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[特集]夏に負けない 夏場のコンディショニング 大切なのは「意識づくり」 後編
2021年08月06日
育成年代のトップにあたるアンダーカテゴリー日本代表の選手たちは、夏場の代表キャンプや遠征を通じて、どのように体調を管理しているのか。日本サッカー協会(JFA)のフィジカルフィットネスプロジェクトの菅野淳リーダーと、U-17日本代表とU-15日本代表の小粥智浩フィジカルコーチに話を聞いた。
○オンライン取材日:2021年5月17日
※本記事はJFAnews2021年6月に掲載されたものです
――試合後、練習後のケアで注意すべきことはありますか。
菅野 まずは体のほてりを抑えること。汗が吹き出ているときは、無駄なエネルギーを消費している証拠ですから、速やかに体を冷やします。練習場所、試合会場に水道があれば、体に水をかけて冷やし、一度体温を下げてください。ただし、頭から水を被って濡れたままの状態にしておくと蒸気でまた熱がこもってしまいます。髪はしっかりと拭き、練習着がびしょびしょに濡れているのであれば、すぐに着替えさせることです。
小粥 練習後にプールや水風呂に入れる環境があるといいのですが、一般のチームではなかなか難しいと思います。そんなときは、氷と冷水を浸したバケツなどに手首だけでも入れてみてください。爽快感を感じることができますし、体温を下げる効果もあります。もちろん、熱中症予防にもなります。
菅野 水道で手のひらと手首を冷やすだけでも違います。「手掌冷却」と言われ、手の平を冷やすことで効果が表れます。
――クーリングダウンは、コンディションの回復にも影響しますか。
菅野 一定のパフォーマンスを発揮したいのであれば、しっかりとリカバリーすることが欠かせません。今年3月にU-18日本代表のキャンプをしたときの話です。中1日で全日本大学選抜とのトレーニングマッチを2試合行ったのですが、2試合目にU-18日本代表のパフォーマンスがガクっと落ちたんです。コンディションが思うように回復していないのは明らかでした。1試合目が終わった後、大浴場で(温水と冷水の)交代浴をするように促していたのですが、実際に利用したのは半数以下でした。練習後のケアを含めて、U-18年代になってもコンディショニングを徹底することの重要性が浸透していないのが現状です。
自ら体調を管理できる自立した選手に
――アンダーカテゴリー日本代表では、選手個人に体調管理シートを用意していると聞きました。
菅野 体調を管理するためのデジタルツールを活用し、選手たちには日々、アンケート形式で質問項目に答えてもらっています。体重、起床時の脈拍、便通、疲労感、睡眠の質、前日のトレーニングの負荷、食事はしっかりと取れているか、パフォーマンス、睡眠時間、夜中に目が覚めた回数(トイレを含む)、体調不良(内科)、けがの状態などです。
小粥 年代によって項目数は違いますが、毎朝、チェックしてもらっています。代表活動中だけではなく、日頃から気にかけてもらうこと、やはり意識づけと習慣化がポイントになります。
特に体重が変化しやすい選手は、その変化に敏感である必要があります。代表合宿で生活環境と練習環境が変わり、トレーニングがハードになったりしたときに体重が落ちる選手は、ほぼ確実にコンディションを落としています。特に夏場は、それが顕著に見えますから。
菅野 トップレベルを目指すのであれば、どの年代の選手であっても練習前後に体重計に乗る習慣をつけた方がいいです。現場の指導者には、ノートやデジタルツールを駆使して選手の体調をチェックすることはもちろん、ピッチでのコンディションの変化も見てもらいたい。「この選手は普段と比べて体が重いな」と感じたら、直接話を聞いてみるのも一つです。そうすると、実は睡眠の質が悪かったりします。選手によっては、自分の健康状態をおざなりに記録している者もいるので、そこはしっかり見極めることです。
――睡眠の質も、プレーに影響するんですね。
菅野 夏場は寝苦しくて睡眠の質が落ちることがよくあります。エアコンが普及していなかった時代は汗をかきながら寝ていましたが、今ではエアコンの設置が当たり前になっています。家庭はもちろん、合宿や遠征先の宿泊施設にも備わっています。使えるものは適度に使ってください。もちろん、冷やし過ぎるのはよくないですよ。目安としては、室温の設定は24度から25度くらい。除湿(ドライ)の機能を使ってもいいと思います。これも指導の一つです。
小粥 「エアコンを使っても大丈夫ですか」とよく聞かれますが、自分にとって心地良い温度、眠りやすい温度で過ごすことを優先するようにと答えています。熱がこもった部屋で寝苦しさと戦うのではなく、自分が過ごしやすい状態をつくること。快適な睡眠こそが、スピーディーな回復につながります。
――育成年代から体調管理を徹底することが重要なのですね。
小粥 最高のパフォーマンスを継続するには、ある程度のコンディションを維持する必要があります。良い選手ほど体調の変化に敏感です。最高の状態でピッチに立ちたいと思うのならば、ピッチ外で自分を律する必要がありますし、体調管理に目を向けることは不可欠です。
菅野 指導者として、選手の体づくりをサポートすることも大事ですが、「意識づくり」にも力を入れる必要があります。選手には、自分の体にもっと関心を持ってもらいたい。分からないことがあれば、身近にいる指導者に聞いてもいいですし、今はスマホでも簡単に調べることができます。自ら体調を管理できる、自立した選手になってほしいです。個々が意識を高めることが、将来的に日本サッカー界のレベルアップにつながると信じています。
今後、JFAでは育成年代に向けて、ガイドラインを作成していくつもりです。その年代に応じた情報を選手個人に届けるのが理想。スマホでもパソコンでも、いつでも誰でも必要な情報を入手できるように考えています。
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