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JFAフットボールレフェリーカンファレンス2015を大阪で開催
2015年02月06日
「JFAフットボールレフェリーカンファレンス2015」が1月31日(土)、ホテル新大阪コンファレンスセンター(大阪)で行われ、S・1級審判インストラクター129人、1級審判員181人、女子1級審判員39人が参加しました。このカンファレンスは今回が初の開催で、テクニカルセッションで交流を深めるとともに、落語講演など趣向を凝らしたセッションも行われました。近年、国内トップの審判員や審判インストラクターが一堂に会する機会が少なくなっている中、カンファレンスを開催することにより、この機会を利用して審判員と審判インストラクターが互いに情報交換し、日本サッカーを支える審判活動をさらに深化させることが期待されます。今回のカンファレンスのテーマは「Convey Your Feeling~外化」。自分の考えを可視化することで思考を深め、他者に伝えることで自身の知識を客観視できるという大きなテーマに沿ってテクニカルセッションやレクチャーなどプログラムは行われました。
午前中、参加者は8グループに分かれて2つのテクニカルセッションに取り組みました。最初のセッションでは、指定されたワード(言葉)をジェスチャーやインスピレーションワード(連想させる言葉)で表現して答えを導き出す「以心伝心ゲーム」を実施。出題者と回答者が数チームに分かれて対戦し、正解数を競い合いました。
第2のセッションでは、コミュニケーションシステムを使った会話について議論しました。同セッションでは、FK時におけるゴール前のポジション争いや、アドバンテージ適用後に起こった選手同士の小競り合いなどの場面を映像で見ながら、これらに遭遇した審判員がコミュニケーションシステムでどのような会話を交わしたかを想像します。参加者自らが主審、副審、第4の審判員となり、自身の考えた会話を実演しました。その後、映像とともに実際の会話内容が明かされ、試合を担当した審判員からは会話のポイントなどが説明されました。
午後の部は、桂塩鯛氏による落語講演会が行われました。塩鯛氏は1977年、桂朝丸(現在の2代目桂ざこば)氏に入門。98年には文化庁芸術優秀賞、2002年には大阪舞台芸術奨励賞を受賞するなど上方落語界で活躍されています。レクチャーでは、上方落語と江戸落語の違い、噺(はなし)を構成する「マクラ」「本題」「落ち(サゲ)」といった落語の基礎知識を説明。笑い話をはさみながら、軽妙な語り口で参加者を魅了していました。
続いて、西村雄一主審による「FIFAワールドカップ報告」では、2大会(10年南アフリカ、14年ブラジル)における審判員の指導法やサポート体制などが報告されました。大会中はテクニカルスタディグループがまとめた出場チームの映像が審判員に提供されるなど、審判と技術が協調して大会成功のために努力していることも報告されました。
最後に審判員や審判インストラクターの勇退者、ワールドカップ出場審判員などを表彰、今年度から新たに1級、女子1級となった審判員が紹介され、第1回のフットボールレフェリーカンファレンスは幕を閉じました。
インストラクターコメント
上川徹 JFA審判委員会 審判委員長
日本サッカーのトップを担当する審判員と審判指導者がお互いに顔を合わす機会が少なくなっている現状があり、その審判関係者が一堂に会することで、情報交換を行う、お互いを知る機会とし、そして日本のサッカーの発展を支えるレフェリー活動を進化させたくこのカンファレンスを開催することとしました。結論を求める場ではなく、何か気づいたことがあれば、何か思いついたことがあれば一人で考えこむのではなく、声にして、或いはボディランゲージでも構わないので仲間に伝える。そして、他の人からはどうみえているのか、異なる立場によって様々な見方があることへの気づきをこのカンファレンスで感じてもらいたい。
時間は十分ではなかったかもしれませんが、参加者の表情は明るく、また行動には意欲が感じられお互いをそして自分の違った面を知る機会になったことと思います。そして、今シーズンのスタートにあたり一体感のある充実した時間を共に過ごすことができました。試合において選手やチーム関係者とコミュニケーション取る時のヒントとして生かして欲しいです。今シーズンの活躍に期待します。
受講者コメント
塩津祐介 1級審判員
1級審判員およびS級・1級インストラクターが一堂に会する唯一の場であり、参加するにあたり最初は緊張していたのですが、オープニングでは全員参加のダンスからスタートし、リラックスして参加することができました。また 普段は違うカテゴリーで活動している審判員やインストラクターの方と情報交換することができ、有意義な時間を過ごすことができました。プログラムの中には 落語の講義があり、落語の歴史や人に伝えるための技術を学びました。人に伝えることはレフェリングにおいても重要であり、落語とレフェリングの意外な共通点を知ることができました。笑いとリラックスの中にも集中した時間を、審判員とインストラクターが共有できたことは、とても貴重な機会となりました。またこれからの新シーズンに向けて、1級審判員としての責任および覚悟を改めて認識することができました。
山下良美 女子1級審判員
今回のカンファレンスは「Convey your feeling ~外化~」というテーマでしたが、最初のセッションではコミュニケーションにおける言葉の大切さやそれを使うことの難しさをゲーム形式で楽しみながら体感しました。さらに、映像を見ながら言葉やジェスチャーでいかにコミュニケーションをとることについて考えたことで、試合中は何を伝えるのか、伝えるべきなのかを一瞬で判断しなければならず、そのために様々な準備が必要だということを痛感しました。また、落語家の方のお話を聞く中で、表現方法や話の順序など、人に伝えるときに何を考えればよいかを学ぶことができました。今回はインストラクターの方々とも一緒に300人以上で研修を受けることができ、学ぶことが多く、新シーズンへの気持ちが高まりました。1試合1試合に真摯に向き合い、全力を尽くせるよう、日々努力していきたいと思います。
山﨑裕彦 S級審判インストラクター
魅力ある試合を選手が作り上げられるよう、審判員の試合環境整備は重要な任務です。その任務の手助けとして、いかに審判員が自分自身にスイッチを入れられよう、インストラクターが気づかせることができるかが日々の課題と感じています。このことから、今回の様に審判員・関係者との合同開催は意思の疎通を図る意味でとても有効的でした。午前のセッションではその場にいた者達の相互の垣根が外れ、一体感、連帯感が生まれました。その為、その後の意見交換も活発・積極的でした。セッションを盛り上げたのは、入念な準備のお陰です。受講者として頭を働かせ、体を動かし、一生懸命にできて、楽しめました。お疲れさまでした。
鳥越明弘 1級審判インストラクター
これまで多くの研修会を経験してまいりましたが、今回は初の「レフェリーカンファレンス」とのこと。やや緊張して臨みましたが、オープニングは「マカレナダンス」から。約350人が一同に、石山インストラクターの指導の下でダンス。緊張の糸も解れ和やかに開始されました。テクニカルセッションやレクチャー等も工夫されており、現場ではいつも緊張感を強いられている私たちも、楽しく受講することができました。知識や思考を他者に伝える大切さを考えさせられました。まさに、今回のタイトル―外化-を見つめ直し、インストラクターの立場から自問自答し、若い審判員に伝達していけたらと思います。受講させていただき、ありがとうございました。