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【ワールドカップトピックス#第6回】ロシア、ファンフェストの新たな形
2018年07月12日
開催国としてベスト8進出で2018年FIFAワールドカップの盛り上がりに大きな役割を果たしたロシア代表チームは、ファンフェストのあり方でも新たな可能性を示した。
7月8日(日)、クロアチアに延長PK戦の末に敗れ、国中のファンが落胆したソチでの試合から一夜明けて、チームはモスクワのファンフェストの会場に姿を見せ、大会中のファンの応援に感謝を述べていた。
モスクワのファンフェスト会場はルジニキスタジアムから川を挟んだ対岸にある。モスクワ大学に隣接する広大な敷地は、駆けつけた2万4千を超えるファンで埋め尽くされ、特設ステージに並んだ選手たちに熱い視線が注がれていた。スタニスラフ・チェルチェソフ監督と選手たちが一言話すたびに、会場は大きな歓声に揺れ、笑顔と歓喜に包まれていた。
ファンフェストがワールドカップに導入されたのは2006年大会。スタジアムで観戦できないファンのためにパブリック・ビューイングを行う場所として用意されたのだが、その発端は日本と韓国が共催した2002年大会で行ったパブリック・ビューイング。例えば、東京の国立競技場には4万5千人が集まって、地方で開催されていた日本代表の試合を観戦し声援を送った。自然発生的な「街頭TV」は、1998年フランス大会でも町の公園やカフェの店先などで見られた。その形を、より組織的で大規模なものに発展させたのが、ファンフェストのパブリック・ビューイングだった。
ロシア大会のファンフェストもメインは試合のパブリック・ビューイングで、広いスペースに設置された大型スクリーンに各地の試合が映し出される。一部に仮設スタンドが用意されたところもあるが、例えばカザンの場合は仮設スタンドなしのオープンスペース。カザンカ川沿いの広いスペースを利用した会場に、大型スクリーン付きステージの前のグラウンドに柔らかな木のチップを敷き詰めて、観客はその上に座って観戦できる。食事スペースは隣接した別エリアに用意され、にんにくと醤油で下味がついたとりの唐揚げが何故か「カブキ」という名称で売られている。オフィシャルグッズに並んで、地元タタールスタン地域を代表する民芸品を扱う店が数件ならび、土地の色を加えていた。
ファンフェストが最も賑わったのは、当然ながらロシア戦当日だ。準々決勝の時には、数時間前からロシアファンが集まりはじめ、試合開始1時間ぐらい前には入場札止めになった。入れないファンは近くに小高い場所を見つけ、そこに登り、試合展開に一喜一憂していた。
今大会の各試合開催地に設けられたファンフェストで最も多く目に留まったのは、どの会場にも小学生や就学前児童など小さな子供を連れた家族連れがとても多い点だ。子供たちは広いスペースを自由気ままに走り回り、時々試合を見る。会場に漂う、どこかのんびりした雰囲気と、X線を使った入場時のセキュリティチェックで、子供を安心して連れてくることができる。安全性の高い、新しい公園といったところか。全般にテンションの高いファンが多かったドイツや南アフリカ、ブラジル大会ではあまり見られなかった光景だ。
子供連れが多いのは、7月8日(日)のモスクワの会場にロシア代表が登場した時も変わらない。フェイスペイントをして、ロシアと書かれたTシャツを着た子供たちが、選手たちを前に「ロシア!ロシア!」とはしゃいでいる。すっかり代表チームのファンという感じだ。その前で、FWアルチョム・ジュバ選手が「僕らはロシアがサッカーの国だと証明した」と話し、MFデニス・チェリシェフ選手は「ワールドカップで国全体に喜びを与えることができた」と集まったファンの前で胸をはった。
ファンとチームの交流の場。開催国ならではの部分もあるが、これまであまりなかった形がロシアで一つ加わった。
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