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[特集]中学校部活動の未来 ~誰もが楽しんで サッカーができる環境を整えていく 池田洋二JFA部活動推進委員会委員長×影山雅永JFA部活動推進委員会副委員長(JFAユース育成ダイレクター)対談 前編

2023年04月19日

[特集]中学校部活動の未来 ~誰もが楽しんで サッカーができる環境を整えていく 池田洋二JFA部活動推進委員会委員長×影山雅永JFA部活動推進委員会副委員長(JFAユース育成ダイレクター)対談 前編

中学校部活動の地域移行に対して、日本サッカー協会(JFA)は部活動推進委員会を立ち上げ、対応策を検討してきた。
委員会ではどのようなことを話し合っているのか。
現在の運動部活動の実情や課題、またサッカー界としての取り組みなどについて、池田洋二委員長と影山雅永副委員長に話を聞いた。

○対談日:2023年2月14日
※本記事はJFAnews2023年3月号に掲載されたものです

教員の働き方改革と少子化 二つの課題解決に向けて

――スポーツ庁が中学校部活動の改革を推し進める理由、現在の部活動が抱える課題について教えてください。

池田 部活動の改革が図られている理由は二つあります。まずは教員の働き方改革です。教員の長時間労働が長年、問題になっており、土日に部活動の引率を行うとなると、休みが取れない状況が続きます。時間外勤務をしても基本給の4%に相当する「教職調整額」が支給されるだけ。こうした過酷な状況を改善させる必要が出てきました。

もう一つは少子化です。子どもの数が減ると必然的に教員の数も減り、部活動の部員数や顧問を確保できなくなり、維持が難しくなります。多種の部活動を行っていた学校でも、先に挙げた理由で部活動が減少し、生徒たちがやりたいと思う部活動がないというケースも頻出しています。少子化の影響は今後ますます顕著になっていきますので、子どもたちのためにも改善が必要だと考えられています。

――そうした実情を、サッカー界としてはどのように捉えていますか。

影山 少子化の影響により、一つの学校だけでは部員数が足りずにチームが組めない、大会にも出られないという問題がありました。これは合同チームでの参加は認められていながらも登録時の難しさがあったようです。少子化の問題は中学生にとどまらず、例えば全国高等学校サッカー選手権大会の都道府県予選でも合同で出場せざるを得ないチームが増えています。今後、さらに人口が減っていくのは目に見えており、このままではいけないと誰もが思っています。部活動は今までの日本において、スポーツの普及に重要な役割を担ってきました。部活動ならではの良さもある、しかし、今のままでは持続できない。何をどう変えるべきなのか、多くの方が悩んでいるのが現状だと言えます。

――「部活動の良さ」とはどういった部分でしょうか。

池田 中学校の学習指導要領には「学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意する」と明記されています。つまり、国が教育の一環として部活動の重要性をうたっているわけです。具体的に挙げると、体力や技能の向上に加え、学年を超えた生徒同士の交流、教師との好ましい人間関係の構築などが部活動の良さになると思います。学習意欲の向上、自己肯定感や責任感、連帯感を育むことにもつながります。子どもたちが成長するためのいろいろな要素がそこには含まれており、教育において大事なものだと認識されています。

――今回トピックに挙がっている部活動の地域移行とは、端的にどのようなことを指すのでしょうか。

影山 公立中学校における運動部活動を地域に移行する、ということです。学校内で行われていたものを、学校から切り離してクラブ単位に変え、学校に責任を負わせない形にしていく。それが地域移行の定義だと思います。

私が参加していたスポーツ庁の「運動部活動の地域移行に関する検討会議」に出席していた皆さんが言っていたのは、子どもたちの活動場所がなくなってしまうことは絶対に避けなければならない、そして指導したい先生方が教えられなくなってしまっては本末転倒だということ。また、学校に備わったグラウンドや体育館などの施設は非常に貴重な財産ですので、それらをしっかり活用できるように法整備を進めていかなければならないことも議題に挙がっていました。

中学校部活動の地域移行に伴い、これまでよりも良いサッカー環境を提供できるように進めていく

――部活動とクラブチームの線引きが曖昧になりそうです。

影山 サッカー界としては、部活動とクラブチームの垣根をなくしていく、両者の線引きは曖昧になっていった方がいいと考えています。もともと垣根をなくすためにリーグ戦ができてきたわけですから。学校であろうとクラブであろうとやりたい場所でサッカーができる。そうすれば、子どもたちの選択肢も増えると思っています。サッカーの場合は日本クラブユースサッカー連盟と日本中学校体育連盟(中体連)で登録を分けていますが、他の競技ではそのようなすみ分けはなされておらず、二重登録が認められている競技もあります。つまり、普段はクラブチームで練習していても、学校の部活動に登録しておけば中体連の大会に出場することが可能になっています。サッカーでは、2023年度の全国中学校サッカー大会からクラブチームの参加が可能になりますので、その曖昧な部分がどう混ざり合っていくのか、興味深いところではありますね。

池田 クラブチームの場合、これまでは競技力向上を目指すことが主だったと思いますが、部活動の地域移行がなされた場合、週末に集まって楽しくサッカーをするようなクラブチームも出てくるでしょう。そうしたチームもリーグ戦や大会に組み込む必要があります。そこでサッカーの楽しさを知った子どもたちが、将来的にサッカー界を支え、裾野を広げてくれる存在になる可能性もあります。こうしたクラブチームをどのカテゴリーに入れるかも含め、扱いを考えていくことが大事だと思います。

影山 視点を変えれば、「楽しむ」ということに主眼を置いたスポーツは、これまでの日本のスポーツや体育の中であまり醸成されてこなかった文化なんですよ。そのせいか、試合の出場機会を求めてチームや環境を変えた場合、それがあたかも“挫折”のように捉えられてしまいます。それはわれわれ大人が歴史の中でつくり上げてしまった誤った考え方ですので、文化として変えていきたい。われわれが「Japan's Way」で掲げている「日本型ダブルピラミッド」でも、楽しむことが全ての根本にあることを示しています。そのようなスポーツの価値を次の世代につなげるという部分において、「Japan's Way」と部活動改革はリンクしていますし、非常に大切な部分だと考えています。

「Japan's Way」に掲げる日本型ダブルピラミッド。
ウェルビーイングと競技力向上の相乗効果で、世界一サッカーで幸せな国を目指す

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