サッカー競技規則の基本的考え方と精神
サッカーは、世界最高のスポーツである。すべての大陸、すべての国において、様々なレベルでプレーされている。そして、サッカーの競技規則は、FIFAワールドカップ™の決勝戦から、人里離れた村で行われる子どもたちの試合まで、世界中、すべての試合において同じように適用される。これはとても大きな強みであり、いたるところで行われるサッカーのために維持され続けていかなければならない。
サッカーがフェア(公平・公正)であるためには、競技規則がなければならない。フェアであることは、「美しい試合」にとって極めて重要な基盤であり、競技の「精神」にとって不可欠な要素である。サッカーにおける最高の試合とは、競技者がお互いに、また審判、そして競技規則をリスペクトしプレーすることで、審判がほとんど登場することのない試合である。
サッカーの競技規則は、他の多くのチームスポーツのものと比べ、比較的単純である。しかしながら、多くの状況において「主観的な」判断を必要とし、審判は人間であるため、必然的にいくつかの判定が間違ったものになったり、論争や議論を引き起こすことになる。人によっては、これらの議論が試合の楽しみや魅力の一部となっている。しかし、判定が正しかろうと間違っていようと、競技の「精神」は、審判の判定が常にリスペクトされるべきものであることを求めている。試合において重要な立場である人、特に監督やチームのキャプテンは、審判と審判によって下された判定をリスペクトするという、その試合において明確な責任を持っている。
試合参加者の不適切な行動は、大きな懸念材料となる領域であり、試合に関わるすべての人が互いに敬意を持って応対することが不可欠である。IFABは、試合参加者の行動を改善することを目的として、以下の試行を承認した。これらは、国内の上位2つのリーグのチームまたは各国の「A」代表チームが関わらない競技会で実施することができる。
・対立が起こった後のクーリングオフ時間
・主審がキャプテンオンリーゾーンを設定して、競技者が群がったり、威嚇するような事態を軽減および防止できること
次のような試行も承認されている。
・不当に長時間ボールを保持したままでいるゴールキーパーに効果的に対処すること
・ビデオアシスタントレフェリー(VAR)の「レビュー」、または長時間にわたるVARの「チェック」の後、主審が最終決定をアナウンスし、説明すること
競技規則は発生し得るであろうすべての状況に対して言及することはできないので、具体的事象についての規定はない。IFAB(国際サッカー評議会:The International Football Association Board)は、審判が競技と競技規則の「精神」に基づき判定を下すよう求めている。これにより、しばしば「サッカーは何を求めているのか、何を期待しているのか」といった質問を投げかけられることになる。
競技規則はまた、競技者の安全・安心、快適なプレーに寄与しなければならず、必要が生じたときには、競技規則そのものを通じ、サッカーの試合の参加者を迅速また適切に支援するべく対応するのは、IFABの責任である。
試行の成功を受けて、「脳振盪による交代(再出場なし)」の追加の使用が競技会におけるオプション(各競技会で選択できるもの)の1つとして、競技規則に加えられた。これにより、チームは数的不利益を被ることなく、脳振盪の発生またはその疑いがある競技者の安全や安心・快適さを優先することができるようになる。
事故が起きてしまうのは致し方ないものだが、競技規則は、競技者の安全や安心・快適さとスポーツがフェアであることとのバランスを取りながら、サッカーの試合ができる限り安全にプレーできるための手助けになることを目指している。であるからこそ、審判は、あまりにアグレッシブであったり、危険な行為を行う競技者にしっかりと対応するために、競技規則を用いることが求められている。競技規則は、「無謀なチャレンジ」や「相手競技者の安全を脅かす行為」、また、「過剰な力を用いる」など、危険で容認できないプレーを懲戒罰になる用語として整理している。
より多くの人に競技規則を理解してもらうために、IFABは「サッカールール – わかりやすい競技規則」を発行した。これは、特に若者、新たに資格を取得した、また取得を考える審判員、時々審判する大人、選手、指導者(指導者資格取得に向けて取り組んでいる人を含む)、観客、メディアにとって、競技規則が容易に理解できるよう書かれている。
「サッカールール – わかりやすい競技規則」は、www.footballrules.com からアクセス、またダウンロードすることができ、アルファベット順またはカテゴリー別に並べかえることもできる。
IFABは競技規則の音声版も作成しており、www.theifab.com からアクセスできる。
競技規則変更への対応
サッカーは、年齢、性別、人種、宗教、文化、民族、性的指向、障がいなどにかかわらず、競技者、審判、指導者にとって、また、観客、ファン、管理者などにとっても、魅力的で楽しいものでなければならない。
それがゆえに、組織をあげてその決定プロセスに関わっているIFABとして、競技規則の変更がサッカーの試合にとって有益なることを確信している。そのためにも、変更の可能性がある規則については、テストまたは試行を行うことが必要となる。
どのような変更提案に対しても、フェアであること、インテグリティ、リスペクト、安全、参加者や観客の喜び、また、必要に応じてはサッカーの試合をより良いものする最新技術の使用に焦点を当てて検討することになる。
IFABは、引き続き世界のサッカーファミリーとかかわっていく。それによって、競技規則の変更がすべてのレベルの、また、世界のすみずみまででプレーされるサッカーにとって有益になるようになる。そして、競技のインテグリティ、競技規則および審判は、リスペクトされ、価値を持ち、守られるのである。
将来
IFABは、引き続き、競技者の安全や安心・快適さ、試合参加者の行動の改善、また、参加するにしても観るにしても、サッカーの試合がよりフェアでより魅力的なものにすることに焦点をあて、諮問委員会と共に、また広範囲に協議を行いつつ、活動を継続していく。
また、若い競技者がテレビで試合を観戦した後、外に出ていってテレビで見たプレーを自分で出来るようにするためにも、競技規則の「普遍性」を維持することは重要である。
IFABは、世界中の人々とつながっていることを本当に喜ばしく思っている。また、競技規則に関する提案や質問を受け取ることは、常に嬉しいことである。
今後もlawenquiries@theifab.com あて、ご提案、ご意見、また、ご質問をいただきたい。
競技規則の歴史と、試行を含む現在の動向の詳細については、当社のIFABのWebサイトwww.theifab.com をご覧いただきたい。