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アジアのピッチから ~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第8回 黒田和生 チャイニーズ・タイペイ ユース育成統括
2015年08月14日
アジアの各国で活躍する指導者達の声を伝える「アジアのピッチから」。第8回は、チャイニーズ・タイペイで青少年育成及びU-12エリート計画の責任者を務める黒田和生氏のレポートです。
チャイニーズタイペイでの生活、サッカーについて
親日家が多く暮らしやすいのは皆さんご存知の通りです。ガイドブックに載っていない名所が多くあり、週末は家族連れで賑わっています。どこも気軽にアクセスが可能で私もよくリフレッシュに訪ねます。
こちらで人気のスポーツはダントツで野球とバスケットボール。サッカーは3位ですが、1・2位との差は大きいですね。要因のひとつに練習場所の不足がありますが、2017年のユニバーシアード開催に向けて人口芝のグラウンドが8面増える予定で、国内各地における環境整備の充実が期待されています。個人スポーツとしてはジョギングやサイクリングも盛んです。
現在の取り組み
チャイニーズタイペイで私の務めている役割は、青少年育成の責任者、U-13・U-14男子代表監督、更に「U-12エリート計画」の3つです。この計画はエリートを長期的に育てる新しいプロジェクトです。その一環として、今年5月国内6ヶ所にあるトレセン施設よりチームを集め、初の少年全国大会を開催しました。各地区からU-12が1チーム、U-10が2チーム、合計200名以上の選手が参加し、総当り形式で大会を行いました。トレセン毎の順位が明確に決まるため、「あの地区には負けたくない!」と大変盛り上がりました。この大会の目的は、「エリート」としての自覚を選手に持ってもらうこと、そして指導者達には各自の課題を理解し自分の地区から良い選手の輩出を目指してもらうことです。今回は大会自体のPR計画に課題が残りましたが、毎年開催地を変えて実施予定です。
日本における視察研修
7月末から10日間程、育成年代担当の指導者10名を連れて日本で研修を行いました。Jリーグの試合観戦やJクラブのアカデミーについてのレクチャー、御殿場ではJFAフットボールフューチャープログラムトレセン研修会U-12の視察等を通じて、現在の日本のU-12のレベル把握、更にどのような練習とトレーニングを行っているのかを目に焼き付けてもらうのが目的です。参加者達のモチベーションはとても高く、各研修先では所定の時間が過ぎても質問が尽きず貪欲に吸収しようとする意欲に満ち溢れていました。多くを学んで帰国した彼らは台湾のために頑張ってくれると思います。
日本からの指導者が好まれる理由
私の他に女子代表の柳楽雅幸監督と鈴木大地GKコーチと、日本からは現在3名の指導者がチャイニーズタイペイに派遣されています。1週間単位の短期派遣を含めると、更に多くの日本人指導者達が当地で指導を行っています。一般的に“外国人は既存のしがらみと無関係”という考えはありますが、同じ外国人でも「日本人」への依頼が多い一番の理由は、彼らが持っている任務への意欲・忠誠心、そしてサッカーへの愛情です。知識・経験・緻密さも高く評価されています。更に我々が持つ「国際感覚」。今まで台湾内での優勝しか考えていなかったところに「ここを強化すれば国際試合で勝てる」という考えを初めて持ち込み、国際大会で勝つために必要なトレーニングを逆算して行うことが出来ることは日本人指導者の大きな特徴であり強みです。
3年前に私が赴任した頃は、最初のミーティングが無くいつの間にか練習が始まっているという状態で、選手達には人の話を聞く姿勢と集中力が欠けていました。そこで、「人が話している時は、その人の目を見て聞く」「分かったら“はい”と意思表示をする」という、ごく基本的なことから指導を始めました。練習の際も「今から開始・これにて終了」と、オンとオフを明確にすることにより集中するポイントを理解しやすくしました。日本では当たり前の習慣である「知り合いにあったら握手して挨拶する」ことも、私が指導した代表選手達が率先して行っている姿を周囲の人々が見て自分達でも取り入れ始めたおかげで今では広く行われています。
競技力向上以外に大事なもの
最後に、私がとても重要と考える人間教育について。今回の日本研修で印象深かったのは、フロンターレのホームゲームで出会ったボランティアの皆さんの笑顔。やらされているのではなく進んでやっている。たとえ勝負の場であっても現場で笑顔が多いことは大事です。台湾では笑顔の歴史が無いので、少年の世代から始めることは長い目でみると重要な要素です。どうすればこんな笑顔が生まれるのか?私は「認め合うこと」、そしてこれが「国際化」だと思います。競技力を向上させるために人間性が必要であることを理解してほしいし、そのために笑顔が必要なのです。前述した挨拶の習慣も同様ですが、こういった事も台湾の指導者達には肌で感じて欲しいです。これも、我々日本人指導者が必要とされる理由のひとつでしょうし、個人的にも手応えを感じているところです。
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