2025.8.13
サッカー日本代表コーチ
齊藤俊秀コーチ 囲み取材一問一答
※この取材は2025年8月13日に行われました
――ここまでの最終予選中で一番印象に残っていることは何でしょうか。 「印象に残っていることというより、皆さんとこうして日本代表の活動をやらせていただいていることは決して当たり前のことじゃないなと感じています。今までも様々な節目があったと思いますが、そこを皆さんに応援していただいて今に至っています。この先もまた何が起こるかわかりませんし、『人事を尽くして天命を待つ』ではないですが、しっかりその準備をやり続けていきたいなと思っています。僕はたまたま今、(森保監督体制の)2回目をやらせていただいていますが、普通はありえないと思うので。これは自分ごとというよりは、森保監督が本当にいつも言っている『日本のために、選手のために』ということを、僕の立場であればさらに『監督のために』やっている。そこを最後のあと1年、貫きたいと思います」
――第1次森保ジャパンに比べると、第2次森保ジャパンは非常に好調で続いているように思いますが、その要因はどう考えていらっしゃいますか。 「森保監督になってからもう7年以上経っていると思いますが、年月の積み重ね、積み上げがありますし、東京オリンピック世代の選手の森保監督との時間軸を考えても長く積み上げてきているものがあります。そこに至る信頼と、森保監督の一挙手一投足をオリンピックの時から見てきている選手が多いですから、何か問題が起きそうな時に、今はより解決しやすいような下地になっているんじゃないかなと思います」
――コーチの中で唯一前体制から継続されているので、いろいろなメリットを一番持たれているというふうに感じています。今非常にチームが強くて選手たちも手応えを感じている中で、前体制からの変化は感じていますか。特に個人練習なども見られていて、選手の変化を感じるところはありますか。 「前体制からでいうと、僕だけではなくて下田崇GKコーチ、そして松本良一フィジカルコーチもいて、テクニカルスタッフだと寺門(大輔)君や中下(征樹)君も一緒にやってきています。その中で僕は運良く、2015年からU-15、U-16、U-17とアンダーカテゴリーを担当したときに一緒にやった選手がいまたくさんいて、彼らの当時からの人となりも分かるし、もともとの伸びしろも見てきています。おっしゃっていただいたようにチーム全体だけでなく個のところにもフォーカスしながら、二人三脚でやれたらというのは昔からやっていたところ。『ベストキッド』の師匠のような、組み手もちゃんと取れて練習台にもなれるような、そういう存在になれたらいいなというのは常々思っています。自分が現役時代も、特にペリマン監督によく二人三脚で、練習が終わった後にコーディネーションをやってもらって、それがすごく自信になった。そういう自分の経験に基づいているところもあるので、チームと選手個々への両輪でやっていきたいなと思っています。 選手と接する中で感じた前体制からの変化は、全体練習後の個人トレーニングを敢えて『やろう』と言わなくても自然と集まっていたりとか、そういう文化ができていること。それはもともとやってきた選手との関係もありますが、新しく入ってきた選手もその雰囲気を見て、自然とそういうグループが出来上がっています。それはディフェンスだけじゃなくて、名波さんたちの攻撃の方もそういうふうにグループができていますし、すごくいいなと。もちろん選手の個々のためでもあるんですが、やっぱみんなのためになれるというのもすごく大きいなと思います。それはGK陣もそうですし、ランニングをやっている松本フィジカルコーチが見ているグループもそうですし、そこにハセ(長谷部誠コーチ)もいるので、すごく幅が広がっていると感じています。選手にとってすごくいい環境になっているのかなと思いますし、テクニカルのスタッフたちも手伝ってくれたり、練習台になってくれたりするので、この時間はやっぱり大事にしていきたいなと思います」
――斎藤コーチが現役だった頃はセンターバックの選手が海外でプレーすることはなかなかできませんでした。なぜいまこれだけ日本人のセンターバックが海外で活躍できているのか、どういうふうに考えていますか 「きめ細やかさなど、おそらく日本人を知れば知るほどヨーロッパの指導者の人たちも『この選手を起用したい』となると思います。例えば、単純に外国人のフィジカルの強い選手と対峙したときに、それだけであればフィジカルレベルを上げれば抑えられる、ドラゴンボールのスーパーサイヤ人ワン・ツーぐらいのイメージです。でもやっぱりある領域に行くと、それだけじゃダメなんです。自分がナチュラルな状況での予測も含めて、戦わずして勝つ駆け引きが必要ですし、その準備を日本人の選手はできる。馬鹿正直に常に『かかってこいよ』とやって相手を止めてしまう選手も、それはそれで漫画的にはかっこいいけれど、それだと時にやれることもあって、そうなるとその分、味方が戻っていかなければいけない。その中で日本人選手は、相手の選手が迷子になるような駆け引きやラインコントロールもできる。実際、代表でもみんなそういうトライをしてくれています。あとはそういった選手たちのサイズがシンプルに上がってきている。僕ら世代のDFは昔、お互い同じぐらいの身長で目線を合わせて話せていたのが、今は見上げて話す感じですから。みんな180cm台後半から、高いと190cm台もいます。サイズだけでももうヨーロッパの選手に引けをとらない。試合前の集合写真で並んでいる姿を見ても、むしろ日本の選手の方が高さを持っているんじゃないかというぐらい。だから駆け引きだけじゃなく、ベースのサイズも大きくなっている。両輪で成長してきているから鬼に金棒だし、それが海外でもプレーできる所以となっているんじゃないかと思います」
――日本のディフェンダーが海外で認められるようになったきっかけはどこかにあったと思いますか。 「今ヨーロッパでプレーしている選手はもちろんですが、(吉田)麻也や(長友)佑都がイタリアでやってきたこともそうですし、ハセも然り、時代が変遷して選手の世代が変わってきても常にアップデートできている。そこにはただのアップデートではなくて、彼らがヨーロッパで力を示してきた歴史もあるわけです。そこはやっぱり忘れてはいけないと思います」
――齊藤コーチをはじめ代表のレジェンドが多くコーチを務めていて、過去の経験を還元しようという動きがあると思います。齊藤コーチは前体制から継続されていますが、名波コーチや前田コーチ、長谷部コーチも入られた効果というのはどういうふう選手たちにもたらされていると考えていますか? 「名波さんは現役で一緒にやっていましたし、なんなら高校時代から知っているので幼馴染みたいなものです。(前田)遼一も選手として対戦しましたし、ハセとも今、本当に二人三脚のようにやれています。だから個々が分業ながらも協働しながら、交わり合ってやれています。忌憚なく『名波さん、僕はこんな感じでやりますよ』とか『名波さんはミーティングでどんな感じで何を言うんですか』とか、そういうことを日々確認し合えている。そうやれているのもやはり森保監督の凄さだと思います。僕らのところはいい意味で仲良くやれていますし、壁の無い関係というのがより広がっているのかなと。そこはこれからもより大事にしていきたいなと思います。育成年代の指導をしている時もあったのですが、スタッフの仲が良くて明るいと、選手たちも勝手に明るくなる。それを変にスタッフが『みんなちゃんと仲良くしろよ』と言うのはプレーヤーズファーストな指導ではないですし、少し放っておいてもコーチが楽しくやっていたら自然と組織が良くなるという法則があるので。今はそういう雰囲気にできていると思います」
――特に最近までプレ―ヤーをしていて、代表キャプテンでもあった長谷部コーチが入ったことによって変わったことはコーチ陣の中でもありましたか。 「彼はいまでもストイックに自分を鍛えているので、僕も刺激をもらっているし、まだまだ老けちゃいけないなと。あとはやっぱり、先程も言いましたが、監督の世代、僕らの世代、遼一の世代がいたところにハセがいることで、より年代的な縦軸が決まってくる。ある世代だけいないようなことが組織ではあったりしますが、自分たちは縦がしっかりしていて、そこに佑都もいると、見事に世代がつながる。隙のない縦軸になっているのかなとすごく感じます。それぞれの当時の代表での経験だったり、課題だったり、そういうこともしっかり今に繋げていこうというような話もしています。一気通貫の、上から若い世代、ティーンエイジャーまでいる組織を作っている監督がすごいなと思いますね」
――昔は自身が直接指導していた森保監督が今はマネジメント型になっていると思います。齊藤コーチから見て、森保監督がそのように変わった瞬間はありましたか。 「皆さんも知っていると思いますが、監督が全部自分でやっていた時代もありましたし、その時を僕も知っていますが、そこから少しずつアジャストされて今に至っていると思います。だから他の人がそれを見て『あ、このやり方がいいな』といきなりやっても絶対に成功しません。やはり監督がしっかり全部を見ていたところがあるからできること。節目で言うと、前回のワールドカップ予選が終わったタイミングが一つで、次はカタールでのワールドカップが終わった時。そこで少しずつマネジメントが変わっていきましたね。カタールワールドカップの予選が終わった時から攻撃は横内昭展コーチ(現・モンテディオ山形監督)が担当するようになってよりはっきりやれるようになりましたし、その後名波さんや(前田)遼一が来た時からは完全に分業になりました」
――森保監督が全体を俯瞰して見るようになって、森保監督自身に変わられたところはありますか。 「マネジメント手法は変わっていますけど、結局自分たちもすべて監督の代弁者だと思っています。そこは全く変わっていませんし、常に監督とも確認しながらやっています。コーチたちがやっていて監督は一切やっていないわけではなくて、あくまで僕というツールを使って監督が発信しているぐらいのイメージかなと。そうじゃなかったらおかしいことになりますしね。繰り返しですが確認しながらやっていることですし、時には確認しなくても、という時があっても、そこはやっぱり確認するというルーティンを必ずやっています」
――監督とはスタッフミーティング以外でどんなコミュニケーションを取られていますか。 「ミーティングがメインですが、それ以外にも結構あります。物事のベースがある程度できた時に確認したり、あとは視察先で一緒になった時に話したり。缶詰のように1日ずっと話し合い、というような感じにはならないですね。そこのいい余白も持ちながら監督はやらせてくださるので、すごいなと思います」
――齊藤コーチは現役時代、清水、湘南でプレーされた後に地域リーグも経験されましたが、その経験が今の指導生活に生きていることはありますか。 「勝ち続けなければいけないという点は代表ももちろんそうですが、地域リーグでJFLに昇格しようとしたら、地域で全勝しても全国大会の一次予選で1回でも負けたらもう終わり、という感じでした。代表もそういうところがあって、1回引き分けただけでもなんとなく世論がどんよりするような。E-1でも最後、韓国に勝ったので今こういう雰囲気ですが、1-2で負けていたらもう全く違う話になっていると思います。その前の予選なんて全く関係ないし、代表は本当そういう世界だなと。ステージこそ違いますが、今はその一勝の重みをより感じながらやらせていただいています」
――カタール大会を経て次のワールドカップでは優勝を目指していますが、守備を担当するコーチの立場からそのためには何が必要で、どういうアプローチで取り組んでいますか。 「これは監督もよく言っていますが、今回のワールドカップ2次予選ぐらいから紅白戦が一番ハイレベルだと。言ってしまえばFIFAランキング15位くらいどうしが試合をしているようなもので、日本は今アジアでランキングトップです。紅白戦では自分たちの戦い方のベースと絡めて相手の対策をするので、相手役側はフォーメーションぐらいは揃えますが、想定を超えるようなプレーが出ても『相手の想定と同じように動いてくれ』とはあまり言っていません。色々な組み合わせでやりますし、色々な選手が色々なポジションに入って組み合うと、おそらく準備している試合では起きないような現象、もうドイツやスペインとやっているような現象が起きる。そうすると次の日のミーティングでそこの修正の話になって、予選の相手に対する準備の積み上げではあるものの、そこからすでにワールドカップ本戦、もしくはこの9月からの戦いの準備を、もう去年のシリア戦、ミャンマー戦の前ぐらいからやっていると。『ミャンマーはこんな戦い方はしてこないから』ではなくて、起きた現象に対してどうしていこうかという議論になって、それはつまり遡ると、もう一年前からランキング一桁台の相手の準備が始まっていたということです。今回の予選にはそういった裏背景があってこういう結果になったと思います。一回、一回の活動の中で、ワールドカップ本大会を見据えた、自分たちと同じレベルの相手、自分たちよりもランキング上位の国を見据えた準備というのがすでに始まっていたので、これからもそこを追求していくことが、本大会で成功するための過程になるんじゃないかと思っています」
――カタール大会のドイツ戦、後半途中から後ろを同数で守ったように日本の守備のレベルが上がっていると思います。それがいまのチームのベースにもなっていると思いますが、マンツーマンでの守備をどう考えていますか? 「例えばウイングがいるチームを相手にゴールキックの時にマンツーマンで合わせると、広い幅を3人で見るような関係になるのですが、ボールが動いた瞬間にその次のポジション取りをしっかりみんなで確認しておけば、マンツーマンだけでなくいかようにも数的優位を作れるし、横に動いて逆サイドの選手にちゃんとタスクを伝え、誰がどこに行くかを構築しておくと、同数どころか数的優位を作れます。さらに奪った後にどこ狙うかというところまでいくと、相手にとってはスタート時点では薄く見えているところでも、ボールが動いた瞬間にいくらでも厚みが作れるという、そういう陣形、包囲網のようなものが作れるので、それが今はより確立されてきている。最初から怖がって前に行かず1回下がれ、としなくても、もう充分やれる下地ができている。それは先程も言ったように、選手がいろいろなフェーズの中で所属するチームのレベルがどんどん上がってきているからできるようになってきているし、実際彼らが所属チームでもそれやっていたりする。あとはサイズも含めてそういう状況でも怖がらない選手がたくさん出てきているので。そしてそれができると新しく入ってきた選手も代表の試合を見てくれているので、それをやらなきゃ自分は残れないという、スタートラインがそこまできているので、それは僕らにとっても大変ありがたいことですね」
――日本代表では帰陣することを「サムライ・スプリント・バック」と齊藤コーチが名付けていると聞きましたが、どんな意図がありますか? 「略してSSBKと言っているんですが、若林源三のSSGK、スーパー・グレート・ゴール・キーパーを真似て勝手に自分で(笑)。少し前にヨコさん(横内昭展・元コーチ)と話したときに『海外の試合のシーンを見せるよりも、今はSAMURAIBLUEの映像を見せたほうが一番説得力があるんだよ』というようなことを言ってくれて。まさにそういうシーンをピッチで表現してくれた一番の出発点が、2023年にドイツと国際親善試合を戦ったとき。4-1でリードしていて、しかも93分くらいに攻撃のコーナーキックからカウンターを食らったんですが、その時に全員、10人がドンと戻ったんですよ。それを見た時に、いやもうこれすごいな、と。アディショナルタイムに4-1でリードしていようが、0-0だろうが1-0だろうがこれをやる。やっぱりSAMURAIBLUEの選手はすごいなと思った。そこから選手がクラブに戻った映像見たときに、アーセナルでもそういう戻りをしていたりとか、リバプールでもそういうものを見られて、それはもう僕も感謝です。選手がそういうクラブに所属しているからそういうシーンを見られる。彼らの日常から紐解いていって、ドイツ戦のそのシーンは、ひとつ遡るとトミ(冨安健洋)とアーセナルの話をした時に、チームでのプレスバックについて会話したことから僕もインスピレーションを得たところがあったので、そこは選手とともに作り上げてきたというものをすごく感じています。だから僕はすごく選手にも感謝しています。6月のインドネシア戦でも、68分ぐらいのコーナーキックでそういうシーンがあったと思いますし、E-1でも5-0になった前半の42分ぐらいで、スローインから逆サイドにこぼれてカウンターのような感じになった時も、全員がドンと戻っているシーンとか。これはまさに再現シーンだね、と言うと選手も納得してくれるし、そういうシーンを彼らが見て代表に来てくれているから、口酸っぱく言わなくても、インドネシア戦のそのワンシーンをミーティングで見てもらうだけで試合で勝手に表現してくれる。そういう意味でも今までそういう表現をしてくれた選手たちに感謝ですし、それをまた見てきてくれている選手たちが、そこのスタートラインから参加してくれているということが、本当に僕らにとってはコーチ冥利に尽きるというか、ありがたいなと思っています」
――長友選手について、最終予選ではメンバー外が続きましたが、DF担当コーチとして長友選手にどのようなことを求めていらっしゃいますか。 「求めているというよりは、紅白戦をやると佑都は相手チームとしてプレーすることが多くなるわけですが、彼のポジションだと(三笘)薫とかタケ(久保建英)とマッチアップすることになります。その時に佑都が前に立っているだけで次の対戦相手以上の相手になると思うし、そういった意味で彼の今の振る舞い、姿勢というのが、さっき言ったようなハセ(長谷部誠コーチ)から(遠藤)航の世代をつなぐ一つの大きな歯車としてドンとはまっている。当然プレーヤーとしても、この間のE-1・中国戦であれだけのプレーを見せてくれましたし、そこからFC東京に戻ってもすごくいいプレー見せているので、ああいう姿がまた選手たちにとってもいい刺激になっているんじゃないのかなと思います」
――E-1選手権では3試合で1失点という結果で優勝しました。来年のワールドカップに向けた底上げとして、E-1はどのような大会となりましたか? 「まずは来年に向けてというよりも、3試合やれたということがすごく大きかったです。通常のIW(International Window)だと2試合で、その2試合をワールドカップ予選として積み上げていくわけですが、今回のE-1はJリーグの選手たちが来てくれたなかで、もし2試合だったら最初に1試合やったあとに大幅にメンバー変えると、(別のメンバーで戦う)2試合目で終わりとなってしまう。もちろんそれでも何か残るものですが、今回は3試合目があって、しかも相手が韓国で、アウェイゲーム。韓国は最終予選のメンバーが15人ぐらいいて、実際にレギュラーで出ている選手もいるような日本とはチーム構成が違う相手でしたが、アジアのポット1クラスの相手と戦ったうえで選手の評価ができたというすごく大きな大会でした。E-1だけで終わらないものがすごく残りましたし、あの3試合を通して攻守両方のコンセプトを理解してくれた選手がまた増えたわけですから、今後の選手選考の中でも、『彼だったら呼んでもすぐにコンセプトを理解しているからそれを表現してくれるだろうな』となる。これは僕らもすごく学びになったというか、大きな財産になりました。あとは個人的に、最終予選のサウジアラビア戦が一番近いですが、この前の韓国戦のような、いわゆるアウェイゲームというものが最近あまり無かった。ああいう試合って結構『してやったり』みたいなところもありますし、ああいう勝ち方もやはり絶対必要だな、と感じたところもありました。ワールドカップに行ったらああいう試合は絶対にあると思うので、(ボールポゼッションが)70-30という試合じゃないですし、ペナルティエリアの中でどううまく守るか、というようなところも選手がうまく表現してくれたので。遡ると2019年のアジアカップのサウジアラビア戦のような、あの試合も『してやったり』なところがあって、そういう試合を経験できたというのも、選手もそうですが僕らにとってもすごく大きかったなと思います」
――選手たちは日頃もいといろと取り組まれている中で、日本代表に来たときに個人指導の場で重点的にやっていることや、これからもっとやっていきたいというものは何かありますか? 「意識しているのは、彼らとのコンディションとの兼ね合い。試合当日からの逆算もある中で、試合前日だったらこういう感じかなとか、その前の練習で負荷を結構上げた時はこうかなとか、そういうオーダーとチョイスのようなところがあると思います。当然やらない日があってもいいと思いますし、でも選手によっては少しやった方がいい選手もいるので、そういう選手は呼んだりしながら。遡るとトミ(冨安健洋)が課題をいろいろと持っていた中で、僕が今でも覚えているのがクロスの練習。普通のボールをクリアするのではなくて、ヨーロッパだとピッチが濡れているから、スーパーマリオのファイヤーボールみたいな手前で跳ねるような処理の難しいボールを蹴ってほしいと。その発想は僕もあまり無かった。普通クロス対応の練習は浮いたボールを跳ね返す、という感じですが、自分の手前でポンと跳ねる、水辺に石を投げるようなボールで感覚を研ぎ澄ませていく。そういうのは今も時々やったりしますし、そういうのをやっておくと色々な部分を全部インクルードできるようなところもある。そういう選手との二人三脚の中で、いい意味で逆に僕が学んだりしたところもありました。そういったことを上手くプレンドしながらやっていけたらなと思います。みんなあれだけの選手たちになってきたので、当然それぞれが、『今日はこれをやりたい、あれをやりたい』と思うので、そこも大事にしながらやっていきたいなと思います」
――E-1の時、荒木隼人選手や安藤智哉選手がそのクロス対応をやって難しかったと言っていました。 「そういうのも1回やってもらうことで、またクラブに戻って自分のものにしていってくれたらいいんじゃないかなと思います。そういう意味でも本当に今回のE-1というのは、すごく僕らにとっても貴重な大会だったと思うので、6月、7月とやってきたことをまたうまく9月につなげていきたいなと思います」