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S級コーチ養成講習会2022 Module2・集中講習④ 受講者レポート Vol.5
2022年06月21日
シーズンの折り返しとなる今週は、川崎フロンターレにご協力をいただき、麻生グラウンドでのトレーニングを視察しました。トレーニング後には鬼木達監督への質疑応答の時間も頂き、S級同期の浮嶋氏、元チームメイトの奥野氏という両インストラクターのファシリテートによる和やかな雰囲気の中、予定を超えた時間ご対応くださいました。
セビージャFCアナリストの若林氏を高円宮記念JFA夢フィールドに迎えての2日間のゲーム分析では、限られた時間での精度の高い分析が求められ、実際の指導現場でのハードな時間の流れを経験するカリキュラムとなりました。
Module2・集中講習④
期間:6月6日(月)~6月9日(木)
6月6日(月) | 午後 | 「プレゼンテーション」 受講生 「アナリストとしての仕事」 若林 大智(セビージャFC アナリスト) ゲーム分析・試合視察 日本代表 対 ブラジル代表 |
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6月7日(火) | 午前 | 指導実践 |
午後 | 各自分析内容まとめ 「分析発表」受講生 「プロチームのゲーム分析」 若林 大智(セビージャFC アナリスト) |
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6月8日(水) | 午前 | 指導実践 |
午後 | 「監督がGK/GKコーチに求めること」 「GKのトレーニング」 川俣 則幸(JFA GKプロジェクトリーダー) トレーニング視察 日本代表チーム |
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6月9日(木) | 午前 | トレーニング視察 川崎フロンターレ |
午後 | 「プレゼンテーション」 受講生 「プロフェッショナルコーチング論」 奥野 僚右(S級インストラクター) |
サポートプレーヤー派遣協力:江戸川大学、中央学院大学、ジェフユナイテッド市原・千葉(アカデミースタッフ)
受講者コメント
久保山由清 さん(清水エスパルス)
先週からスタートしたModule2の第2週目がJFA夢フィールドで開催されました。今回の集中講習④では、3つの講義、ゲーム分析、プレゼン、指導実践、日本代表&Jリーグトレーニング視察という内容で実施されました。
まずは先週から行われている『プレゼンテーション』では、欧州で活躍する監督の経歴、戦術がテーマでした。それぞれの視点で「分かりやすく端的に情報を伝える」がポイント。回を重ねるごとに見る側の目も厳しくなっていましたが、皆、映像の編集や構成の工夫がなされていてクオリティが上がっているのを感じました。講義で学んだデリバリースキル(声、目線、姿勢)も意識されている人もいて、終わった後の意見交換もそれぞれのスキルアップの為の重要な時間となりました。自身の指導哲学、戦術をさらに高め向上させていく上でも非常に勉強になるものばかりでした。
1つ目の講義は『アナリストとしての仕事』講師は現在スペインのラ・リーガで戦うセビージャFCのトップチームでアナリスト(分析家)として活躍している若林大智さんです。スペインでアナリストになるまでの経緯や現在のアナリストの仕事の内容を細かく説明してくださいました。ロペテギ監督のもとでは、アナリストとして一番重要な仕事は監督と選手のミーティングの準備だと言っていました。分析では過去4試合を遡って解剖し8つの局面+セットプレーで、試合に向けた戦術的なビデオを用意し、選手たちにわかりやすく伝える事を大事にされていました。チームに4人のアナリストがいるのは驚きでしたが、現代サッカーにおいて分析スキルはとてつもなく重要な事で、チームが勝つための大事なウエイトを占めると考えると、日本人として欧州トップクラブでアナリストとして活躍されている若林さんのお話はとても興味深いものでした。今後、自分が監督になった時にアナリストとの関わり方、実際にどういう役割を与えていきチームに還元させていくのかを考えさせられる貴重な時間となりました。
『ゲーム分析』ではJFA夢フィールドから国立競技場に移動し、キリンチャレンジカップ日本代表vsブラジル代表の試合を視察しました。試合前には自分が代表監督の想定で先発メンバーを選び、ゲームの戦況予想を立て、ゲームを視察して分析しハーフタイムの指示(継続点、改善点)を考えました。FIFAランキング1位のブラジル代表の選手達の華麗なプレーに、分析を忘れるくらい見入ってしまう場面もありましたが、自チームの機能している、していない所(場所、選手)、相手の攻守での戦術的意図、狙い、起きている現象を考慮し選手に実際に伝えるべき事を整理しました。分析で得たある情報の中から何を伝え、選手たちにどうやって行動を起こさせるのかを短い時間で作業することは、非常に難しいと感じました。
試合翌日は分析発表。課題を抽出し分析結果をまとめ(戦い方、4局面、エリア等)、選ばれた5名が発表。同じ映像でもそれぞれの視点、考え方で捉え方が全く違う事が印象的であったり、自身のプレーの判断基準から抽出した課題である為、様々な意見、考え方があり自分の見えていないものを気づかせてくれる場でもありました。時間との勝負の中で精度の高い分析資料をひとりで全てを作る作業はとてつもなく難しいものでした。最後はアナリスト若林さんの発表。現在の監督(ロペテギ)であったらこんなことを要求すると、実際にやられているように分かりやすく分析されていました。ビルドアップで失敗しているシーンでは、「ミスをしているけど切り替えでしっかり戻っているよね」と、選手の立場を考えたアプローチがされていて細かなことだけど大事なことだと感じる事ができました。
2つ目の講義は『現代サッカーに求められるGK像』『監督がGKコーチに求めること』で講師はJFA GKプロジェクトリーダー川俣則幸さんです。JFAの約束2050ワールドカップ優勝、世界1になる為には、世界1のゴールキーパーが必要という事で現在アプローチしている4つの指針(タレント発掘、ユースGK指導指針、GK指導者養成、若年層GKの育成・強化)のプロジェクトの内容でした。その中でまだまだ世界のトップとの差はあるなと、前日のブラジル戦のアリソン選手を例にあげてお話されていました。それでもこれまでの活動の成果により若手GKが成長し、欧州でチャレンジするGKやJリーグで出場機会を得始めた選手がいる事や、GKコーチ界のレジェンドであるフック氏(アヤックス)をGKプロジェクトのテクニカルアドバイザーとして招聘している事が分かり、少しずつ目標に近づいていることを知ることができました。また、現代サッカーではGKがゴールを守る事以外の役割が増加している事から、「ゴールキーパーからゴールプレーヤー」への名称変更を考える時期ではないかというプランも出ていたのも興味深い話でした。後半は監督としてやりたいサッカーを追求するために、GKに求めるものを考えさせられました。GKに対して何かを「させないこと」でリスクを減らす、「させること」で成果を得るといった事、またGKコーチに対して具体的に何を要求するのかを、監督の立場として明確にしておく事の重要性を学びました。
『トレーニング視察』は川崎フロンターレの練習の視察でした。どのトレーニングもテンポがあって狭い局面での早い判断、関わり、アイディア、技術が求められ攻守の切り替えでも強度が高かったのが印象的でした。オフ明け(連休)という事もあって2時間みっちりトレーニングしていて、とにかく一つ一つのクオリティが高いなと改めて感じました。また、フロンターレのコンセプトの落とし込みを垣間見ることができた事も収穫となりました。トレーニング後には、鬼木監督のお話を少し聞ける時間がありました。選手の良い所を伸ばす考え方、最初からこうと決めるのではなくその時その時の状況から自分がこれだと思った事を選んでいくという事、スター選手へのリスペクトやコミュニケーションを大事にされている事、何よりも自分らしさ、自分の言葉を大切にしていると仰っていました。最後にいただいた『飾らず自然体でいる事が大事である』という、我々受講生へのアドバイスも印象的でした。
『指導実践』では7つのテーマに沿ったトレーニングを実施。自身のプレーモデルに基づいたトレーニングプランを作成し、監督としてのコンセプトをどれだけ明確に選手に落とし込めるのかを考えて取り組みました。トレーニング後のディスカッションではインストラクター、受講生の仲間から様々な角度からのフィードバックが出され、議論を重ねてきた以上の問題点も浮き彫りになるなど、多くの気づきと刺激をもらえる充実した時間になりました。
集中講習④を閉める『プロフェッショナルコーチング論』の講義では、奥野インストラクターからトレーニングの効率、効果を上げるために、プランニングの重要性や考え方のアドバイスをいただきました。また、自分は何の為に監督を目指すのかを熱く語られ貴重なお話を聞く時間となりました。
いつも多くの学びをくださるインストラクター、講師の方々、サポートプレーヤーの学生の皆さんをはじめ関係者の皆様、共に学び気づきをくれる受講生の仲間の皆さんに感謝します。
講習を通し多くの知識と経験を積み、地域や日本のサッカーの発展の為に積極的に行動できる指導者を目指していきたいと思います。
次回は、三枝寛和さん(Y.S.C.C.横浜)よりお伝えします。