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[特集]部活動の実情とこれから 事例紹介~部活動の形とは~vol.04 「クラブ+学校」で最高の環境を NPO法人幕総クラブ 後編

2020年09月17日

[特集]部活動の実情とこれから 事例紹介~部活動の形とは~vol.04 「クラブ+学校」で最高の環境を NPO法人幕総クラブ 後編

部活動の形は一つではない。地域や環境によってさまざまな課題があり、それぞれに合った取り組みがある。
今回は、「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」に沿った形で活動しながら全国大会に出場した品川区立荏原第一中学校、JFAが作成した「中学校部活動サッカー指導の手引き」を活用している近江八幡市立八幡西中学校、合同部活動として地域の生徒を迎え入れている横須賀ブロック、学校と地域クラブの連動を実現している幕総クラブの事例を紹介する。

※取材は2m以上の距離を確保し、インタビュアーはマスクを着用して実施
※本記事はJFAnews2020年4月に掲載されたものです

前編はこちら

FC MAKUHARI創設で選手に選択肢が生まれる

FC MAKUHARIが立ち上がったことにより、幕張総合高校にもメリットが生まれた。学校の活動では教員の負担が増えてしまうが、NPO法人の活動には教員以外の指導者もかかわることになる。また、使われていなかった学校のグラウンドやさまざまな設備を有効に活用することにもつながる。
公営のスポーツクラブでサッカーをするには一定の費用がかかる。一方で、公立でも放課後にグラウンドを貸して活動しているのは、千葉県でも幕張総合高校くらい。学校はその時間の運営を民間に委託して、そこで得た利益を部活動の経費に充てるなどしているという。島田氏は「グラウンドを民間に開放することで、地域の人々にとっても学校が身近な存在となり、その学校のPRにもつながる」と語る。
今でこそ、地域で知名度が高くなったFC MAKUHARIだが、活動をスタートした頃は選手たちが高校2年生、3年生に進級する際、どちらでプレーするかの意思は個々に確認していた。高体連のチームで活動している選手がクラブチームで活動を始めることは問題ないが、クラブチームで活動していた選手が高体連のチームに加わる際は選手登録が6カ月間、認められない。ただし、学年が変わるタイミングではこの規定は適応されない。
そのため、幕張総合高校のサッカー部に入る生徒は、1年生時には全員が高体連のチームに登録し、1年目の活動を通じてサッカー部で活動を続けるか、試合に出られる可能性が高いFC MAKUHARIで活動をするかを選択する。
「2年生のときにFC MAKUHARIで活動した生徒が、3年生になるタイミングで再び高体連のサッカー部に戻った例もあります。逆に3年生になる時にFC MAKUHARIを選ぶ選手もいます。より多くの選択肢を与えられることができているのかなと感じています」
FC MAKUHARIの活動を始めた当初は、選手たちがどのような反応を見せるか不安もあったという島田氏だが、それは杞憂(きゆう)に終わった。「高体連で試合に出場できなかった選手がFC MAKUHARIで公式戦の経験を積み、レベルアップしていく姿を目の当たりにしました。幕張総合高との合同練習の際に紅白戦をしても、良い勝負をしたりするわけです。『環境が選手のレベルを上げるんだ』と1年目から感じました」と、選手たちの成長スピードが上がっていることに驚かされた。
また、保護者にとっても自分の子どもを応援する機会が増えたことで、サポートがより手厚くなった。少子化の影響を受けてFC MAKUHARIの入部希望者が少なくなったときも、父母会から「この活動は重要だから、継続できるように支援しよう」という声が起きたという。

日本には学校がある その環境を活用すること

今年からFC MAKUHARIは、近隣の学校の生徒にも門戸を開くことにした。「全ては難しいですが、ある程度は子どもたちが求めるサッカーを提供する。そういう環境をもっとつくってあげたいと思っています」と、島田氏は言う。
FC MAKUHARIの活動がモデルケースとなり、学校とクラブチームが共同する事例が増えていくことも願っている。「Jリーグでは、柏レイソルが、私たちのやり方を参考にして日体大柏高校と連携しています。ほかにも、われわれをモデルケースにしているチームがいくつか出てきていて、考え方は広まっています。学校にとっても、宣伝効果があると思いますし、こうした活動を通じて『あの学校に行きたい』と思ってもらうことも大切でしょう。ヨーロッパに地域に根差したスポーツクラブがあるように、日本には学校があります。その環境を積極的に活用することが、今後の日本サッカーの普及と強化につながると思います」
2020年から、幕総クラブのトップチームはNPO法人から独立して活動していくことになった。現在、千葉県2部リーグに所属するこのチームを強化していくことで、「町のクラブとして人々が自然と集まってくる場になればいいと思います。欲を言えば、将来的には日本フットボールリーグ(JFL)に参入し、幕総クラブで選手を育ててプロにも輩出できるようなクラブになれたらいいと思っています」と島田氏は言う。
2020年4月には、「高円宮記念JFA夢フィールド」が千葉県に完成し、運用が開始される。日本サッカー界の新たな拠点からほど近いところで活動している幕総クラブにとって、各年代の日本代表チームの存在が間近になり、刺激を受けるだろう。今後も民間のスポーツクラブと学校がリンクして活動するモデルケースとして、選手が平等にサッカーをできる環境を創出していく。

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