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サッカーでの安心・安全を守るのは関わる全員の役割 ~サッカーの活動における暴力根絶に向けてVol.121~

2024年08月08日

サッカーでの安心・安全を守るのは関わる全員の役割 ~サッカーの活動における暴力根絶に向けてVol.121~

相談件数の割合は育成年代だけで8割以上

2013年より、あらためて取り組み始めたサッカー現場での暴力・暴言の根絶。日本サッカー協会(JFA)の暴力等根絶相談窓口に上がってくる件数の推移は、図1・2の通りです。全体の件数は増える一方ですが、これは取り組みを実施しているにもかかわらず状況が悪化しているというよりは、世の中の認識が高まったことで顕在化したと見られており、しばらくは増えるものと捉えるべきです。このことは、国際サッカー連盟(FIFA)のコースでも共有されています。

内容に関しては、当初と比較して直接的暴力の割合は減り、暴言・威嚇行為等が大半となっています。直接的暴力に関しては、抑止が効くようになってきたと捉えることもできますが、件数自体は減っていないことも事実です。年代別に見ると、変わらずU-12年代が約半数を占め、育成年代だけで8割以上となっています。まずは子どもたちを守らなければならないのは間違いありませんが、その一方で、どの年代にも間違いなく暴力・暴言などがあると見ることもできます。

ウェルフェアオフィサー制度

2015年から開始したウェルフェアオフィサー制度では、2022年からチーフを配置し、予防・啓発を第一として計画的に体制を検討していただく方向で進めています。本連載でも一部ご紹介していますが、さまざまな取り組みをスタートしていただいています。自組織の状況に応じて目標を持ち、主体的に取り組んでいただくことが最適であると考えています。

大会や試合の現場においては、マッチ・ウェルフェアオフィサーを活用し、関わる人の理解を広げていただいている都道府県サッカー協会(FA)もあります。今後、リーグ戦の環境で実施していただく事例を増やしていければと考えます。

全国の日常に届けるためには、各クラブに直接アプローチすることが重要です。そのためには、種別を問わず、クラブ・ウェルフェアオフィサーを全クラブに配置する方向で進めています。各クラブから毎シーズン、その役割を担う人を立てていただき、リーダーとして「クラブ全員の役割であること」を伝えながら、クラブの皆さんと共に取り組んでいただくことを想定しています。基本事項をeラーニング形式の研修で学んでいただきつつ、どのように取り組むかを記したハンドブックも作成しました。ご確認をどうぞよろしくお願いします。

クラブに関わる皆さんに、サッカー界 、スポーツ界全体の取り組みであること、安心・安全を守るのは全員の役割であることを伝え、クラブで大切にすることや行動規範を作成し、関わる全員で定期的に確認することで、互いの期待の食い違いを防ぐことができます。そうした基本的なことが確実に進めば、変化は起こっていくと思います。

処罰を重くし、待ち受けて取り締まるだけでは、真の変化は起こりません。関わる多くの人が、このトピックをネガティブなことであると感じず、認識を高め、ポジティブに、当たり前に日々意識するようになること。ポジティブな文化としていくことによって変化が起き、また継続していくと考えています。

おわりに

スポーツは本来すばらしいものですが、集団で、チーム同士で、あるいはチーム内で競争があり、さまざまなプレッシャーもあり、本来のすばらしさや心から安心・安全に楽しむという大前提が、残念ながら阻害されてしまうこともあります。それは非常に残念なことであり、そのことが原因でサッカーを嫌いになったり、やめてしまったりするようなことはあってほしくありません。

暴力・暴言などに関しては、子どもたちが最も被害を受けやすく、守るべき存在であるということが示されています。それは、相談窓口に上がってくる案件の数を見ても明らかです。一方でFIFAでは、「もろい、被害を受けやすいグループ」や「リスクが高く、注意を払うべきグループ」があるとしており、それは必ずしも子どもではなく、大人(女子選手や女性審判員)、障がいのある選手、マイノリティーにあたる選手、そしてタレントパスウェイに乗っている子どもやエリートユースプレーヤーもそうであると示しています。そういったことも理解し、より幅広く注意を払っていく必要があります。

「サッカーでの安心・安全を守っていくのは関わる全員の役割」です。関わるあらゆる人が意識を高く持ち、互いに気付きを伝え合うことが極めて重要です。「コンプライアンスからポジティブな文化へ」、取り締まり、待ち受けるだけでは、決してなくなっていきません。皆さんが当たり前に、日々意識するものとなることが重要です。皆さんの関わりを得て、パワーを持って進めていきたいと考えています。

セーフガーディング eラーニング(クラブ・ウェルフェアオフィサー向け)
https://www.jfa.jp/respect/safeguarding_e-learning.html
クラブ・ウェルフェアオフィサーハンドブック
https://www.jfa.jp/respect/safety_protection/
welfare_officer_handbook.pdf

【報告者】今井純子(JFAリスペクト・フェアプレー委員長)

※このコラムは、公益財団法人日本サッカー協会『テクニカルニュース』2024年5月号より転載しています。

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