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田嶋幸三会長メッセージ 日本サッカー協会100年の歩み~JFA100th Anniversary Celebration
2021年09月10日
日本サッカー協会は9月10日、創立100周年を迎えました。
野津謙第4代会長は、『日本サッカーのあゆみ(日本蹴球協会創立満50年記念出版)』に「我が国のサッカー界は、今後なお解決すべき幾多の問題を抱えているが、以下の5項目を体験することによって、サッカーが1人でも多く無我の境地を会得し、人間形成の実を挙げることを願ってやまない」とし、五つの課題を書き記しています。
一つは「ルールを守る」、二つ目は「不可能を可能にする」、三つ目が「チームと個人の調和について」、そして「good loser(良き敗者)」と「スポーツによるほんとうの友情」です。
強豪・スウェーデンを破る快挙を成し遂げたベルリンオリンピック(1936年)の後、日本サッカーは長い低迷期に陥りました。「デルトマケ協会と陰口をたたかれ」(野津会長)、フェアプレー賞コレクターと揶揄(やゆ)されてきた日本サッカー。しかし、われわれの先輩たちは常にサッカーをリスペクトし、高みを目指してきました。
1960年、西ドイツからデットマール・クラマーコーチを招へいした日本は、東京オリンピック(1964年)でアルゼンチンを破って8強入り。次のメキシコオリンピック(1968年)では銅メダルを獲得し、さらに、国際サッカー連盟(FIFA)と国連教育科学文化機関(ユネスコ)双方のフェアプレー賞を受賞するという栄誉に浴しました。それは、ピッチ内外での模範的な態度が評価されての受賞でした。
試合後にスタンドのゴミ拾いをする日本人サポーター、FIFA女子ワールドカップドイツ2011で優勝とフェアプレー賞の栄光に輝いたなでしこジャパン、2018FIFAワールドカップロシアのベルギー戦で敗れた後にロッカールームを清掃して大会を去ったSAMURAI BLUE(日本代表)――。フェアプレーを追求しながら勝利を目指すことを誇りとしてきた日本サッカーの精神は今も脈々と受け継がれています。
1993年、日本代表の強化と新しいスポーツ文化の創造を目指してスタートしたJリーグは、“地域に根差したスポーツクラブ”を旗印に掲げ、サッカーの裾野を広げながら多くの選手を輩出してきました。Jリーグ、そして、1998年のFIFAワールドカップ初出場、韓国と共催した2002年のFIFAワールドカップという歴史的な出来事によって、サッカーは“文化”として浸透。今や多くの日本人選手がヨーロッパで活躍するまでになり、“夢のまた夢”だったワールドカップは、ベスト8以上の成績を目指す大会となりました。
サッカー選手に必要なのは、自由と規律、献身的なプレーです。そのベースとなるのは、論理的に考えてプレーすることであり、失敗を恐れずに挑戦し続けることです。それはまた、現代社会に求められている人間像でもあると思います。
常に世界基準を追求し、サッカーを通じて国際社会をリードする人材を育成することはサッカー界の重要な使命です。また、今年9月に開幕するWEリーグは、女性スポーツをリードするだけでなく、多様性を尊重し誰もが個性や能力を発揮できる新しい時代に貢献していくことが期待されています。
昨年から続くコロナ禍はサッカー界にも大きな打撃を与えました。しかし、立ち止まるわけにはいきません。JFAは、ガバナンスを強化し、より強く、より信頼される組織をつくり上げます。また、時代に即したデジタル化を進めて新たなメンバーシップ制度を構築し、「JFA2005年宣言」に掲げる「約束」を実現します。そして、未来を担う子どもたちが笑顔でサッカーを楽しみ、サッカーファミリーのみなさんが生涯を通じてサッカーの素晴らしさを享受できる環境をつくっていきます。
次の100年も先人たちの英知を継承しながら、「サッカーを通じて豊かなスポーツ文化を創造し、人々の心身の健全な発達と社会の発展に貢献する」という理念を推進してまいります。