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JFAファミリーフットサルフェスティバル2011 with KIRIN スペシャルステージ in 宮城 7月24日に宮城県立松島フットボールセンターで開催
2011年07月29日
「JFAファミリーフットサルフェスティバル2011 with KIRIN スペシャルステージ in 松島『がんばれ東北!』」が7月24日、宮城県立松島フットボールセンターで開かれた。東日本大震災の発生から4カ月余り。被災地で初めて行われたスペシャルステージで、20チームが参加した。以前のように自由にフットサルが行える状況ではないが、参加した家族は久しぶりに快い汗を流した。ゲーム終了後にはフットサル教室も行われ、あらためて楽しさをかみしめていた。
ファミリー賞
ファミリー賞に輝いたピンパォ~ンは、フットサル賞を獲得した@Tom’Sを3分割したうちの1つ。メンバー構成は、3家族5人。阿部典文代表(29)は最も和気あいあいとしたチームに贈られるファミリー賞受賞に「チームの目標である競技を楽しむ姿勢が評価されたことは最高の喜びです」と素直に喜んだ。
今大会の目標は「子どもたちに楽しんでもらい、フットサルは楽しいものだと思ってもらうこと」。主役は子どもたちで、大人は引き立て役に徹した。メンバー構成は基本的に親子は別々で、大会ごとに組み合わせを変えている。「いろいろな人とプレーをすることが大事。それに互いのプレーも見られる。親子の会話が弾むし、子どもの成長も見られるので理想的です」という。
成績は1勝3敗だったが新たな発見もあって、収穫は大きかった。GKの千葉英生さん(41)はまったくの初心者だが、息子さんが出場するということで自分もピッチに立った。ファインセーブの連発で周囲をあっといわせた。阿部氏は子どもの笑顔を見ることができて「夏休みのいい思い出になりました」と話していた。
フットサル賞
フットサル賞は@Tom’Sが獲得した。21人のメンバーが3つのチームに分かれて参加。子どもたちは同じサッカー少年団でいつも一緒だが、親たちを含めての合同練習は月に1回。今野文敬代表(39)は「サッカーの試合の合間を縫ってフットサルの試合に参加しています。この大会は親子で楽しめるので、『次はいつ』と子どもたちにあおられています」と苦笑いする。
試合は子ども中心で、親は控え。今野氏は「勝ち負けにこだわらず、楽しくやるのが基本。勝てればさらにいいという考えでやってます」と話す。サッカーを離れても家族ぐるみの付き合いをしている。夏はバーベキュー、秋は芋煮会など。「今回も親子旅行の一環です」(今野氏)という。会場では大きなテントを2つ張って、食事も一緒。「帰りも一緒に食事をしていきます」と仲良く帰って行った。
フェスティバル賞
フェスティバル賞のFC球蹴(たまげった)は、青森市からの参加。メンバーは福士賢一代表(43)一家3人と子どもの友だち、代表の知人の5人編成。福士代表と山田秀哉さん(26)はフットサル社会人リーグの仲間、福士奈美さん(33)は県のミックスフットサルリーグで2年連続の女子得点王、福士一朗君と大木皓聖君(ともに小学6年)は以前同じサッカー少年団でプレー。今は大木君が山形県に転校して、久しぶりの再会となった。
チームは4年前に結成。練習は週1回で、モットーは「楽しく伸び伸び、いつもやっていることを楽しくやろう」。試合では奈美さんと一朗君が2本シュートを決めて、各4得点。大木君はDFで、福士代表はGKで頑張った。みんなよほど楽しかったようで「ファミリーで参加できる大会がもっとあればいいのに」と口をそろえていた。
キリンフットサル教室
キリンフットサル教室の講師は、フットサル日本代表でスペインリーグ1部のグアダラハラで活躍中の星翔太(25)とバルドラール浦安・荒牧太郎(26)の現役プレーヤー2人が担当した。まず「集中して練習することとドリブル突破を身につけてほしい」というテーマを与えた。
コートを走り回ってウオーミングアップ。続いて講師の指示する数字に従って知らない相手とコミュニケーションを取り、即興で数字通りのチームを結成する訓練。スピーディーな動きと、頭の切り替えの速さが必要とされる。試合で使えるドリブルとパスの練習も繰り返し行われた。
2人は「いっぱい失敗してもいいから、積極的にチャレンジして」とハッパをかけていく。足の裏で止め、ターンして抜け出す「マルセイユ・ルーレット」や足で止めたあと左右に振る「エラシコ」、スペインの必殺技「ダブルタッチ」などを次々と伝授した。最後はゲームでおさらい。「1分1秒を大事にして少しずつ努力していけば、我々を抜ける」と激励していた。
キリンビバレッジ東北地区本部自動販売機営業部担当部長 山口晃さん
オフィシャルパートナーのキリンビバレッジ山口晃東北地区本部自動販売機営業部担当部長(48)は久しぶりにフットサルを楽しむ人たちの元気な姿に「イベントが開催できて本当に良かった。しかもみなさんの笑顔を見ることもできて良かった」と喜んだ。
キリングループは震災の直後、宮城、岩手、福島県に対し計3億円の見舞金を提供。さらに3年間で孤児支援のために60億円を用意する。その第1弾としてすでに「紅茶で笑顔を」プロジェクトを終了。5月から7月まで販売された「午後の紅茶」の売り上げの中から約1億円を義援金として寄贈した。この取り組みは今後も続けていくという。
同グループは78年からサッカー日本代表や女子サッカー、また次世代の選手を育てるための支援を続けている。山口氏はサッカーの経験はないが「見るのが好きで、なでしこジャパンの試合も欠かさず見て応援しました」という。「女子サッカーもさらに盛り上がってくれるといいですね」と話していた。
宮城県サッカー協会・フットサル委員会 渡辺秀一委員長
大会の運営に当たった宮城県サッカー協会渡辺秀一フットサル委員長(56)は成功裏に終わり、ホッとした表情を浮かべた。県の沿岸部の学校や体育館は、がれき置き場や避難所として使われたり、仮設住宅が建てられたりで使用不可能な状態。8面のフットサルコートが取れる会場のフットボールパークもグラウンドの半分が地震で波打ち、現在も補修中だった。
「参加チームは20と少なかったが、開催できたことが何よりでした」。東北のフットサルは男女とも年々盛んになっているが、リーグ戦は現在ストップしたまま。渡辺氏は石巻地方広域水道企業団の課長として、震災直後はライフライン確保のため40日間家に帰れなかったという。そのおかげもあって95%まで復旧。今度はリーグ戦再開に向けて「日程や会場を変更して、なるべく元の状態に戻したい」と意気込んでいる。
文・写真提供:日刊スポーツ