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『育成年代のメディカルについて6』 ~JFAアカデミーの取り組み~

2012年04月09日

目 次
第一回『早期発見・早期安静の重要性』
第二回『セルフチェック』
第三回『セルフコンディショニングの実際』
第四回『オスグットについて』
第五回『腰椎分離症について』
第六回『その他の傷害について』

第六回『その他の傷害について』

過去5回、育成年代でのメディカルの考え方について、JFAアカデミー熊本宇城の取り組みや実際の傷害を
紹介してきましたが、今回は最終回ということで、2011年度のJFAアカデミー熊本宇城の傷害報告について、
紹介したいと思っています。


 
わかりづらいデータになり申し訳ないですが、ご覧頂いた方には是非、一つ一つ丁寧に見ていただければ嬉しいです。

最初に語句の意味を説明します。
外傷=1回のストレスによって起こるケガ(打撲・捻挫・骨折など)
障害=小さなストレスの積み重ねで起こるケガ(○○炎・オスグット・腰椎分離・疲労骨折など)
傷害=外傷+障害
 


赤いグラフをご覧ください。
このグラフは学年ごとの疾患を、外傷・障害・内科的疾患他の3種類に分類したグラフです
※グラフのデータは全てアカデミーの練習に支障をもたらした傷害のみを対象にしています。1年生は入校前からの
傷害も含めています。




このデータを見ると、2・3年生に外傷が多く、1年生に障害が多いことがわかります。
また、内科・他は、1年生が多く、2年生が少ない傾向にあります。


 
2・3年生に外傷が多いのは、高学年になると、体つきも良くなり、プレー自体の強度が上がったことや、
公式戦などへの出場機会が増え、激しい接触プレーで受傷したことも原因と考えています。
アカデミーの2年生は、体つきがしっかりした選手が多いので、3年生と似たデータになったと考えています。
接触プレーやアクシデントによる受傷は仕方ありませんが、非接触や防げる外傷は、予防トレーニングを行い
対処する必要があります。



一方1年生は、障害が多くなっています。体もまだ強くない選手も多く、プレー自体の強度はあまり強くなかった
のかもしれません。しかし、柔軟性や筋力などの面で、課題を持った選手も多く、小さなストレスの積み重ねが、
障害の発生に繋がったと考えています。


 
内科・他について、1年生が多いのは、環境の変化や身体の機能自体がまだ子どもであったのかもしれないと
考えています。その点2年生は強い選手が多く、極端に少ない数値となったように思います。

続いて青色のグラフをご覧ください。
これは、外傷・障害・内科他の発症を月別に分類したグラフです。



4月の障害が極端に多く、全体を眺めると外傷・障害は、9~11月に増えているように見えます。
また内科他は、2月に最も多くなっています。


 
4月の障害が多いのは、新入生の症例が中心です。柔軟性や筋力の面で課題を考慮して、コンディショニングを行ったり、
個々のレベルにあった負荷にしたりする必要があると考えています。



また9~11月に傷害が多くなっているのは、大会や公式戦等を含めて、プレーの負荷が高くなる時期であるということが
考えられます。この時期のトレーニング負荷の調節も、もっとする必要があるかもしれません。
また、休みの間に、各々選手が、セルフコンディショニングをしっかり行うことによって、この数値を改善できるとも考えて
います。
 


2月(冬場)に内科他が多いのは、例年のことでもあり、世間でも同じことだと思います。だからと言ってしょうがないでは
済まさずに、手洗い・うがい・咳エチケットなどの予防策を徹底すること、また、寮生活ならではの注意点を理解し改善する
こと≪(換気)(取手・椅子の背もたれの消毒)(衣服を清潔に保つ)など≫が重要と考えています。

次は、傷害について部位別で観察してみました。



傷害の種類についても、続けてご覧ください。



3年生は、大腿部の部位が多く、種類でも大腿部打撲が多くなっています。
2年生は、足関節の部位が最も多く、種類でも足関節捻挫が多くなっています。
1年生は、部位では膝、種類では腱炎・周囲炎とオスグットが多く発症しています。


 
緊迫したゲームを行うことの多い3年生は、試合を行う度に接触プレーで大腿部を打撲していた印象があります。
予防は難しいため、起きてしまった時の対処については、しっかり教育することが必要だと考えています。

日本サッカー協会の公式サイトのメディカルコーナーには、応急処置を含め、サッカーに関係したメディカルについて
様々な有益な情報が載せられています。是非ご覧ください。


 
2年生は、身体の成長に伴い、プレー強度が高くなり、足関節捻挫が接触・非接触において起こっています。
練習前の予防トレーニングで足首周りの安定性を高めるトレーニングを多く行うことで、改善させたいと思っています。


 
1年生は、別データではありますが、今年1年で最も身長が伸びた学年でもあります。骨の成長に伴い筋肉の腱や
付着部に負担がかかって、腱炎や、付着部炎(オスグット)が多くなったものと考えています。



 
わかりづらい話ですが、ハムストリングス(ももの裏)の柔軟性不足や、股関節の外転筋力不足などの傾向も1年生に
多く診られます。
ももの裏が固くなり骨盤が後ろに倒れて、力を発揮する時に膝に負担がかかったり、股関節の外転筋力が弱くて、
動作をする時に膝が内に入って膝に負担がかかったりしたのかもしれません。
柔軟性と筋力のバランスを整えることが引き続き重要だと考えています。


 
アカデミーでは100%でプレーできる時間を取ることを重要に考えており、傷害が発生し練習に支障がある場合は、
所属クラブの皆さまのご協力のもと、別メニューで調整させていただいています。


 
今回得られたデータで、各年代の特徴や、アカデミーの選手の特徴をしっかり理解し、少しでも選手が良いトレーニング
を積むことができるように、今後のコンディショニングに反映させて行きたいと思います。


 
また、今回の記事で述べたことはほんの一部であり、全てではないと思います。
また違う見解や、新たな発見があるのではないかとも思っています。

これからも、スタッフだけではなく、選手たちともしっかりディスカッションして、どういうコンディショニングが必要なのか
考えて行きたいと思っています。
 


育成年代のメディカルについて紹介してきましたが、今回、第6回で最終回となりました。読んでいただいた皆様、
ありがとうございました。


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