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初の女性対象B級コーチ養成講習会を開催
2018年01月30日
日本サッカー協会(JFA)は、女性を対象とした初めてのJFA公認B級コーチ養成講習会を2018年1月に開催しました。このコースは、主になでしこリーグ1部・2部の選手と指導者(なでしこチャレンジリーグも含む)を対象にしたもので、全国から15人の参加者が集いました。前期は1月9日(火)から14日(日)、後期は1月23日(火)からら28日(日)までの日程で実施しました。
内容は、通常のB級コーチ養成講習会と同じものでしたが、後期には同じ会場で女性対象のC級コーチ養成講習会も並行開催され、B級・C級の受講者がともにFIFA U-17女子ワールドカップヨルダン2016のJFAテクニカルスタディグループ報告を聞く機会もありました。現役選手の参加を考慮して前期・後期を1ヶ月の間に行う日程的に厳しいコースとなりましたが、受講者は4回の指導実践や多くの実技・講義やディスカッションを通じて大きな成長を見せていました。
インストラクターコメント
大野真 ナショナルトレセンコーチ(女子担当)チーフ、指導者養成インストラクター
今回初めての「公認B級コーチ養成講習会(女性コース)」を実施しました。通常の公認B級コーチ養成講習会は、前期と後期の間に充分な自己研修の期間を取り、自チームに戻り指導の実践を繰り返し行い、後期に向けて充分に準備ができる期間を設けて後期の講習に入ることになっています。しかし、今回のコースは、なでしこリーグに所属する選手と指導者を対象としていたため、対象者が受講しやすい時期を選び、新しいシーズンに向けて各チームの活動が本格的に始まる前に日程を集中させて行いました。そのため、前期と後期の講習会の間が1週間しか取れず、この期間に行う指導実践の課題やその他のレポートなどの課題をこなす時間が短く、この点では受講生は苦戦をしていました。しかし、短い期間にもかかわらず、その期間内で指導実践の実習を指導していただいた公認A級、S級コーチの方々の協力と受講生の頑張りで、課題を達成して全員が後期に集まることができ、無事に全てのスケジュールを行うことができました。
今回、なでしこリーグの選手や指導者を対象とした講習会を行った目的は、特に現役選手の間に公認B級コーチのライセンスを取得することで、選手生活が終わった後も直ぐに指導者としてサッカーに携わることができ、女性選手のセカンドキャリアを充実させることにつながると考えたからです。また、選手としても指導者が学ぶサッカーの知識や理論を知ることで、サッカーの技術・戦術面での理解も深まり、選手としての成長にもつながると考えました。
今回の講習会に参加した受講生は15名で、現役選手としてプレーしている方から、既に指導者として活動している方まで、指導者としての経験には差が見られました。しかし、全員が選手としての経験をもちサッカーに対する技術、戦術面の理解度が高く、さらに実技力が備わっていることから、レベルの高い実技のトレーニングとなり、日を追うごとに指導技術のレベルも上がっていきました。後期最後の指導実践の試験では、指導のテーマごとにオーガナイズしたゲームの中で堂々としたコーチングを行い、適切にプレーの改善ができるまで指導のレベルが上がっていました。
また、後期の講習と同じ会場で併せて実施した女性を対象とした「公認C級コーチ養成講習会」とも連携をとり、お互いの実技や指導実践を見学する機会もありました。さらに、今回後期の会場となったJ-GREEN堺では同時期に男子の関西トレセンU-17、U-14、U-12、公認A級U-15養成講習会の指導実践、U-15年代の強豪チームが集まる女子のフェスティバル、Jリーグや海外のチームのキャンプなど、育成年代からトップまでの多くの行事が行われており、J-GREEN堺の中に併設されている「JFAアカデミー堺」の日常の活動などを含めて、スケジュールの合間に見ることができたことは、受講生にとっては大きな刺激になったと思います。
今回の講習会を通して感じたことは、受講生の講習に対する真剣で直向きな姿勢の素晴らしさです。雪の舞うコンディションの中、ハードなスケジュールにもかかわらず黙々と努力をする姿勢には、日本の女性選手、指導者の芯の強さと共に、頼もしさも感じました。
「世界のサッカーの進化の方向性に男女差はない」女子のワールドカップの分析にもあるように、第1回目となる「公認B級コーチ養成講習会(女性コース)」を終えて、今回のコースを受講した受講生の方々が、日本の女子サッカーのリーダーとして活躍をすると共に、日本のサッカー全体の発展のために大いに貢献をしてほしいと思います。
受講者コメント
船田麻友 さん(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)
今回、B級養成講習会を受けるにあたり、選手生活に活かせるものを獲得することと、これから関わる子供たちや選手のために伝えられる要素の基礎的な部分を学びたいと思いました。実技も講義も合わせて、講習期間中は、日々考えることの毎日でした。「どうしたら改善できるのか、良くなるのか」を考え、受講生みんなでディスカッションする機会がこのコースでは特に多かったです。その中で「観ること」「ほめること」、この2つの重要性を強く感じました。選手第一に考え、積極的にプレーする環境をつくり、良いプレーが出たら褒めて、その中で出た問題を分析し改善する。言葉にすることは簡単ですが、その部分を見極めることは本当に難しく今後の課題となりました。前期後期合わせて2週間で教えていただいたことを、ここで終わらせるのではなく、自分の中で砕いて、これからの選手に伝えていけるようにしていきたいと思います。また、自分自身の選手生活の質の向上にも活かしていきたいです。
平野聡子 さん(日体大FIELDS横浜)
昨シーズンで現役を引退することを考えたとき、今後も出来れば何らかの形でサッカーに関わっていたいという気持ちがありました。これまでの自分の中で描いていた指導者像、指導方法などを、上位の講習会でもっと具体的に理解を深めたいと思ったので、この講習会があることを聞き、参加することにしました。前期を終えたときは、自分自身のサッカーの知識不足や指導の難しさを感じ、勉強してより理解を深めたいと言う気持ちになりました。後期を終えて、指導する上での大切なこと、気づきなどを教えていただき、今後指導する機会があれば活かしていきたいと思いました。この講習会を受講して、『褒める』ことの重要さを学びました。失敗してもチャレンジしたことを褒める。そのことにより可能性が広がり成長し、勝つことに繋がるということということがとても印象に残りました。私自身、褒められることがうれしく思うので『褒める』ということを大切にしていきたいと思います。
浦田佳穂 さん(ニッパツ横浜FCシーガルズ)
今回受講しようと考えた動機は二つあります。一つ目は現役を終えてからのセカンドキャリアを考えたとき、取得しておきたい資格であると考えたからです。二つ目は現役でプレーしている中で、サッカーをより深く知り、選手としてさらなるステップアップをしたいと考え、本コースを受講しました。実際に前期後期を終えて、自分自身が考えていた以上の収穫がありました。多くが指導者の立場としての学びですが、裏返せばサッカー界や指導者から、サッカー選手として求められているものは何かを学ぶことができたのではないかと考えています。また、サッカーがよりシンプルでより深いものであり、その難しさと楽しさの本質を再確認できました。そして何より、このコースで出会えた全ての方々との時間が今後の自分への財産となりました。本コースで学んだことや感じたこと、新たな課題を今後に活かし、女子サッカー界への貢献と還元に努めていきたいと思います。
今城汐莉 さん(愛媛FCレディース)
私がこのコースを受講した理由は、現在、仕事で中学生の指導をしている中で、もっと良い指導をするために勉強したい思ったからです。実際に受講をして、自分自身の強みや足りない部分を見つけることができ、褒めることの重要性を再確認することができました。また、女性コースならではの団結力と、意識の高さに自分自身を成長させることができました。これからも全国各地で頑張っている女性コース受講生の皆さんと切磋琢磨しながら、今回の経験を自分の指導に生かしていきたいと思います。
※受講者の所属はなでしこリーグ2017シーズンでの登録チーム