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FIFAセーフガーディングサミットに出席 ~サッカーの活動における暴力根絶に向けてVol.118~
2024年02月13日
セーフガードは短距離走ではなくマラソン
近年、国際サッカー連盟(FIFA)ではセーフガーディングに積極的に取り組んでいます。世界中の加盟協会を対象に、セーフガーディングを協会内で開始し推進するためのツールキットを提供し、その後オープンユニバーシティ(OU)と連携してオンラインの教育プログラムを開発。70の加盟協会、6つの地域協会、2つの大陸連盟から100人を超える参加者を募り、1期生として2年間にわたるカリキュラムを提供してきました。
日本サッカー協会(JFA)からは、JFAリスペクト・フェアプレー委員会の松崎康弘元委員長、山岸佐知子前委員長、私の3人が第1期のカリキュラムに参加しました。コース1~5と、間にオンラインミーティングも数回挟み、対面の集合研修も実施。そして今回は全カリキュラムの修了式とともに、FIFAセーフガーディングサミットが開催されました。
カリキュラム全体はかなりインテンシブで、専門的な表現も多く、英語での講義には難儀しました。しかし、大事なトピックであることは間違いなく、世界中で組織的に、真剣に取り組まれ始めている流れを感じています。
JFAの取り組みにおいても、このカリキュラムから参考にしたキーワードがいくつもあります。一つは、「セーフガーディングは関わる全員の役割」ということです。全員が当事者として関わっていくことの重要性をあらためて認識しました。もう一つは、「コンプライアンスからポジティブな文化へ」です。取り締まりや待ち受けだけでは、状況は決して変わっていきません。みんながポジティブに関わっていくこと、当たり前にみんなが自然に気にするようになることが重要だと認識しています。その他にもさまざまな学びがあり、もちろんその国の文化や土台がありますが、より細かいところに関しても、今後導入していかなければならないと思っています。
こうした研修を受ける中で、われわれもリスクに対する感覚をもっと高めていかなければならないと感じます。社会全体ではさまざまな問題が実際に起こっており、スポーツの現場も決して無縁ではありません。スポーツは本来すばらしいものですが、一方でリスクが高いのも確かです。そのことから目を背けず、スポーツのすばらしさが前面に出るようにしていきたいと考えます。
FIFAセーフガーディングサミットより
集合研修でも今回のサミットでも、グルーミング(最終的に性的行為に及ぶことを目的として、その目的を隠して子どもとの信頼関係を構築するための行動をとること)がトピックとして大きく扱われました。アメリカの体操競技での事例も聞かれましたし、日本では旧ジャニーズ事務所の問題が社会的に大きな話題になっています。「サバイバー(虐待被害者)」によるセッションやスピーチもあり、告発が非常に困難で何年もかかったこと、その間、そして今も大きな心の傷や葛藤が残っていることが伝えられました。日本でももっと意識を高め、真摯に向き合い、扱っていくべき課題であると感じました。
今回のサミットでは、加盟協会による好事例の発表も多数あり、日本の取り組みについても松崎さんがプレゼンテーションを行いました。まだまだ途上ではありますが、全国の皆さんのご協力で、評価に値する取り組みを進行できていると受け止めています。それぞれの状況や文化の違いはありつつも、さまざまな取り組みが世界中で進められています。
最後に、2日間の締めくくりとしてFIFAセーフガード&チャイルド・プロテクションの責任者であるマリー=ローレ・ルミヌールさんが下記のスピーチを行い、サミットは終了しました。
「組織的な変革は一朝一夕には起こりません。セーフガードはマラソンであり、短距離走ではありません。FIFAがサッカーの発展とは、サッカーの技術だけでなく、サッカーの活動を通じて弱い立場に置かれた人々を保護する注意義務も含まれることを認識させるきっかけになったと確信しています。この部門の使命は、試合におけるあらゆる役割の、全ての人を守ることです。男女のFIFAワールドカップのボランティアがいじめにあうこともあれば、女性レフェリーがセクシュアルハラスメントを受けることもある。誰にでも起こりうることなのです。一方で、ある特定のグループは、他のグループよりも頻繁に有害な行為や性的暴力の標的にされていることが分かっています。それは子どもたち、少年少女、女性、LGBTコミュニティーのメンバー、障害のあるアスリート、そしてもちろん、エリートアスリートを目指す人たちです」
【報告者】今井純子(JFAリスペクト・フェアプレー委員長)
※このコラムは、公益財団法人日本サッカー協会『テクニカルニュース』2023年11月号より転載しています。
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