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アジアのピッチから ~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第77回 小原一典 カンボジアサッカー連盟技術委員長
2023年04月28日
カンボジアサッカーの現状
カンボジアは4月半ばにクメール正月を迎えますが、この時期が一年のうちで一番暑い時期になります。
2023年4月末から5月半ばにかけて東南アジア競技大会(SEA Games)がカンボジアで初開催されるため、各方面で準備が急ピッチに進められています。カンボジアサッカー連盟のあるオリンピックスタジアムも人工芝から天然芝への張り替え、スタンドの座席の設置、更衣室の改修等が進んでいます。改修作業のため、連盟内は、WiFiが切れたり、停電が起こったり、騒音の中での事務作業を強いられています。
SEA Gamesに参加するU-22カンボジア代表は2月末からタイで強化合宿をスタート、カンボジア女子代表は2022年9月から中国で強化合宿を続けています。3月21日にアンコールワットから聖火リレーがスタートし、いよいよ本番に向けて準備のラストスパートといったところです。
SEA Gamesを控え、国内の活動は代表チームの活動に集中しており、クラブチームのカップ戦以外は延期されています。また、カンボジアサッカー連盟主催の大会ではありませんが、7月末に行われる総選挙を控え、有名な政治家の方々が全国各地でサッカー大会を開催しています。
これまでのサッカーの活動
SEA Gamesに向けて行われた活動は、2013年のナショナルアカデミーの設立、2017年の全国25県の地方アカデミーの設立、SEA Gamesの対象となる年代の代表チームの強化、2020年のトップクラブのユースチーム育成助成金立ち上げ、2022年のトップリーグ運営会社の設立とリーグ強化です。
私は2015年にテクニカルダイレクターに就任し、2017年に全国25県の地方アカデミー設立と統括に関わりました。コーチや選手の選考を行うため、25県を周るのに約1年かかりました。その後は毎年トレセンを行い、コーチや選手たちと情報共有をし、優秀な選手はナショナルアカデミーに推薦しました。
また、2017年からユース大会も継続されています。試合数は少なかったですが、短期集中型の大会ではなく、リーグ戦が出来たので、日常の活動が活性化されました。
これらの活動の総括はSEA Gamesが終わってからになりますが、今の代表選手たちは以前の選手たちと比べ、技術と個人戦術のレベルは上がりました。とはいえ、カンボジア国内のユース年代におけるサッカーの裾野が広がる前にナショナルアカデミーがスタートしたこと、また2017年にSEA Gamesの対象選手の年齢が変更になったため、今年のSEA Gamesに参加する代表選手たちの早期発掘および育成が充分に行えなかったと感じています。
今後の展望
カンボジアの次の目標は、2038年にFIFAワールドカップに出場し、ノックアウトステージに進出することです。私も長期戦略の草案をカンボジアサッカー連盟に提出しました。ユース育成の継続、指導者養成、トップリーグ強化が鍵と考えています。カンボジアは若い世代が多く、サッカーがナンバーワンスポーツです。どこの地方へ行ってもフットサルコートがあり、スモールサイドゲームが盛んに行われています。今までは対象年齢に特化した活動のみ行ってきましたが、どこのバランスが欠けても発展していきません。2023年のSEA Gamesに向けてたくさんの施設も建設されました。有効に活用していければ、カンボジアサッカーの未来は明るいと思います。
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