札幌中央フットボールクラブ(北海道札幌市)
賛同するテーマ
団体の理念・ビジョン・方針
自主性と自立を重んじ、保護者の手を借りずに自らの手で活動することを掲げて発足し、本年創部10年を迎えることが出来た。勝利至上主義ではなく育成指導主義を主とし、100人のプロ選手を輩出することよりも100人の社会で活躍するOB,OGの輩出をめざし、縦割活動での上級生から下級生に対する対応や、選手層ばかり揃えて勝つチーム作りにせず、ひとりひとりの創意工夫によってチームをつくりあげていく中で協調性や意識の高さ、感謝の気持ちを含め礼節に重んじた活動を行なう。また他クラブで出場機会に恵まれない選手や仲間と合わずに辞めてしまった選手などに、うちのチームには何度でもチャンスがあることを伝え、出場機会を与えて取り組ませている。コロナ禍で練習ができない期間などの影響がありながらも部員は年々増加傾向にあり、令和3年度は創部以来最多の選手数95名(うち女子選手9名)のほか、卒業生が指導者として合計7名関わることで子どもたちとのコミュニケーションの中に重要な位置付けとして関わってくれている。これまで進学先に部活動のない子たちの次の活動場所について懸念していたが、ジュニアユースと女子U-15のチームを設立し、活動をスタートさせた。コロナ禍の厳しい活動状況の中、近隣の小、中学校(資生館小学校、中島中学校など)の協力を得て活動を継続し、冬季のフットサル活動では全道フットサル選手権大会2022の札幌地区予選ではついに激戦区を勝ち上がり悲願の札幌地区代表として全道大会へ進出することが出来た。(まん延防止対策期間のため全道大会は中止)
主な活動内容
週4~5回活動。年間総試合数120試合以上。
キッズ(幼稚園年中~)、小学生(1~6年生)の男女が活動。
令和4年3月時点 在籍選手数95名(うち女子選手10名)。
活動している拠点は天然芝のグラウンドで活動。
(札幌市立資生館小学校)
郊外ではあるが人工芝のグラウンドも使用できる環境づくり。
(YURIKOサッカースタジアム)
都心部の中のチームでありながら主たる活動が区内だけで活動できるクラブ。
雨天時および冬季間の施設貸与確保(札幌市立資生館小学校)
降雪期の体育館占有施設の確保
(札幌医学技術福祉歯科専門学校体育館)
連盟主催の低学年普及活動、キッズを中心とした幼稚園、保育園巡回指導のほか、障がい者スポーツ普及指導にも参加。
私達のグラスルーツ宣言
<引退なし>
・・・いつまでもサッカーにかかわれる環境でありつづけるために。
在籍後も卒業生という立場だけではなく、いつまでもサッカーだけに限らず、よきお兄さん、お姉さんとしてチームの選手にかかわれる存在として、競技としてのサッカーだけに限らず、審判活動やサポートを通じて、サッカーという競技から離れてしまうことなく、いつまでもかかわれる存在でありつづけていけるような取り組みをします。特に卒業生の中では競技を続けている卒業生や続けていない卒業生もおり、続けられていない卒業生の多くは学校生活に悩みを持つものや、進路の選択においてやむなく活動をいったん止めざるを得ない子たちも多いため、それぞれの抱える問題に合致できるような関わり方(競技を続けたいが現時点で活動できない選手にはボールを蹴られる場を子どもたちと一緒になって活動してもらうこと。メンタル的に友達同士の付き合いが難しく学校へ行くことが難しくなってしまっている子には、まずはサッカーに通っていた時のように、在籍選手とともに一緒になって活動できる雰囲気をつくり、学年の隔たりを超えて一緒に活動していく中で、下級生の世話を通じて自身の経験や、必要とされている意義を考えられる場を作っていく工夫をする。)をチーム全体の活動の中でサポートできるようにしていきます。
<補欠ゼロ>
・・・常に同じ気持ちで一緒にいることを意識して。
試合に出られる人数やベンチ入りできる人数には限りがありますが、出られる機会があるときはわずかであっても出場できる機会を設けることや、どうしてもその場に居合わせることができない場合でも、全体で参加している位置づけのもと、出られない選手の分もいっしょに取り組む(たたかう)ことを常に意識して取り組みます。人数が多くなったとしても、複数チーム参戦でできるだけベンチで待つことが少なくできるように、常に固定の選手だけが活躍することをしないためにも、条件設定などで交代順序や出場機会が常に同じ選手にならないように指導時から工夫しています。
<障がい者サッカー>
垣根のない活動から学ぶ場を創る。
知的障がいや発達障がい児童の子たち、機能障がいを持った子とも、わけへだてなく一緒に健常児と同じ活動を取り組ませていきます。本年も3名の選手を受け入れ、他の選手と隔たりなく一緒に活動しています。また支援学級に通う児童も練習時は一緒に活動することで多くの刺激を受け、小学校から中学校への進学時、本人の努力もあり、普通級への進学が認められました。サッカーにおいてもスターティングメンバーに入ることが出来ました。
今年度は令和3年12月に元Jリーガーでデフサッカーに力を入れている深川友貴さんを招き、手話での講座などを用いてコミュニケーションをとることなどチーム内の選手たちと受講し学びを深めることができました。
<女子サッカー>
創部時より女子選手を積極的に受け入れ、男子選手とともに活動をともにしてきました。これまでの卒業生も現在活動しており、練習にも顔を出してくれることで女性でも卒業後に活躍できることを伝えてくれることで将来的にも活動できることを伝える環境をつくりました。特に7期卒業生はエリートキャンプ選出選手も輩出し、在籍選手もほぼ各学年に1名~2名の女子選手が在籍していることから、コロナ禍の影響もあり1年延びたものの、ようやく女子チームの登録ができました。現時点で3名の女性指導者が在籍していますが、次なるステージに向けて女性指導スタッフの更なる拡充を行なっています。このうち1名は高校選手権大会予選で進学先のチームで主将を務め、全道3位で終えたものの、大学サッカーでも選手として取り組みながら指導者を継続していく予定です。
<施設の確保>
創部時に一番こだわりを持った項目でもあり、私たちのチームが現在成り立っている要因の一つでもあります。多くのクラブチームは人工芝グラウンドやテニスクラブ、フットサルクラブなどの専用施設を用いて活動するクラブも多く、札幌市内でも人工芝グラウンドが高校や大学を中心に整備されています。
しかし、小学生のクラブでは、潤沢な資金、北海道といえども土地の確保、特に冬季間の施設貸与は至難の業でもあります。多くの団体は学校開放などでの抽選で活動するチームもあり、開放時間に活動することになると夜間帯にかかることも多く、子どもたちの生活時間に影響を及ぼすことを懸念しました。
一方で、地区によっては進学などの環境を踏まえ、文教地区でもある私たちの札幌市中央区では進学塾等へ通う子たちの比率も多く、サッカーの活動が学校生活だけではなく塾の時間等にも影響する場合があります。
そのため、平日および週末の活動場所および時間を、年間通じて変動なく活動でき、かつ公共交通機関利用で徒歩5分~8分(およそ10分)の範囲内で、子どもたちが自力で参加できて移動できる占有の練習場所を確保しています。昨年度はこの中でも重要な位置づけのひとつとなった北海道郵政研修センターが売却に伴い閉館、グラウンドも使用ができなくなる不運に見舞われましたが、たくさんのサッカーファミリーのおかげで現在区外の施設ではありますが、子どもたちが困らずに活動ができています。
<社会問題への取り組み>
いじめ、虐待、不登校など、環境を取り巻く中でいつ、どのような状況がチームの子たちの中で関わるか不安な部分も代表者として感じています。いくらチームの子たちを守ろうとしても、些細なことからきっかけを生み、その芽を摘めなかったことで拡大してしまうケースもある場合も懸念されます。
チームでは創部時から重要視している縦割りの活動を含め、子どもたちの問題も子どもたちの中で解決するようにしたり、子どもたちと関連する時事問題を練習の合間に話したりすることで、善悪及び判断の大切さを伝えています。その結果100人のプロ選手は輩出できなくとも、100人以上の社会で活躍する卒業生という意味で、誰かのために正しい道を選択できるように助言及び進言できる成人になってほしいという願いもあり、積極的に取り組むようにしています。
上記宣言を具現化するための活動内容
<引退なし>
・・・いつまでもサッカーにかかわれる環境でありつづけるために。
ジュニアユースの設立、女子U-15チームの設立。
校区内にサッカー部のない中学校が2校あり、彼らの次の進む活動の場が失われてしまい、続けられない子たちが多く出てしまうことを受け、もう3年間延長して活動ができるようにするためにも、チームの中で活動が可能となる場所を確保して設立した。同時に昨年度より懸念していた女子サッカーの活動の場も含め、男女ともに設立することとした。
(令和3年度より始動)
中学生からのユース審判取得の働きかけ、および活動への参加誘致。月1回のチーム活動への招致。
昨年度からは保護者も含めて関われる環境づくりを積極的に行う。
卒業生含む4級審判員4名、キッズリーダー資格取得者1名を出す。
サッカーを離れてしまったOB・OGの協力要請から、サッカーにかかわれる場をつくり、タイミングによっては競技への復帰、または指導者への転身のきっかけになれるように活動の中でけん引していく立場を確保する。
進学の際にどうしても部活動を続けられなかった卒業生の関わり方として、指導者としてチームに関わる一方で、自身の体力づくりの部分も指導を兼ねて動かすことで確保し、社会人などでも楽しめる程度の技術的部分や運動機能を維持するような場を兼ねて子どもたちとのかかわりをもって接してもらうようにしている。
<補欠ゼロ>
・・・常に同じ気持ちで一緒にいることを意識して。
Aチーム、Bチームという表記や、格差の位置づけが発生するような表現や活動をしない。対象学年は全員参加し、全員エントリー。公式戦で限られた人数の場合はぎりぎりまで一緒の活動を共にして、ベンチ入りできない選手は応援側へまわるが、その他の試合や練習試合などは逆に出場機会が主力選手よりも多くなるように活動の場をつくり、また主力選手組の選手が控え組になってしまう選手のサポートをすることで教えあったり気持ちの共有ができるように話し合う場を多く作る。複数チームの出場によって切磋琢磨した中に多くの結果の伴う戦績も残すことが出来た。
<障がい者サッカー>
垣根のない活動から学ぶ場を創る。
障がい者の保護者の方がどちらかというと閉鎖的な考えが多く、なかなか一緒に活動することには抵抗がありがちだが、逆に小さいうちから一緒に活動することで健常児の気持ちの中に偏見をつくることがなく、一緒に活動するための工夫を共に考えるようになるため、サッカーという一つのツールにとらえ、コーディネーション能力を高めながら、コミュニケーション力やチームスポーツとしての動きをどう工夫するか、常に共に活動させることで考えさせる場を設け、実践するサイクルを練習中からつくっていく。今年度も支援学級含め、児童デイサービスに通う子など多岐にわたる中で、サッカーの活動もひとつの気づきの場として捉えてもらえるように併用して参加する子を受け入れる。低学年のうちに一緒に活動を共にすることで他の子たちも個性として受け入れるため隔たりを作ることがない。
また、ろう者サッカーの日本代表選手との交流時などは、選手たちが工夫して、結果的にホワイトボードを用いて筆談などを含めてコミュニケーションをとるように自主的に動いたこともあった。
話を聞く場においても、どうしても静止して話を聞くことが難しい児童もいるが、静止して聞かなければならない状況でも、「そんなに楽しくて我慢できないか?(笑)」と場を和ます声掛けなどでネガティブな印象にならないように気配りをすると、周囲の子たちが笑顔でじっと話を聞くことを常々サポートできる姿が見受けられた。受容の関係が上手に構築された姿だと思う。
令和2年度では、中学進学時にこれまで小学校時代に支援学級に通っていた児童が普通級への進学が認められた。個性を認め、分け隔てなく他の子たちと一緒に活動し、その中でも技量を磨き、チーム内でもレギュラーポジションをつかみ取るまでに成長した。彼は今後もチームに残り、ジュニアユースで活躍予定。
<女子サッカー>
卒業生2名を指導者に参加、また経験豊富なお母さんコーチも参加。特に低学年組のサッカーの導入の部分で時には指導者、時には母として関わってくれている。また不定期ながら現在現役選手として活動している4期卒業生(現高校2年生)も参加。総体北海道予選では3位となり全国迄あと1歩まで迫るほどのチームをけん引した。このほか7期卒業生が北海道リラ・コンサドーレに進み活躍中。U15世代から飛び級し、U18だけでなく、女子サッカーの頂上となる皇后杯全国大会でもスタメン起用されるほどの逸材となる。世代別の代表選手として活躍している。彼女たちの活躍が在籍選手の励みとなり目標ともなっている。また時間のある時にそれぞれが顔を出してくれることもあって、子どもたちには身近に感じるお姉さんを目標に頑張っている。
在籍選手に女子選手が多くいることや、中学生世代での女子選手の受け入れる場所が少ない現状を踏まえ、U-15女子チーム設立準備を始めていたが、コロナ禍の影響で1年延期し、令和3年度ようやく創部となる。新たな女性指導者および練習場所等については確保済み。現在のU12練習会場の一部を併用のほか、平日人工芝グラウンドの活動場所も確保。積極的に卒業生だけでなく、過去に経験のある選手を多く招き入れ、引退なしにもつながるような活動につなげていく。
特に女子は活動できる環境が4種から中学生世代になると一気に激変する。その中でも活動を継続していくのは非常に厳しいが、卒業生たちが指導者として子どもたちに関わることで、自身の技術を見直すこともでき、子どもたちに伝える工夫を考えるようになるため、教わる子どもたちだけでなく、関わった指導者側にも学ぶべきことが多く、双方にメリットが生まれる。(男子卒業生でも同じことが言える)
他地区指導者間のつながりの中から、成人女性でも活動を継続したい選手たちの中でも特に楽しんで続けられる環境の中で取り組んでいるチームの姿から学ぶことが出来た。(室蘭地区グラスルーツ委員会)進学時に競技をやめてしまうことのないように、たとえいったんあきらめて離れたとしても活動ができるという姿を示すことが出来たのは非常に大きかった。
<施設の確保>
子どもたちが安全に、かつ平時の活動を滞りなく普通に過ごしていく中で、貸与先の時間及び指導者の割り当て等で変動することがなく、他の活動(塾、おけいこ事など)も併用して活動ができ、様々なアプローチから影響を受けられる環境を整えるために、通年通して活動場所、活動時間、活動曜日の変動をやむを得ない事情を除き行わないために、活動場所を確保できる環境を創部時より確立させるために交渉を重ねた。それでも創部から2~3年目まではどうしても冬季の降雪期は厳しい事情もあったが、ここ4~5年は変動なく対応できている。入部時のきっかけにも、活動場所に変動がないことも一つの理由にされていることが多い。
※都心部、繁華街に近いこともあるが、すべての貸与施設に警備員が常駐。
(令和3年度活動場所)
●札幌市立資生館小学校グラウンド、体育館(通年)
※天然芝グラウンド(2002年日韓W杯助成)
(地下鉄南北線すすきの駅、市電資生館小学校前)
●札幌医学技術福祉歯科専門学校体育館(通年)
(地下鉄東西線西11丁目駅、市電中央区役所前)
平日毎週水曜日、金曜日 17時~19時、土曜日、日曜日13時~17時
(週末祝日は試合によって変動)
※上記の施設はすべて公共交通機関を使って学年問わず子どもたちが原則自力移動でき、活動している。
<社会問題への取り組み>
チーム内でも不登校、または不登校気味になってしまった子がいたが、学校に行けなかった日でも、サッカーには来てもいいんだと参加を促し、体を動かす中でリラックスした雰囲気の中から、なぜ朝は行きたくない気持ちになったのか、いろいろと敏感に反応する問題や、過剰に気になることを積極的に指導者が訊くことで、保護者の方や学校の先生が聞きだせなかった部分を知ることで対応策が見いだせるようになった。また無理に登校することを促すよりも、学校の子とは別にしてサッカーチームでは必要としていることをしっかりと伝え、役割を持たせることで自信がつき、結果的に不登校が改善されたことがあった。
チームではできるだけ子どもたちのトラブルを子どもたちの手でまず聞き、どうしたほうがよかったのかを上級生が対応するようにしている。最終的に双方の意見を聞き、まとめたものを指導者に報告に来る。何でも大人に言えばいいと思わせるのではなく、また大人のプレッシャーよりも子どもたちの中で双方の言い分をしっかりといえる中で、上級生も、自分にも同じようなことがあったけど、という経験を踏まえて諭すことがあり、指導者も叱ることよりも、何がわかったか?どうしてそれはだめだったのか?という確認を促すことで、子どもたちも素直に話し、大人と子どもの適度な距離感が結果的に試合中などの自己判断力の向上にもつながっている。生活や学校の中で抱えている問題も、監督やコーチなら聞いてもらえるかもと、実際に話してくれた場面があり、解決することが出来た。
幸いにも保護者の過剰な介入や家庭内でのトラブルなどに遭うこともなく平穏に過ごせているが、これらの根幹には、子どもたちが自らの意思を自らの手で主体性をもって取り組む姿勢に共感して頂き賛同を得られているからこそ、自分たちの仲間の中で起きたことにも適宜対応できている。
これらの内容の一部については、サッカーフリー雑誌「サカイク」の活用が大きく、創部時より配布させてもらっているが、指導者や周辺チームでの悩みや保護者の気持ちに対してどう捉えるべきかなどは、上手に活用することで大きな問題は回避できるし、指導者が直接伝えにくい事柄も記事になっていることが多い。また今回はコロナ禍でもサッカーに対しての取り組みをサカイクWebにて取材、掲載して頂いた(2020年7月)