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英文国際誌『Orthopaedic Journal of Sports Medicine』に論文が掲載されました。
2023年03月06日
世界的なスポーツ医学の整形外科のオンラインジャーナル『Orthopaedic Journal of Sports Medicine』にJリーグチームドクター会のメンバーおよびJFAサーベイランス部会メンバーからなるプロジェクトチームが執筆した論文が掲載されました。
本論文はJFA 医学委員会サーベイランス部会が運営・管理する外傷・障害/疾病調査JFA-Surveyのデータを解析し、コロナ禍のJリーグの選手の怪我の発生に与えた影響について報告しております。
≪論文情報≫
https://doi.org/10.1177/23259671221149373
タイトル:
Impact of the COVID-19 Pandemic on Injury Incidence in Japanese Male Professional Soccer Players
執筆者
JFA:長尾雅史、赤木龍一郎、池田浩、武冨修治
Jリーグ:松永怜、深井厚、山藤崇
執筆者コメント
松永怜 先生(アントラーズスポーツクリニック)
Jリーグチームドクター、JFAサーベイランス部会メンバーの協力のもと、Jリーグを代表して「COVID-19パンデミックがJリーグ選手の傷害発生に与えた影響」についての論文を執筆させていただきました。この論文はCOVID-19パンデミックの影響を正確なデータを基に解析した世界で最初の論文になります。新型コロナウイルス感染症の流行により、Jリーグでも2020年に約4ヶ月間の競技中断を余儀なくされました。この論文では、前年度と比較して全体の怪我の発生率は変わらないものの、競技再開後の2ヶ月間において肉離れなどの筋損傷の発生率が約3-5倍増加するということが明らかになりました。このことから、今後も予期しない中断期間があった場合には競技再開後少なくとも2ヶ月間は筋損傷の発生に注意が必要であることを示唆しています。ヨーロッパをはじめとする世界各国ではすでに行われていますが、Jリーグ全体で傷害・疾病統計を行うことで怪我の発生に関する様々なデータが明らかになり、選手の怪我の予防や早期復帰に役立ちます。これからも日本サッカーの強化のために、メディカルも日本だけでなく世界で活躍できるように前進していきたいと思います。
武冨修治 先生(JFA医学委員/サーベイランス部会長)
スポーツにおける怪我を予防することは、チーム・選手にとってはもちろん、競技力向上にもつながり、日本サッカー全体においても非常に重要な課題です。本研究はサーベイランスという怪我の予防に必要な疫学研究の一つになります。疫学研究は多くの選手やチームが参加することで、研究の精度が上がり、新しい発見につながります。一方、怪我はチームの外には出しにくい情報であり、多くの選手・チームが参加することは容易ではありません。チームの垣根を越えて、Jリーグの先生方が協力して2019年に立ち上げたJFA-surveyの一部である本プロジェクトによる成果は、内容が素晴らしいだけでなく、日本のサッカーチームと医学スタッフが一丸となって怪我の予防に取り組んでいることを国内外へ発信するという意味でも意義深いと考えています。このような取り組みを継続することが重要です。ご参加いただいたチームや選手、ドクター、トレーナーの皆様に感謝するとともに、引き続きご参加ご協力いただければ幸いです。