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【最後の青春ドラマ】川澄奈穂美に憧れたサッカー少女は日本一を懸けた舞台へ~高校女子選手権・宮澤ひなた(マイナビ仙台レディース)前編

2022年12月27日

【最後の青春ドラマ】川澄奈穂美に憧れたサッカー少女は日本一を懸けた舞台へ~高校女子選手権・宮澤ひなた(マイナビ仙台レディース)前編

第31回全日本高等学校女子サッカー選手権大会が2022年12月30日(金)に開幕します。高校日本一を決する大会に出場した選手はどのような青春時代を過ごしてきたのか。ここではなでしこジャパン(日本女子代表)でも活躍する宮澤ひなた選手(マイナビ仙台レディース)の高校時代のストーリーをお届けします。

○オンライン取材日:2022年12月22日

あこがれの舞台で味わった悔しさ

マイナビ仙台レディースに所属し、なでしこジャパンの次代を担うアタッカーとしても期待を集める宮澤ひなた。彼女が最初になでしこジャパンのトレーニングキャンプに招集されたのは2018年1月、星槎国際高校湘南に在籍していたときで、第26回全日本高等学校女子サッカー選手権大会で初戦敗退を喫した直後のことだった。当時から年代別代表の常連で、世界を相手に堂々たる戦いを見せていた宮澤だったが、女子選手権は楽しさや喜びと悔しさが入り混じった思い出として残っているという。

宮澤は3歳年上の兄・宮澤佳汰(横浜猛蹴FC)の影響で物心ついた頃からサッカーボールを蹴っていた。「小さい体で大きなボールを抱えた写真がある」という少女は小学校に進むと地元・神奈川県南足柄市の向田サッカークラブで本格的にサッカーに取り組むようになる。そして「川澄奈穂美さん(現、NJ/NY ゴッサムFC)に憧れて」ピンクのヘアバンドをつけてプレーしていたところ、ある大会でOSAレイアFC U-15のコーチに声を掛けられ、同クラブへの入団を決意する。

OSAレイアFC U-15はOSAレイアFC(現、SEISA OSAレイア湘南FC/関東女子サッカーリーグ1部)の下部組織で、星槎国際湘南はU-18のカテゴリーに相当する。それまで男子に交じってサッカーをしていた宮澤にとって、初めて触れた女子サッカーの世界。学年が進むごとに「もっとうまくなって代表に選ばれるようになりたい」という気持ちが募っていったこともあり、2015年に星槎国際湘南に進学したのも自然な流れだった。

星槎国際湘南は通信制の高校だが、宮澤が入学したのは女子サッカー専攻のコースで、大磯キャンパスに通って午前中に授業を受け、午後はグラウンドでトレーニングに励むという毎日を過ごした。サッカー部の練習に加え、トップチームであるOSAレイアFCの練習に参加することもあったため、「1日中グラウンドにいる感覚だった」という。

入学当初からレギュラーとして活躍していた宮澤は、2015年度の第24回の女子選手権に背番号9をつけて出場した。中学生の頃はトップ下やボランチでプレーすることが多かったが、高校では左右のウイングが主戦場となり、スピードを生かしたドリブルや裏への抜け出しがチームの大きな武器となった。その前年、星槎国際湘南が初出場した第23回大会を現地で応援し、チームの大会初勝利を見届けていた宮澤は「自分もこの舞台で活躍したい」という強い思いを抱えながら鎮西学院高校との初戦に挑んだ。

「基本的に緊張しないタイプで、相手に対して何ができるかというワクワクのほうが強い」という宮澤は、多くの観客が見守り、声援が飛び交う中でのプレーに喜びを感じ、楽しみながらプレーしたという。しかし、試合はスコアレスのまま80分間が終了し、PK戦に突入する。

柄澤俊介監督から「ひなた、5番目な」と告げられ、5人目のキッカーとして待機していた。しかし、後攻の星槎国際湘南は3人目で当時のキャプテンだった川倉愛梨が外してしまい、相手が5人全員、成功させたため、宮澤の順番は回ってこなかった。「自分の番が来ていたらどうなっていたんだろう……というのは思いますけど、蹴る前に負けてしまいました。3年生の先輩と星槎国際湘南のユニフォームを着て少しでも長くプレーしたい気持ちがあったので、すごく悔しかったです」

苦境を乗り越えて挑んだ2度目の選手権

「次こそは」という強い気持ちで2年時を迎えた宮澤は、チーム以外での活躍も目立つようになる。前年度にAFC U-16女子選手権に出場し、準優勝を飾ったことで、この2016年にはヨルダンで行われたFIFA U-17女子ワールドカップに参戦した。

年代別代表でトップレベルの選手たちと共闘できること、そこでの経験をチームに還元できることに喜びを感じる一方、「積み上げている大事な時期にチームを離れることが増えて、難しさを感じ、監督からも叱責されて、いろいろな葛藤がありました」と振り返る。「家に帰ってお母さんの顔を見たら涙があふれてきて、大泣きしたこともありました」というほどの難しい時期を乗り越え、女子選手権の第25回大会に挑むことになった。1回戦の相手は強豪の日ノ本学園高校。「この試合のことはめっちゃ覚えています」と、宮澤にとっても記憶が鮮明な一戦だ。

「星槎国際湘南はつなぐサッカーが持ち味で、ボールを保持しながら相手を動かしていくスタイルなんですが、あの試合では相手を押し込んだ状態でもゴールを決められましたし、チームとしてやるべきことができていました」

宮澤がそう振り返ったように、序盤は星槎国際湘南が日ノ本学園を圧倒する。宮澤も6分に先制点を挙げると、24分に加藤もものゴールをアシスト、26分には追加点と躍動する。

「正直、負ける気がしなかったというか、勝てるな、という感覚が自分の中にあった」というが、そう思ってしまったことが油断につながったのかもしれない。その後、日ノ本学園の猛反撃に遭い、3-3の同点でタイムアップを迎える。そしてPK戦のさなか、宮澤は相手チームの選手たちが発した言葉に心を惑わされることになる。

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第31回全日本高等学校女子サッカー選手権大会

大会期間:2022年12月30日(金)~2023年1月8日(日)
大会会場:三木総合防災公園(兵庫県三木市)、五色台運動公園(兵庫県洲本市)、いぶきの森球技場(兵庫県神戸市)、ノエビアスタジアム神戸(兵庫県神戸市)

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