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日本サッカー界の新しい「家」であり「拠点」~森保一監督手記「一心一意、一心一向 - MORIYASU Hajime MEMO -」vol.10~
2020年08月12日
監督室からピッチが眺められる幸せ
日本サッカー界にとって、日本代表にとって、まさに新しい「家」になるのではと感じています。6月に千葉県千葉市に完成した「高円宮記念JFA夢フィールド」のことです。
この施設は今後、日本代表の活動で主に使用していくことになりますが、A代表だけでなく、東京五輪に臨むU-24日本代表をはじめとする各世代別代表、さらには指導者養成や審判養成などでも使用する日本サッカー界の“拠点”になります。
クラブハウス内には監督室もあるため、早速、僕自身もJFA夢フィールドにて日々の仕事をさせてもらっています。
まず、サッカーに携わる人間、現場に立つ指導者としては、監督室にある自分の席から外を見れば、緑色の芝生を眺めることができる。それだけで幸せを感じられ、気持ちが引き締まる思いです。できれば、ピッチに立って仕事がしたいところですが、今はまだ新型コロナウイルス感染症の影響もあり、日本代表の活動がいつから再開できるか分からないため、我慢する日々ですが……。
クラブハウス内には、他にもコーチングスタッフルーム、さらに育成年代の監督・コーチ、なでしこジャパンの監督・コーチ、指導者養成に関わる人、さらには審判部や事務局員の人たちが働く部屋まで、日本サッカー界に携わるサッカーファミリーが集結しています。Jリーグの各クラブにはクラブハウスがあり、選手だけでなく、スタッフの多くがそこで働くことにより一体感を醸し出していますが、まさに「JFA夢フィールド」は、日本サッカー界の「家」といえるような施設です。
各カテゴリーの監督コーチとの距離感が近くなる
ここで働くようになって、まだ間もないですが、すでに感じているのは、お互いの距離感の近さです。
U-19日本代表の影山雅永監督、U-16日本代表の森山佳郎監督は、旧知の仲でもあるため、以前から頻繁にコミュニケーションを取っていましたが、ここで働くようになってからは、さらに会話をする機会が増えました。会議やミーティングを行うために、その場所にそれぞれが出向いて、集まって話すだけでなく、ちょっとした作業の合間や時間に会話できることで、さらに円滑で有益な情報交換ができるようになっていると思います。
なかなか多くは実現できていませんが、先日、影山監督、森山監督をはじめ、各カテゴリーの日本代表に携わる監督・コーチと一緒にボールを蹴る機会がありました。こうした機会がまた自分にとっては大きく、刺激のある時間でした。
ただボール回しをしているだけでも、それぞれのプレーの個性や特徴を知ることができます。また、声の掛け方一つを見ても、それぞれの指導者によって違いがあり、自分自身にとっても新たな気づきの連続になりました。今後は、こうした機会を頻繁に設けることで、トレーニングメニューの連動性やアイデア出しといったところまで、発展させていくことができればと思っています。
一般の方々も草サッカーをした後に和気藹々と話すことで、新たな関係を築いたり、有益な情報が交換できたりしているように、我々指導者も一緒だったりします。コロナ禍のため、なかなか頻繁にというわけにはいきませんが、一緒にボールを蹴った後に、サッカーの話をすることで、お互いのサッカー観が共有でき、各世代の選手たちの情報を交換する機会になります。
先ほども言いましたが、会議室に集まって椅子に座って話すだけがコミュニケーションではありません。気軽に、頻繁にコミュニケーションが取れる機会が増えるというだけでも、「JFA夢フィールド」は、すべての年代の日本代表にとってプラスに作用するはずです。
また、全員ではありませんが、日本代表に携わる各部署の人たちもJFAハウスからJFA夢フィールドに席を移して働いています。これは個人的な願望もあるのですが、そうした事務局員の人たちとも、一緒にボールを蹴ることができればと思っています。機を見て、自分から提案し、実現したいと考えています。
一緒にボールを蹴り、汗を掻くことで、普段は事務的なやり取りや畏まった場でしか接する機会のないスタッフの方たちとの距離が近くなると思うからです。それによって、それまで分からなかったパーソナリティが知ることができたり、より気軽にコミュニケーションを取れたりと、組織としてもさらに改善されていくきっかけになればと思っています。
多くの人に見られることで選手たちは成長する
7月11日から15日まではU-19日本代表候補が、7月22日から25日まではU-16日本代表候補がJFA夢フィールドでトレーニングを行っていました。今までは、世代別代表の活動はトレーニング日程と内容の情報をもらい、他の活動と被らなければ、現地に赴き、視察を行ってきました。
しかし、今回、JFA夢フィールドでキャンプを行うということ、僕自身が同じ施設内にて仕事をしているということもあり、それぞれの練習の多くをこの目で実際に見ることができました。影山監督、森山監督が指導している様子を見て、自分も早く現場に立ちたいと燻る思いがあったのは、ここだけの話です。
僕だけでなく、施設内で働いている多くの指導者がテラスから練習を眺めていましたが、僕ら指導者にとっては、選手たちのプレーを直接見ることができ、選手にとってはさらに多くの人たちに見られている環境が生まれます。そうした刺激が作られるだけに、選手たちの成長につながるのではないかと感じました。
また、海外でプレーしている日本代表の選手たちが、次のシーズンに向かっていくなかで、この施設で自主トレを行っていました。同じ施設内にいるということで、彼らがトレーニングをしている姿を見ることもできれば、合間には話をする時間もありました。これまでは、なかなかそうした機会を作ることが容易ではなかっただけに、お互いにとって有益な時間であり、環境だと感じてもいます。
ONE TEAM TWO CATEGORY
世界的に新型コロナウイルス感染症が拡大しており、各地域、各国のナショナルチームの活動に影響が出ています。中断していたFIFAワールドカップ二次予選は、現時点で10月、11月に残り4試合を行う予定になっています。東京五輪も1年後に開催が延期となり、A代表、U-24日本代表ともに活動時期を調整しています。
引き続き、日本代表、U-24日本代表の監督を兼任していますが、コーチングスタッフはそれぞれ専任という形となり、反町康治技術委員長も仰っているように「ONE TEAM TWO CATEGORY」という考えでいます。
活動が重なっているときは、A代表を自分が、U-24日本代表を横内昭展コーチが専任となり、より質の高い仕事を全うしていくとともに、常日頃はお互いが「ONE TEAM」となり、情報交換はもちろんのこと、連係・連動していく。選手たちと同じく、我々スタッフもラージグループとしてさらに強固な関係性と質の高い指導を行っていければと思っています。
そうした綿密な連係と連動を図っていくためにも、完成した「JFA夢フィールド」という環境は、我々、日本代表に携わるファミリーにとって素晴らしい施設になります。
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