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「クラブの価値を高めるツールとは」 JFAスポーツマネジャーズカレッジ・セッション3が終了
2013年10月24日
10月18日(金)から21日(月)の期間でJFAスポーツマネジャーズカレッジ(SMC)のセッション3が開催されました。
鳥取県が舞台となった今回のセッションは、企画提案書の作成に始まり、大山町にある鳥取県フットボールセンターなどにおけるベンチの製作活動まで、「ビジネススキルの向上」と「クラブの価値を高めるツール」にスポットを当てた内容となりました。
まずは企画提案書の作成。行政、民間企業、組織内部などの様々な対象と、それらから得たいものを設定し、それぞれに向けた提案書を書き上げました。
提案書作成にあたって重要になるのは、自身が求めるものをその理由と合わせて明確に伝えることはもちろん、それ以上に相手が求めているもの、課題としていること、そしてそれに対する解決策、つまり相手のメリットが何かということをしっかりと打ち出しているものであるということです。
「相手の立場に立って」と言うのは簡単ですが、いざ考えてみると本当に深い調査や考察が必要になります。決して同じものは無いそれぞれの課題や求めるものに頭をフル回転させながら、今後もブラッシュアップを重ねていきます。
1日目の後半から2日目にかけてはニール・スミス氏(NPO法人グリーンスポーツ鳥取代表)による天然芝生化について様々な施設視察を含めたレクチャー、更には欧米と日本のクラブやスポーツに対する意識の違いについて講義です。
自分がラグビーを楽しむためのグラウンド獲得に向け、数年をかけて自分たちだけの遊び場を手に入れた経緯を様々なエピソードを交えてお話いただきました。
県有地であった土地の利用を認可してもらうための交渉は困難を極めるものでしたが、互いにメリットになる提案を根気強く続け、ようやく夢を実現させたというプロセスに一同感銘を受けるとともに、自分たちもできるはずだという自信が芽生えたのではないかと思います。
また、芝生化施設の視察では、JFAの行う「ポット苗芝生化モデル事業」を実施した施設を含め、数カ所の保育園や小学校などを訪れました。
6月頃に苗を植えて3ヵ月後にはグラウンド一面に緑の絨毯が広がっているという事実もさることながら、特に驚いたのは、とある河川敷の芝生化の話。もともとは背の高い雑草が生い茂り、人の入り込む余地のなかった河川敷が、肥料も散水もなく、ただただ定期的に草を刈りこむだけで、数年後には子どもが裸足でサッカーができる広場に姿を変えたというものです。
天然芝というと「コストがかかる」、「手入れが難しい」というようなイメージを抱く方も少なく無いのですが、このような講義や視察を通して、多くの受講生は天然芝に対する認識が大きく変わったという感想や、自分もやってやろうという意識を抱いたようでした。
2日目の夕方以降は、場所を大山町にある鳥取県フットボールセンターに移しての活動です。
2日目の夜には吉野比洋兒さん(株式会社センテコミュニケーションズ代表)による「サッカー界の今を俯瞰する」というテーマの講義。日本国内外における様々な変革を経て辿り着いた、今の日本サッカー界の現状や直面する課題を確認しつつ、グローバルとローカルという切り口で、理想のクラブの実現に向けた「日本のアイデンティティ」の確立、戦い続ける「覚悟」や「志」について力強いお話をいただきました。
翌日の3日目はフットボールセンターの近くにある「大山ものづくり学校」でのベンチの製作作業。ものづくり学校にある花壇を囲むためのものとして、熊谷玄さん(株式会社スタジオゲンクマガイ代表)と石川洋一郎さん(株式会社スタジオゲンクマガイデザイナー)のレクチャーで約30脚のベンチを受講生一人ひとりが生木から作り上げました。
最初のステップである、木の皮を剥ぐ作業から受講生は苦労の連続。普段はやることのない作業に汗を流し、悪戦苦闘しながらも無事に全てのベンチを作り終えることができました。
この作業を通じて得られたのは、ただ単純な成果物としての「モノ」ではなく、それを創りだすプロセスを含めた全てがクラブの求心力となるということ。人を「集める」ために高価な道具や素晴らしい環境を整えるのではなく、人が「集まる」ような活動やモノを考える必要があるのではないかという示唆が含まれていたような気がします。製作したベンチはものづくり学校に寄贈されますが、きっと受講生の記憶には「おらがベンチ」としてこの先も残り続け、今後近くに寄ることがあればかならずここを訪れるに違いないでしょう。
ところで、この「大山ものづくり学校」は、二人の女性が鳥取県内外の作家の方々の作品をより多くの人に知ってもらいたいという想いで立ち上げた学校です。ボロボロで廃棄物の山が残った廃校を、多くの人々の協力を得ながら再生し昨年開校されました。自身の夢の実現に向けて多くの困難を乗り越えてきたお二人の活動は、各受講生の「理想のクラブ」の実現に大きなヒントとなったのでないかと思います。
最終日は田辺芳生さん(株式会社プライム建築都市研究所代表)を講師に迎え、「鳥取県フットボールセンターをより良い施設にするための提案書」を作成しました。
今回のセッションを通じて学んだこと、気づいたことの集大成となるこの課題に対して、受講生からは質の高いバラエティーに富んだ提案がなされていました。今後これらの中からいくつかの提案が採用されるかも?
さて、4日間に渡った今回のセッションも気付けばあっという間に終わってしまいました。折り返しはもうすぐそこです。
「クラブの価値を高めるツール」をメインのテーマとした各講義で受講生が学んだこと、気づいたことを地元で活かしてくれることに期待しています。
余談ですが、今回のセッションでは、フットボールセンターの利用含め、鳥取県サッカー協会の方々に多大なご協力をいただきました。中でもフットボールセンターの運営に携わる山根卓也さんには、材料となる間伐材や道具の調達に係る行政との調整など、陰でこのセッションを支えていただきました。
実は山根さんは昨年度のSMC本講座修了生。今年度受講生のためにと大変な仕事を快く引き受けていただきました。このような素晴らしいネットワークがあることもSMCの魅力ですね!
それでは次回の報告をお楽しみに!
受講者コメント
加藤光平さん
(芝生関連講義について)まるで素人同然だった芝について、一気に興味を持つきっかけとなりました。人工芝と天然芝の違いや天然芝の有効性について、ニール氏の情熱とともに強く伝わってきました。
樋口昌平さん
(ものづくり学校での活動について)実際に体を動かし作業することでベンチへの愛着が湧きました。ものづくり学校は自分のクラブではないけれど、自分たちで使うものをつくり上げるということはクラブ愛を深めるために有効な方法だと感じました。
坪井一樹さん
(「サッカーの今を俯瞰する」の講義を受けて)グローバル化が進みローカルが衰退している現実において、ローカルの中でグローバルをいかに上手に利用して活動していくか、いかにして戦っていくか。現場の若手である自分が、できること、活用できることを考え、「かしこく」生きていきたいと思います。
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