“あそび“は、子どもの未来をつくる原点
ーまずはじめに、「あそび」を提供する会社であるボーネルンドが『JFA Youth & Development Programme(JYD)サポーター』契約を締結するに至った経緯を教えていただけますか?
早川:ボーネルンドは45年にわたって、あそび道具やあそび場づくりを通じて子どもたちの健全な成長を応援し続けてきました。“あそび“は、子どもの未来をつくる原点。学校の先生や宇宙飛行士、スポーツ選手など、子どもたちの未来は、あそびの中から生まれると確信して活動しています。
しかし、昨今はコロナの影響もあり、子どもたちが存分に遊ぶ機会、とくに遊びながら楽しく体を動かす機会が減っています。実際に肥満児の増加や、スクリーンタイムが増えたことによる視力低下などが大きな問題になっています。とくに学齢期の子どもにおいて、世界中で1日1時間の運動が推奨されているにもかかわらず、日本の子どもたちは1週間に1時間も運動をしていないケースが多くあります。
ボーネルンドとしても、あそび場をつくったり、運動の大切さを呼びかけたりしてきましたが、対象の多くは未就学児。体を動かすことがとくに重要な学齢期の子どもたちに対するアプローチが課題だと感じていました。
そんな中、スポーツとあそびをかけ合わせることで課題を解決できないかと考えました。取り組みを模索するうえで大切にしたのは、上手い・下手を評価軸にしないこと。誰かと比較されることなく、体を動かすことをとにかく楽しんでほしいんです。
このような背景から、スポーツ業界の方と接点をつくりはじめ、JFAさんと出会いました。お話をさせていただいたところ、「今の子どもたちには、遊びながら体を動かす楽しさを知る機会がもっと必要だ」「スポーツを好きになるには、まずは体を動かすことを好きになるのが大切。体遊びの中には多様な体の動きがあり、それはやがてスポーツにつながっていく」という考え方が一致したんです。より多くの子どもたちに、楽しく体を動かす機会を提供していくために、サポーター契約を締結させていただきました。
ボーネルンド1社で活動するよりも多くのエリアで、多くの子どもたちに、あそびとスポーツの楽しさを提供することができると考えています。JYDへの参画はすぐに決まりました。
高井:我々の活動のベースには、サッカーの競技人口を増やして日本サッカーの強化につなげていきたい、全国のサッカーファミリーの輪を広げたいという思いがあります。その目的を達成するためには、なによりもまずサッカーを好きになってもらうためのきっかけをつくることが大切だと考えています。ただ、サッカーを楽しんでもらうためには、そもそも体を動かすことを楽しいと感じてもらわなければいけません。
そこで、ボーネルンドさまとタッグを組むことで、子どもたちのあそびの選択肢を増やすことができる、これはJFAが推進するグラスルーツ活動において大切なことだと気づき、パートナー契約を締結させていただきました。
<JFAグラスルーツ宣言>
JFAとの初となる共同イベント『PLAY BUS@夢フィールド~移動式あそび場~』の様子
体を動かすよろこびを取り戻すために
ーむかしに比べて、子どもが思い切り体を動かせる環境は貴重ですよね。
早川:近年、子どもたちのあそびの自由度が奪われてしまっていると感じます。ボールあそびが禁止の公園が増えていたり、親が子どものやることを決めつけてしまったり…。体を動かすよろこびを感じる瞬間自体が減っているのではないでしょうか。
世の中の効率化が進み利便性が高まったことで、逆に子どもたちのあそびの自由度は奪われてしまったのではないかと思います。ともすれば、世の中は少し不便なくらいのほうが良くて。昔でいえば、デコボコ道があれば、そこでどうすれば転ばないかを考えましたし、それ自体も楽しいわけです。僕も子どもがいるんですけど、やっぱり道って結構な冒険なんですよね。溝があれば入りたい。大人は「子どもが怪我しないように、安全に過ごせるように」って言うけど、それは大人が安心したいだけであって、子どもたちが育つ場を取り上げているのかもしれないな、と。普段そういった経験ができないのか、子どもたちが今回のイベントの場を楽しんでいたのは嬉しいですね。
高井:今回のイベントでは、それに加えて大人も楽しんでいる様子が印象的でした。外で見ているだけでなく、子どもと一緒になって遊んでいるんです。ボーネルンドさまは、大人が子どもに与える影響もすごく考えており、保護者へのアプローチの仕方は、すごく勉強になりました。
デンマーク・コンパン社のフィットネス遊具で大人も楽しく運動
ーボーネルンドとして、JFAと共に活動するメリットはどこにありますか?
早川:日本全国のサッカー協会や自治体と繋がりがあるのは、大きな魅力です。より多くの子どもたちにあそびを届けられると期待しています。
高井:JFAとしても、地域性はすごく大事にしている部分です。ボーネルンドさまも日本全国展開されていますし、全国各地のフィールドを活用してほしいですね。
早川:サッカーという競技自体に、老若男女問わずファンがいるのも魅力です。今回のイベントもどれくらい人が集まるのか不安もあったのですが、これだけ大勢の人が集まったのはサッカーの力だと思います。高井さんに人数を集計するように言われていましたが、これは概算で出すしかないなというくらい、たくさんの人に来ていただけました(笑)。
また、ボーネルンドには、あそび場に常駐して親子にあそびを提案するプレイリーダーと呼ばれる大人がいます。すでに子どもにあそびを届ける存在として認知していただいていますが、より専門的なスポーツの知識を身につけることができれば、プロフェッショナル職として社会的価値も高まるのではないかと。
<プレイリーダーについて>
お互いの知見をかけ合わせ、新たな可能性を探す
ーそうした大人の存在は、子どもたちの成長に大きく関わる部分ですね。
早川:ボーネルンドのプレイリーダー、そしてJFAのキッズリーダー。彼らを養成することも契約に含まれています。プレイリーディングとコーチングを組み合わせることができれば、新しい可能性が生まれるのではないでしょうか。
子どもにとって、親以外の大人と交流する機会はなかなかありません。プレイリーディングを通じて子どもが自主的に考えるきっかけを与え、具体的な技術をコーチングする。この流れを生み出すことに大きな意味があります。
ノウハウを共有して、それぞれの強みをかけ合わせた新しい存在が生まれても面白いですね。
高井:ボーネルンドさまとのパートナー契約において、お互いが保有する施設などファシリティの共有と、人材の交流は大きなテーマです。現場での意見交換をしながら、良いものを作りあげていきたいですね。たとえ失敗があってもいいと思っています。ただ、今回は初回にも関わらず集客も大成功し、今後の可能性も大いに感じることができました(笑)。
早川:今後実施するイベントのハードルが上がってしまいましたね(笑)。私も今回のイベントですごく可能性を感じました。このような活動をさらに広げていきたいです。
一方で、規模の拡大だけに囚われてもいけないなと。限られた敷地、遊具しかないときにどういったことができるのか。「子どもの健全な成長に寄与する」という観点から、お互いの持っているものを最大限に生かしてトライしていきたいですね。『あそび×スポーツ』の新しい文化をつくっていくことができれば、とわくわくしています。
■JFAが考える「価値共創」とは
JFAは、新しいパートナーシップのコンセプトとして「価値共創」を挙げています。JFAが考える「価値共創」とは、JFAが持つアセット(資産)を使って、企業と一緒に新たな価値を創造することができるパートナーシップのことで、企業とJFAが連携し、パートナー企業のビジネス課題、社会における課題、日本サッカー界の課題を解決していく「スポーツ版三方良し」を実現していく新たな取組です。
社会的責任のもと企業のリソースを使ってSDGsの取り組みなど、社会貢献を推進するだけではなく、企業がサステナブル(持続可能)なビジネスを行っていくために、スポーツ・サッカーが持つ力を活用しながら社会課題を解決しつつ、経済的価値も創造していくことを目指しています。