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アジアのピッチから ~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第13回 藤原孝雄 ブルネイ・ダルサラーム国U-15代表監督

2016年01月19日

アジアのピッチから ~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第13回 藤原孝雄 ブルネイ・ダルサラーム国U-15代表監督

アジアの各国で活躍する指導者達の声を伝える「アジアのピッチから」。第13回は、ブルネイ・ダルサラーム国でU-15代表監督を務める藤原孝雄氏のレポートです。

ブルネイという国について

赴任して9ヶ月、とてもゆっくりと時間が流れるこちらの国では、全員がおっとりとした国民性です。それゆえ、サッカーにおいては少々競争意識が欠けているように見受けられます。唯一彼らの競争意識が見えるのはスーパーやショッピングモールの駐車場。ブルネイは電車が無く駐車場は常に渋滞しているため少しのスペースを目掛けて2列目からでも車が飛び込んできます。この必死さがサッカーに反映されればと常に思っています。さらに驚いたことは、宗教と暮らしの密接な関係です。1日5回あるプレイタイム(お祈りの時間)に入ると、試合中でもゲームがストップするのです。お祈りの重要さが分かります。

感動した点は、郊外に選手を迎えに行く際、野生の猿や大きなイグアナなどいろいろな動物と遭遇することです。気候は12月でも気温は30℃を上回り年中真夏です。こういった環境がブルネイ人のおおらかさを生んでいるのかもしれません。

ブルネイのサッカー事情

ブルネイサッカーは、国内1部2部のリーグから構成されていますが、下部組織があるチームは2チーム程度です。現在グラスルーツ活動を年に2回ほど行っており、12月に行われた大会では全国からU-12年代の選手が約100人参加しました。昨年11月に協会所有の人工芝のグラウンドが1面完成し、それを代表チームなど合計6チームでシェアしてトレーニングを行っており、練習場所が足りない日は、公共の施設を借りています。プレミアリーグが放映されていることからあこがれの選手は、日本人ではマンチェスターユナイテッドに所属していた香川真司選手。技術があって身体が小さくても大きい選手達の中でプレーできることを証明してくれたからです。

こちらの選手や親にとって、サッカーは「娯楽」の感覚が大きく「競技」としての理解がまだ少ないのが現状です。これは、ブルネイにプロサッカーチームやプロ選手がいないことが大きく影響しています。ブルネイでの通常は、勉強に励み国民の7割が公務員となって生涯安定に暮らすこと。ほとんどの保護者は「サッカーは勉強時間を削減する要因」と考えているのです。親の影響は絶大で、彼らの送迎なしには選手はトレーニング場所に来ることもできません。よって、親達との面談など、人間関係の構築は非常に重要です。また、この国では時間を守る文化が無いため、送迎する保護者は遊びに行かせる感覚で時間通りに来ることはありません。赴任当初、厳格にし過ぎて選手が私を拒否したことがあり、これは私の大きな反省材料となりました。

自身の活動及び目標

現在はブルネイU-15代表監督として日々のトレーニング、並びにスカウト活動を行っています。今年度の目標は、来年に行われる国際大会予選に向けての下地づくりとして国内ユースリーグの発足を目指しています。赴任当初、こちらのサッカー技術はドリブルが大半を占めており、パスをするにもボールコントロールがままならない状態でした。そこで、まずはボールのコントロール、更にその後の判断の向上を目標にトレーニングを重ね、この2点は着実にレベルアップしています。初めて行うトレーニングが多いためか、選手たちは真剣に取り組んでくれます。

昨年ブルネイでASEAN各国のチームが参加する「AFC U-14地域フェスティバル」が開催されました。大会の準備期間は、約4ケ月ありましたが、最初の2ヶ月は選手集めに奔走、その後断食月に入り、なかなか思うような強化ができず、本大会では4試合全敗という結果でした。選手たちもサッカーは準備が試合を左右すると痛感し、トレーニングをしっかりと行わないとまだまだ世界では通用しない現実を国際大会を通して肌で感じてくれたことは貴重な経験となりました。

先人たちのおかげで、現在日本では当たり前のようにあらゆるカテゴリーのリーグ戦やカップ戦が行われていますが、そうでない国があることに驚きました。日本人指導者のストロング・ポイントは、「真面目で一生懸命・勉強熱心・我慢強い」点です。就任当初、どういう魔法を使うの?と期待されていましたが、サッカーを含むどのスポーツも魔法や近道はありません。ブルネイのサッカーが毎年毎年進歩できるようにサポートしていきたいと思っています。

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