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【ピッチサイドストーリー】黒子に徹した3年生、「感謝」の思い~第98回全国高校サッカー選手権・日本大学藤沢高校
2020年01月11日
第98回全国高等学校サッカー選手権大会が2019年12月30日(月)に開幕し、連日熱戦が繰り広げられている。ここではピッチサイドで試合を応援する方々にスポットライトを当て、ピッチ上に秘められたストーリーをお届けする。
3回戦 2020年1月3日(金)/等々力陸上競技場
仙台育英 0-0(前半0-0、後半0-0、PK9-8)日大藤沢
部員数150人を誇る日本大学藤沢高校サッカー部。部長の高井一真は、山内淳暉、和泉純喜とともにサポートメンバーとして選手たちを支える役割を担った。
3人はいずれも3年生。全国高等学校サッカー選手権大会では神奈川県予選からメンバーに入れるかどうかギリギリの立場で、本大会の登録メンバーから外れたことを受け、サポートメンバーを務めることになった。
彼らにとっては高校生活最後の大会。悔しさがないわけがない。それでも「メンバーのためなら自分の身を犠牲にしてでもサポートしたい」(山内)と、選手たちを支える決意をした。
宿舎では選手たちとともに行動し、練習着やユニフォームの洗濯、食事の配膳、ミーティングルームのセッティングなど、裏方に徹して負担の軽減に尽力。試合会場では一緒に行動できないため、応援メンバーの一員として声を枯らす。「ありがとう」「応援すごかった」という選手たちの声が励みになる。「いいところまで行ける」(和泉)、「優勝しかない」(山内)と、3人も手応えを感じていた。
「球際で半歩でも強く行けるよう、自分たちの応援で後押ししたい」(高井)。強い決意とともに挑んだ3回戦の仙台育英戦は80分間では決着がつかず、PK戦も10人ずつが蹴り合う壮絶な展開となった。勝利目前の瞬間もあったものの、8-9で惜敗し、日大藤沢の選手権は終わった。
試合後、スタジアムの外で選手たちを出迎える前に、高井は落ち込む応援メンバーたちと握手を交わしてねぎらい、応援に使用したメガホンの片付けの指示を出すなど、気丈に振る舞っていた。「全員に対して平等に声掛けができるし、しっかりしている」という部長就任の理由が納得できる言動だった。
3人もこれで引退となる。「試合が終わった瞬間は負けた実感がなかったんですけど、だんだん実感が沸いてきて、涙が出てきて……」と、悔しさを抱えながらも丁寧に言葉を紡いでくれた高井。「選手たちには『お疲れさま』と声をかけたい」と、最後までサポートに徹する姿勢を見せた。
山内が「高校サッカーで完全燃焼しようと思っていた」と語るように、3人とも真剣にサッカーをするのはこれが最後になる予定だ。「もう少し試合に出たかったし、もう少しこのメンバーとサッカーをしたかった」という和泉の言葉は偽らざる本音だと思うが、それでも日大藤沢での3年間に後悔はない。
「スタンドからでしたけど全国大会の空気を吸うことができたので、選手には『ありがとう』しかないですね。日大藤沢に来てよかった。信頼できる仲間をつくることができました」。山内はしみじみと語った。
チームの未来は後輩たちに託す。高井は1、2年生にこんな言葉を残した。
「今日、試合に出ていた中にも1、2年生がいます。彼らは全国大会で得た経験を生かしてほしいし、それをもっと多くの選手に経験してほしい。今日の敗戦の悔しさを生かして、来年もっと活躍してほしいです」
第98回全国高校サッカー選手権大会
大会期間:2019/12/30(月)~2020/1/13(月・祝)
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