブレークは難しくない。実際、オフサイドで幻の先制点に終わったけれど、伊東純也(スタッド・ランス)が右サイドからアーリークロスを送り、前田大然(セルティック)がゴール前で合わせたシュートは、笑いがこみ上げるくらいに、こちらの狙いどおりだった。ドイツのサイドバックが意識的に高い位置を取るのは分かっていたから、伊東、前田、浅野拓磨(VfLボーフム)らスペースランナーを使ってその裏を取ろうというのは、チームの共通認識だった。

12月28日の再任会見で私も森保監督も「能動的なサッカーを目指す」と話した。そのためには個の力のかさ上げがさらに必要になる。一朝一夕に片が付く問題ではないが、熱いうちに鉄は打ちたいと思っている。好例はある。久保建英(レアル・ソシエダ)のプロデビューは15歳5カ月、堂安律(SCフライブルク)は16歳11カ月、冨安健洋(アーセナル)は17歳8カ月。SAMURAI BLUEで初キャップを得たのは久保が18歳、冨安が19歳、堂安が20歳の時である。JFAは17歳でJリーグにデビューし、10代でSAMURAI BLUEに昇格するというキャリアパスをモデルとして考えていて、この3人はほぼそれに当てはまる。彼らのような選手を引き続き輩出できるように、それを後押しするような機会や場を提供していくつもりでいる。カタールでは、2021年東京オリンピックのメンバーがオーバーエージを含めてチームの背骨になってくれた。次のワールドカップをにらむと、2024年パリオリンピックは試金石であると同時に跳躍台にもなり得る。パリオリンピックは2001年生まれの選手で争われる。カタールで戦った32チームにパリオリンピック世代がどれくらいいたかを調べると、約10%だった。日本は久保だけ。この年代の発掘、強化は高校卒業後にJクラブに入団しても大学に進学しても新人1年目で出場機会がなかなか得られないという「ポストユース」の問題が密接に絡んでいる。この年代の試合環境をどう変えていくか。SAMURAI BLUEの森保監督、U-22日本代表の大岩剛監督、U-20日本代表の冨樫剛一監督、U-17日本代表の森山佳郎監督と、世界に挑む監督同士に密接に意見交換をしてもらうつもりでいる。監督だけでなく、各カテゴリーのフィジカル担当らコーチ同士の情報共有も重要だ。各カテゴリーの情報を全カテゴリーで共有し、世界に打ち勝つためのタレントの発掘やインテンシティーの定義づけなど、先を見据えて行う考えでいる。

今回のカタール大会ではサッカーがあらためて格闘技であることを認識させられた。アルゼンチンとフランスが激突した決勝にしても、次の試合がないからイエローカードを1枚もらうのは当たり前という感じで、壮絶なコンタクトプレーの連続だった。3-3の激しい点の取り合いの末に、フランスをPK戦で下したアルゼンチンは本当に興味深いチームだった。明らかに我々とは思想が異なるというか。我々の常識では、例えば守備なら、しっかりラインをそろえて個々の選手もしっかりポジションを取って、コンパクトな陣形を保ってディフェンスに行こうとなるのだが、アルゼンチンの場合はシステムでさえ、「この選手は、どこがノーマルポジションなんだ?」とメモを取ろうとしてもよく分からないのである。守備をさぼっているわけではない。逆だ。「ポジションを取ってからプレスに行く」というような生半可な態度ではなく、「ボールは即、狩りに行く」という詰め方。奇麗事では終わらない覚悟を全員が持っていた。ワンタッチパスの連続で最終的にディマリアが決めた決勝の2点目なんかはサッカーの神髄を見た気がした。そういう高い技術力を備えた上で、がしがし戦うこともできる。アルゼンチン以外にもクロアチアのブロゾビッチ、モロッコのアムラバトとか、今回4強に残ったチームには非常にタフな選手がそろっていた。ある種の荒々しさ、激しさを備えた選手が脚光を浴びる時代になったのかもしれない。プレーメーカータイプでも、ボール狩りに参加できないようであれば、チームの一員になれない時代が。日本の場合、遠藤航(VfBシュツットガルト)はそういうことができるけれど、どの年代でもおしなべて、まだまだ守備範囲は狭いし、改善の余地がある。育成年代まで遡って、選手の在り方を見直す必要があるのかもしれない。

カタールで日本がクロアチアにPK戦で負けたのは、目標に向かってチーム一丸となって粘り強く戦うことができていただけに残念だった。PK戦の勝敗に関しては「あれは運だ」という人もいれば、「その運もまた実力の内」という人もいて、アプローチが難しいのは分かる。日本と同じく、クロアチアにPK戦で敗れたブラジルは試合の前々日、前日と練習の最後に全員にPKを蹴らせてキッカーの品定めに役立てていたと聞いた。オランダはワールドカップ前にPK戦用のキャンプを張ったという話もある。それだけ準備してもブラジルもオランダもPK戦で敗れたから、一筋縄ではいかないことがわかる。ただ、だからといって、何の準備もせずにPK戦に臨ませるわけにはいかない。日本は今回を含めてワールドカップのラウンド16に4回進出したが、うち2回(2010年南アフリカ大会と今回)はPK戦によってベスト8進出を阻まれたのだから、PK戦も試合の一部と考えて、対策を立てていくしかない。

PKに関してはいろいろ研究がなされ、有意義な論文もかなりある。それらによれば、PK戦で主審の笛が鳴って3秒以内にボールを蹴る人は、5秒以上かける人より外しやすいそうだ。他にもキッカーの順番は遅くなる方が外す確率は高くなるとか、試合にフル出場した選手の方が失敗しやすいとか、興味深い統計がたくさんある。他にも「ここで決めなければ負けてしまう状況」での成功率は62%だけれど、「ここで決めれば勝てる状況」では成功率が92%に跳ね上がるのも面白い。敗北の責任がかかるより、ヒーローになれる状況の方が選手を前向きにさせるのだろう。DF(68%)やMF(69%)より、FW(76%)の方が成功率は高く、利き足による差は無い。1982年から2018年までのワールドカップの全PKを調べた結果、ゴールマウスの上3分の1に蹴り込んだPKは全部決まっているそうだ。今回日本の選手は誰もそこに蹴れなかった。もちろん、クロスバーに当てたり、大きくふかしたりするリスクと隣り合わせではあるが。

早速というわけではないのだが、12月22日から25日にかけて茨城・水戸市で行われた「IBARAKI Next Generation Cup 2022」に参加したU-18日本代表には、主催者にお願いして勝敗に関係なくPK戦を必ずやるようにしてもらった。U-16日本代表は12月13日から17日にかけてパラグアイの国際大会に参加したが、そこでも主催者にお願いして試合の後にPK戦を組み込んでもらった。こういうことは実は結構あって、冨樫監督が率いるU-19日本代表が11月末にスペイン遠征を行った際も、対戦相手のフランス代表に申し込まれて試合終わりにPK戦を行った。どの国もPK戦対策が無視できなくなっているのだ。なぜ、アンダーエージの活動にPK戦を組み込むことにしたかというと、現実問題としてPK戦の機会が非常に乏しいからである。選手によっては全校高校選手権で蹴ったのが最後という者もいる。こんな状況で、いきなりFIFAワールドカップやアジアのトーナメントのノックアウト方式の中でPK戦のキッカーに指名されたら平常心ではいられないだろう。

イングランドのハリー・ケーンはPKを蹴る前に、すね当てを直し、ソックスを直し、ユニホームを正して、というふうにルーティーンを持っていて、それで不安をコントロールするという。元ラグビー日本代表の五郎丸歩さんのプレースキックの際のルーティーンが昔、話題になったけれど、PKにも必要なのかもしれない。またPK戦ではセンターサークルからスポットに向かっていく選手に必ず声かけをして、全員の感情を伝播する必要もあるそうだ。そうすることでキッカーを孤独にさせないようにし、シュートが決まったら一緒に喜んでチームスポーツの高揚感を味わえるようにすることも大切らしい。世界大会や世界大会に通じるアジアカップ、アジア予選では全カテゴリーの代表チームがノックアウト方式に移った後のPK戦を避けて通れない。PK戦で負けて本大会のチケットを逃すことは過去にもあった。本番と同じ緊張感を練習で再現することはできなくても、機会を増やすことで自分なりのルーティーンを作り上げたり、GKとの駆け引きを覚えたりすることは可能だろう。まだまだ試行錯誤の段階だが、今後もいろいろ場所と機会を設けて、PK戦対策を積み上げていこうと思う。

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