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[女子チームのつくりかた]文京区立文林中学校女子サッカー部 文京区教育委員会の加藤裕一さんに聞きました。

2009年12月21日

[女子チームのつくりかた]文京区立文林中学校女子サッカー部 文京区教育委員会の加藤裕一さんに聞きました。

チームを立ち上げようと思ったきっかけは?

文京区は平成15年度から中学校において選択制を導入し、各学校が魅力づくりを進めています。学校側はそれぞれの特徴を打ち出していかなければなりませんし、教育委員会でも何らかの形でそのサポートをしていきたいと思っていました。そこで、中学校生活の中で大きな役割を果たす部活動で、学校の魅力を出せないかと考え、区立中学校では初めてとなる女子サッカー部を創設してみようと考えました。

立ち上げに至るまでの流れを教えてください。

文京区には日本サッカー協会があり、これまでも同協会の地域貢献という形で、文京区の中学生がサッカーを続けられるようにと開催された“Bビレッジ”などでご協力をいただいていました。そこで早速、サッカー協会へご相談に伺ったところ、快く協力を約束していただけました。女子サッカー部の創設については、複数の中学校に打診したところ、文林中学校から創設の方向で考えたいと返事がありました。準備の一環としてまず平成21年7月から月1回のペースで女子サッカースクールを開催してきました。1回目は19名、2回目が40名、3回目23名、4回目38名と、おかげさまでこれまでに多くの子供たちの参加があり、平成22年度から女子サッカー部を創設できる運びとなりました。

これまでに生じた最大の壁はどんなことでしたか?

部活動を新設するにには、顧問の配置や怪我の心配、他の部活動とのバランスなど様々な課題があります。そのため、学校側は慎重にならざるを得ません。そのような状況の中で、日本サッカー協会の上田女子委員長から、女子サッカー全体のレベルアップのためには、トップ選手の育成だけでなくそれを支える裾野を広く育成したいという熱い思いをお聞きし、文林中学校に伝えたところ、新しいことにチャレンジしていきたいという答えをもらうことができました。

独自のアイデアというものはありますか?

女子サッカー部を作る準備として女子サッカースクールを実施しています。このスクールの成果が部活動創設につながるため、日本サッカー協会からも全面的にご協力をいただきました。たとえば、第1回の時は犬飼基昭会長から参加者一人一人にサッカーボールのプレゼントがありました。また、なでしこジャパンで活動された川上直子さんにも指導に加わっていただきました。そのおかげもあってスクールは大変好評で、アンケートでも毎回開催を楽しみにしているとの声をいただいております。

チームが始動してから生じた課題とそれに対する取り組みを教えてください。

なるべく多くの子供たちにサッカーを楽しんでほしいと思い、小学生から中学生までを対象にしています。そのため、年齢によって身体能力や技術に差があり、全員が同じメニューで練習することが難しいため、別々にミニゲームを行うなど、コーチの方々にいろいろと工夫をしていただいています。

これからチームが目指すビジョンとは?

実際にサッカースクールを実施してみると、女子は小学校低学年まで地元のサッカークラブで男子といっしょにサッカーを楽しんできていても、高学年になると止めざるを得なくなるといった声を聞きました。男子に混じってサッカーをすることへのためらいや、中学校に女子サッカー部がないことなどが理由のようです。そこで、中学校に女子サッカー部を創設するだけでなく、小学校高学年がサッカーを楽しむ場を作ることによって、女子が小学生から中学生まで継続してサッカーを楽しむ環境を広げていきたいと考えています。また、部活動自体は週に2、3回、小学生は週末にスクールを開催していければと思っています。指導面では指導者希望の大学サッカー部員の方を派遣してもらう方向で話も進んでいます。互いに刺激を与え合いながら、継続していけるように環境を整えていきたいですね。

文林中学校の遠山政克校長先生にもお話を聞きました!

最初に女子サッカー部創設の打診を受けた時の率直な感想は?
実際に人数が集まるのかなというのがありました。でも、面白いアイデアだなとも同時に思いました。

そんな中で女子サッカー部創設の決め手となったのは何だったのでしょうか?
感触を得るためにもサッカースクールを開催することになり、私も見学したのですが、子供たちが本当に楽しそうなんですよ。その姿を見ると、なんとか活動できる場を作ってあげたいと。子供たちが楽しい、やりたいと思う気持ちを大切にしたいと思いました。

部活動としてスタートさせるにあたり、何が一番問題でしたか?
やはり、指導者の確保ですね。教員は異動があるので・・・。しかし、教育委員会もサッカー協会も協力してくれるということで動き出しました。管理顧問というのは必要ですが、もし誰も人材がいなければ私がやってもいいわけですから(笑)。あとはグラウンドの問題ですね。現在はソフトテニス、陸上、野球とすでに使用日もそれぞれ限られた中で活動を行っています。そこで隣の小学校のグランドを使用していないときに使わせてもらえないか交渉をしてみました。もともと地域の幼稚園、小学校、中学校と一貫教育的なモデルケースに指定されていた環境でしたので互いに交流があったので話はスムーズでした。スクールでは小学生も参加していますし、活動の場ということではこれ以上の適所はないと思いました。

来春から部活動としてスタートします。どんなチームになっていってほしいですか?
まずは部活動ならではの、仲間づくり、交友範囲の広がりなどを感じてほしいですね。文林中学校に行けば、サッカーの友達ができると思ってもらえるような部活動ができればと思っています。人数が集まれば、試合もできます。勝負の世界に触れて、勝つ喜び、負ける悔しさ、みんなと協力することなどいろんな経験をしてほしいですね。そのためにも好きなことができる場所があるということは大切だと思います。

チームトレーニングレポート

 

東京都文京区立文林中学校では平成22年度春からの女子サッカー部発足を前に、月に1回のペースでサッカースクールを開催しています。当初、対象にしていたのは中学生と小学5、6年生。しかし、このスクールの楽しさが口コミで広がり、今ではサッカーに興味を持つ小学校低学年の参加も多いといいます。12月に行われた5回目のスクールには小中学生合わせて44名が集まりました。

 スクールが始まる朝10時を前に、文林中学校のグランドはボールを追いかける子供たちであふれていました。これまでのスクールで指導にあたっていた2人の日本サッカー協会のスタッフとともに登場したのはなんと、なでしこジャパンの佐々木則夫監督。遠山政克校長先生の挨拶の後、佐々木監督の掛け声とともにスクールはスタートしました。まず最初に全員でウォーミングアップが行われました。ボールを使いながら佐々木監督の動きをマネてみたり、ボールを取り合ったり・・・。さらにグループを4つに分けると、バウンドさせたボールの下をくぐったり、ダッシュと組み合わせながら体を十分に温めます。

 ここからは小学生低学年と、高学年・中学生の2つにグループを分けて、体格や技術を合わせてのトレーニングです。1対1、2対2、3対3、4対4、5対5、6対6と人数指示と同時にコーチからボールが出ると、競り合いながらゴールを目指します。コーチの人数指示は次々と変わります。他の人のプレーを見ながら、外で待っている人は自分が何人目になっているのか状況を常に把握していなければなりません。最後はミニゲームです。でもゴールは4つ!狙うべきゴールを2つ、守るべきゴールを2つ。前半は片方のチームだけ両ゴールにコーチたちがキーパーとして立ちはだかります。小学生たちは同じルールではありますが、ボールは2個に増やされ、懸命にゴールを目指していました。

 また、スクールでは予期せぬハプニングも起こります。ゲーム途中では転んでしまった生徒が・・・。少しして痛みが引くと自分からゲームに戻って元気にボールを追いかけていました。文林中学校2年生の石田恭子さんは5年生まではサッカーをやっていたそうですが、現在はチームには所属していないそうです。「こうやってまたサッカーができるのがすごく嬉しいです!今は月に1回だけど、来年からは部活動としてスタートするので、待ち遠しいです」(石田さん)。そこへお互いの連絡先を交換しようと声をかけてきたのはソシオスFCエルマナに所属する黄茜さん。チームメイトとともに参加していました。新しい友達の輪が広がるというのもスクールの特長です。

 スクールを終えた佐々木監督は「私自身、本当に楽しかったです。今日は難しいことはせずに、サッカーを楽しむことを考えて内容を構成しました。休憩や指示後の動きを早くすることや、元気に挨拶をすることといったことも大切です。サッカーを楽しむためにはいい習慣から。こういったスクールをきっかけに次のステップにつながっていってほしいですね」と語っていました。「最初の頃は知らない人の中でそれぞれが、まだ馴染んでいないという感じで、静かな雰囲気でした。でも回を重ねるにつれて友達も増え、笑顔が増えましたね。今では他の学校の参加者ともすっかり友達になり、連絡先を交換したりする姿も見られて、私としてはすごく嬉しいです」とは初回からずっと指導にあたっていた日本サッカー協会の山田薫さん。女子サッカー部のスタートとなる来春には、月に一度だけではなく、仲間とボールを追う日々がやってきます。チームメイトとともに多くのことを学んでいくことになる生徒たちに大きな可能性を感じました。

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