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【JFA STATEMENT】第13回 なでしこジャパン、前回の経験と自信を力に、堂々の準優勝

2015年07月13日

【JFA STATEMENT】第13回 なでしこジャパン、前回の経験と自信を力に、堂々の準優勝

大成功に終わったFIFA女子ワールドカップカナダ大会

カナダを舞台に開催されたFIFA女子ワールドカップは、史上最多の135万3,506人という観客数を記録し、大成功のうちに幕を閉じました。私はオランダ戦(ラウンド16)の1日前にカナダ入りしたのですが、ホスピタリティにあふれ、サッカーを楽しもうという雰囲気に満ちていました。そういったカナダという国の良さに加え、前回大会からさらにサッカーが進化し、質の高いゲームが繰り広げられたことが成功の大きな要因だったと思います。どのチームも、なでしこジャパンが得意とするパスサッカーを志向するようになり、女子サッカー全体が良い方向に進歩していると感じました。


まずは、なでしこジャパンの戦いを振り返りたいと思います。

グループステージは3試合とも1点差の勝利ではありましたが、安定した戦いぶりでした。やはり大事なのは初戦です。こういう大舞台では初戦の勝敗がその後の戦いに大きく影響します。第1戦のスイス戦では序盤、相手の攻撃を警戒しながらも、落ち着いたパス回しから徐々にペースをつかみ、先制。後半はスイスの反撃に苦しむ場面もありましたが、全員でこの1点を守り、勝利をつかみました。続くカメルーン戦、エクアドル戦もフィジカルに長けた相手に危なげない試合運びで確実に勝ちを決めてくれました。

佐々木則夫監督は「ハラハラドキドキさせてすみません」などとコメントしていましたが、ノックアウトステージも私自身は、安心して観ていました。ラウンド16で対戦したオランダも、準々決勝で相まみえたオーストラリアも、グループリーグを勝ち抜いてきたチームだけにいずれもタフなゲームになりましたが、ここでもなでしこジャパンは皆が落ち着いてプレーしていたと思います。

準決勝のイングランドは、長いボールを蹴りこんでカウンターで勝負してくるチームです。最近、そういったチームと試合をしていなかったので、その対応に苦慮した部分はありましたが、厳しい試合でも日本は勝ち切るだけの力を持っていたと思います。そして、すべての試合において、なでしこジャパの真骨頂であるパスサッカーと全員攻撃、全員守備というスタイルが表現できていたことが、決勝まで進めた勝因だと思っています。

アメリカはチャンピオンにふさわしいチーム


今回の大会で印象に残ったのはフランスとアメリカですね。フランスは残念ながらベスト8で終わってしまいましたが、良いサッカーをしていました。準々決勝が、フランスとドイツの顔合わせとなったのを「もったいない」と思ったのは私だけじゃないのではないでしょうか。もっとフランスの戦いを見たかったですね。

アメリカは本当に強かった。選手個々もチームとしても非常にまとまっていて、スピード、フィジカル、技術、戦術、どれをとってもチャンピオンにふさわしいチームでした。ほかより一歩抜きん出ていましたね。

日本とアメリカの決勝戦、日本は立ち上がりのコーナーキックとフリーキックでやられ、大きなダメージを受けてしまいました。日本は、高さに弱いという意識が強いものですから、高いところに意識が行ってしまう。日本相手のセットプレーに研究を重ねたアメリカの作戦勝ちでした。

開始わずか16分で4点という大差をつけられながらも、決して諦めず、果敢にゴールを目指して2点差に迫ったのはなでしこジャパンならでは。

前回大会で得た経験値と自信

悔しい思いはしましたが、どの試合も前回大会優勝の経験と自信が選手のプレーに出ていたと思います。 

FIFA女子ワールドカップ6回目という澤穂希選手の存在感も大きかった。ピッチの中ではもちろんですが、ベンチにいても福元選手や近賀選手と同様に選手たちの心の拠り所であったと思います。彼女がいることで、宮間あや選手がキャプテンとしてリーダーシップを発揮できたのだとも思っています。

昨年のアジアカップ以降、代表から外れたときは、本人も悩んだと思います。しかし、今回は、試合に出ようが出まいがベストを尽くすという心境が見てとれました。それがチームをさらに強い結束力をもたらしたと思います。また、けがから復帰した鮫島彩選手もいい働きをしていましたし、有吉佐織選手も良かった。チーム最年少の岩渕真奈選手も、試合に出ていた時間は短いけれど、個性を発揮していて、今後の成長に期待を抱かせるものでした。そして、なんといっても岩清水梓選手と熊谷紗希選手ら、安定したディフェンス陣がこのチームの要だということも、試合を観ていてつくづく感じました。

すべての選手の名前を挙げたいところですが、23人の選手がそれぞれの役割をきちんと務め、選手同士で工夫をしながら一丸となって戦ったことが準優勝という堂々たる成績を残すことにつながりました。バランスと結束力のある、本当に素晴らしいチームだったと思います。

指揮を取った佐々木則夫監督にも心からの敬意を表したいと思います。前回大会でなでしこジャパンを優勝に導き、ロンドンオリンピックでは銀メダル。なでしこジャパンをトップレベルのチームへと押し上げたその手腕は見事でした。今大会でもグループリーグの戦いとノックアウトステージの戦いをきちんと考えて指揮していました。

若手の台頭に期待

一方で課題もあります。

経験は一朝一夕には積めませんが、ここまで選手が成長を遂げるのに相当な時間を要したことは事実です。逆に言えば、今の選手が抜群に優れているということでもあるのですが、次のなでしこジャパンを担う若手がもっと出てこないと、リオデジャネイロオリンピックの予選は厳しいものになると思っています。

中国もアメリカを相手にタフな戦いをしていましたし、オーストラリアはベスト8に躍進、韓国もベスト16に名乗りを挙げています。男子同様にアジアの戦いが厳しさを増す中で、これからなでしこジャパンとして通用する若い選手がもっともっと出てきてほしい。我々関係者も全国で活動する指導者も危機感を持って選手の育成に注力する必要があると思っています。なでしこジャパンを目指す若い選手には、高い志を持ってレベルアップに励んでほしいですね。それも、中学生世代から具体的な目標を持ち、日々の練習の中で技術とプレーの精度を上げていくこと。欧米の選手と比べて体格に劣る日本にとっては、技術力を身につけるのが最も重要です。若年層からトップまでが同じコンセプトのもとに強化に取り組む――そこに、日本女子サッカー持ち前の、全員守備、全員攻撃で粘り強く戦うスタイルが備わっていれば、もう一段上のレベルに到達できると思います。

リオデジャネイロオリンピック出場に向けて

決勝戦が終わった後、関係者も含めて総勢50人ぐらいで懇親会をしました。決勝での悔しさもあったでしょうが、そのときには選手はもう気持ちを切り替え、晴れやかな表情をしていました。準優勝という堂々たる成績でしたし、みんな長い間苦労してきたメンバーだけに、心の通った楽しい慰労会になりました。

来年のオリンピック予選は相当厳しいものになると予想されますので、安閑としてはいられません。予選を勝ち抜くためにEAFF女子東アジアカップ決勝大会をどう戦うのか――この大会はオリンピック予選前の最後の公式試合ですので、そこをいかに戦うかが大きな鍵となります。経験ある選手の力量はある程度わかっているので、そこにどれだけの若い選手が台頭してくるか。EAFFを次につながるものにしてほしいと期待しています。

これから選手は所属チームに戻ってプレーするわけですが、ファンの皆さんには是非、なでしこリーグの試合に足を運んでいただきたいと思っています。代表強化にとってなでしこリーグは最も大事なところですからね。中高生選手もなでしこリーグと、その先にあるなでしこジャパンを目指して頑張ってほしいと思っています。

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