ニュース
日本代表監督リレーインタビュー 第4回 フットサル日本女子代表/U-20フットサル日本代表 木暮賢一郎監督「辞めずに続けた先に起きた奇跡」
2020年05月02日
日本代表チームは新型コロナウイルスの感染拡大防止のために多くのサッカーやスポーツの現場同様に活動の自粛を余儀なくされています。選手の皆さんと同様にStay homeを続ける各カテゴリーの代表監督に今回はサッカーに対する思いや、苦難を乗り切ってきた経験、夢の大切さなど、話を聞きました。
第4回はフットサル日本女子代表とU-20フットサル日本代表を率いる木暮賢一郎監督です。
きっかけはキャプテン翼
僕がサッカーを始めたきっかけは、まさしくキャプテン翼でした。父はサッカーをしていたわけではないのですが、仕事で行ったブラジルでサッカーを見て、すごいなと思ってボールを買ってきたという話を後から聞きました。幼稚園のときに、リフティングの回数によって翼くんシールとか翼カードがもらえて、それが嬉しくて、それでキャプテン翼を見て、というのがのめり込んだきっかけです。小学校3年生の時に読売クラブ(現東京ヴェルディ)のセレクションに受かり、そのときに今のバーモントカップ、当時の全日本少年フットサル大会の第1回大会にたまたま参加して日本一になったのですが、今振り返ってみるとサッカーとフットサルの両方に出会ったのが小学校の頃でした。
両親の支え
サッカー、フットサルともにどういう環境で育ったかと言うと、自分の場合は両親の存在が大きいです。小さいときから試合は欠かさず見に来てくれますし、中学や高校時代になかなか試合に出られなかった時期も応援に来てくれました。フットサルを始めて日本代表に選ばれたときの海外での試合も、どんなところにも見に来てサポートしてくれましたね。もちろん、仲間であるとか先生や指導者、ライバルであったりとか、色々な出会いがあると思いますが、何かひとつ挙げるとしたら僕の場合は両親です。両親のサポートであったり、応援であったり、そういうところに一番感謝してますし、そうしたサポートがあったからこそいまだにフットボールに関わる人生を送れていると思いますね。
悔しい思い出と指導者としての原点
読売に小学3年生のときに入ることができたのですが、当時の自分は本当に背が低くて。僕の世代はいわゆる“ゴールデンエイジ”と呼ばれる1979年生まれで、名前を挙げたらきりがないくらい素晴らしい選手たちがチームメイトであったり、対戦相手であったりという中で、僕は背も低くて足も遅くてパワーもなくて、みんなが伸びるような小学校の高学年とか、中学年代に自分は背が伸びなくて、すごく悔しい思いをしました。挫折とまではいきませんが、サッカーが楽しくありませんでした。自分の方が技術はあるのに、自分より30cmくらい背が高い選手や足がとても速い選手が試合に出る、あるいはトレセンに選ばれるという中で、少し頑張りきれなかったところがありました。そうした悔しい経験があって、「サッカーって楽しいんだよ」とか、「君にはいいところあるんだよ」とか、長いスパンで見てくれて可能性を見出してくれるような指導者が自分にもいてくれたらなと思っていました。甘えは大いにあるかもしれませんが、少なからずその時はそうした感情を持っていたので、やはり指導者は大事だなと感じました。手を差し伸べてくれる指導者に自分も出会っていればと思うところから、自分がそういった指導者になりたいという思いはありますね。先ほど言ったように、小・中・高と素晴らしい選手が周りにいて、そういう中で悔しいとか自分も追いつきたいという気持ちがありました。フットサルを始めてからも色々な出会いがありましたが、影響を受けた人を誰か一人あげるとすれば、それは初めて入ったフットサル日本代表でキャプテンだった市原(誉昭)さん(当時カスカヴェウ/現ペスカドーラ町田)です。アマチュア意識からプロ意識に変わるようなきっかけを与えてくれたのは間違いなく市原さんでした。代表チームでも怒られたりアドバイスを受けたりと、投げかけてくれた言葉というのが今でもすごく生きてると思いますね。
鈴木正治さんとの出会い
初めてフットサルの日本代表に選ばれたのは2001年で、その年に日本代表としてAFCアジア選手権に出場しました。監督が木村和司さんで、元Jリーガーの選手も一緒に出場した大会でして、そのときに横浜F・マリノスなどで活躍された鈴木正治さんにすごくお世話になったんです。当時自分は20歳くらい、フットサルの全日本選手権で優勝して日本一になって自信に満ちた状態で臨んだのですが、全然活躍できませんでした。正治さんはもう現役も引退していて、膝もボロボロで、フットサルをしてきたわけではないサッカーの選手です。でも、いざ日の丸のユニフォームを着て国と国との戦いになったときに、「やっぱりすごいな」と純粋に思ったんです。フットサルの技術や戦術では僕らのほうが優位だったのかもしれませんが、そうではないというか、背負ってきたものが違うというか、プロとしての経験やプロフェッショナリズムを目の当たりにしました。その当時のフットサルは当然プロではなく完全なアマチュアで、リーグもないような時代です。その当時20歳の自分はクラブではタイトルも獲って、日本代表にも入って、でもそれは本当に小さなところでただ活躍していただけだということを痛感させられました。正治さんのようにサッカーで成功した方とか現役の選手に認められたい、フットサル選手もすごいねと認めてもらいたいという一心で、それが全てのタイトルを手に入れたいと思ったきっかけです。自分が認められることで、サッカーでうまくいかなかった人がやるスポーツ、チャラチャラしたスポーツというという当時のフットサルのイメージを払拭できるんじゃないかと思えたのがその出会いでした。その後いくつタイトルを獲っても飢えというのは変わらなかったですし、歳をとっていく中で、自分のことだけではなく、フットサル全体の価値であったりレベルであったり、誰が見ても質の高いフットサルを見せたいとか、「フットサルって面白いよね」と思わたいという欲求はその2001年から変わらず続いてると思います。
辞めずに続けてきた先に起きた奇跡
サッカー選手になりたい、フットサル選手になりたい、そういう大きな夢や目標がある子もいるでしょうし、仲間とボールを蹴ることが楽しいなと思う子もいて、楽しみ方は色々あると思います。それぞれの目標や未来像があるのに、今はボールを蹴るという手段でそれを表現することは難しい時期で、ストレスを抱えたり、別のことが楽しいと感じてしまうかもしれません。そんな状況で今自分が言えることは、自分が決めた目標や夢というものを、成し遂げられる・成し遂げられないに関わらず、できるところまで続けてほしいということです。先ほどお話したとおり、自分はプロのサッカー選手になりたくて、読売に入って、カズさんや北澤さんやラモスさんといったすごい選手たちを間近に見ながら頑張りました。でも、今思うと言い訳ですけど、その当時は体が小さくて、うまく行かなくて、無理だなって諦めてしまった時期があって。でも、諦めたけど辞めはしませんでした。つまんないなと思ったことはたくさんあるし、辞めたいと思ったこともありますけど、辞めなかったからこそ今度フットサルというスポーツに出会えたと思うんです。その時のことをいまだに後悔していて、小学校高学年から中学生くらいの、あまり試合に出れなかった時期に戻れるならその時以上の努力をしたいと思うのですが、その時間は戻ってきません。その後悔があったからフットサルというスポーツに出会うことができましたが、プロでもなければ、日の目を見ないようなスポーツでしたから、すごくうまかったけど続けられずに辞めていく選手や仕事を選んだ仲間をたくさん見てきました。自分にはサッカーを本気で続けることができなかった後悔があり、フットサルではできるところまで諦めずに続けたいと思ってチャレンジしたからこそ今があると思っています。僕の一つ目の夢は叶わず、たまたま二つ目の夢がサッカーに似たフットサルという競技だったと思のですが、もしかしたら違うことだったかもしれない。でも、好きなことを続けていく、夢に向かう努力から得たもので、最終的にはそれがサッカーやフットサルではなくても、そのときに頑張った経験とか悔しさとか喜びというのが次の夢に生きる可能性がすごくあると思うんです。
少し話がそれてしまうかもしれませんが、2012年に現役を引退するその年に、自分が小さい頃から憧れてきたカズさんと一緒に日本代表でプレーできました。絶対にありえないことだと思っていましたが、奇跡なのかわかりませんが起きたんです。日本代表の活動の中で多くのことを経験して、その時期ごとに色々な思い出や出会いがありますが、カズさんと一緒に過ごしたあの1カ月というのはスペシャルな時間でした。自分はその時キャプテンだったこともあって、カズさんと一緒にいる時間はおそらく一番長く、フットサルのこと以外にも人生の話なんかもしました。そこでの一言一言というのは本当に今でも宝物のような言葉を頂いたと思っています。それもやはり続けてきたからこその出会いだったと信じています。サッカーを辞めずに続けたことで、そうした奇跡のような出来事が起き、それはただ運命というだけではないと思っています。フットボールを通して、仲間やチームワークの大切さ、努力すること、継続することなど、多くのことを学ぶことができると信じているので、たとえ試合に出られなくても、たとえプロになれなくても、ぜひ頑張り続けてほしいです。
今は大変な時期ですけど、サッカー選手あるいはフットサル選手になりたい、また友達とボールを蹴りたいと思う気持ちがあるのなら、この状況で諦めるのではなく、家の中でボールを触るとか、サッカーとかフットサルの試合を見るとか、今できることをやってほしいと思います。もし自分の映像があるならこういうときに自分の試合を振り返ってみるのもいいですね。今は簡単にいいプレーやいい試合を見ることができます。思い切りボールを蹴りたいでしょうが、こんなときはうまい選手の映像を見たり、自分のプレーを振り返って、1日の中で少しでも自分のサッカーやフットサルについて考えたり、想像するのもいいと思います。そうやって頭を使う行為そのものが成長につながると思うので、ぜひ取り組んでほしいと思います。
関連ニュース
最新ニュース
- 大会・試合 2024/11/24 高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WESTは大津高校が優勝
- 大会・試合 2024/11/24 71大会ぶり関西勢決勝制し、ヴィッセル神戸が2度目の戴冠 宇佐美選手不在のガンバ大阪、決定機を生かせず惜敗 天皇杯 JFA 第104回全日本サッカー選手権大会
- 大会・試合 2024/11/23 第104回 天皇杯 「SCO GROUP Award」 受賞選手発表
- 大会・試合 2024/11/22 配信決定 高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 プレーオフ2回戦
- 日本代表 2024/11/22 【JFA STORE】最大50%OFF!南野拓実、伊東純也、中村敬斗選手を含む人気アイテムが特別セール!