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FIFAのコーチ・エデュケーター養成プログラムを高円宮記念JFA夢フィールドで実施~FIFA/JFA Coach Educators' Development Pathway Programme
2023年08月08日
日本サッカー協会(JFA)は7月24日(月)から28日(金)の5日間、千葉県の高円宮記念JFA夢フィールドで「FIFA/JFA Coach Educators' Development Pathway Programme」のオンサイトコースを開催しました。
このプログラムは、国際サッカー連盟(FIFA)が指導者養成講習会などを担当する、いわゆる指導者を指導するチューター(コーチ・エデュケーター)の養成を目的として加盟協会に提供しているもので、今回はFIFAとJFAが協働しての開催となりました。4月14日にオンラインで開講式を実施し、各地域から選ばれた20人のチューターとJFAから12人のシニアチューター(シニアコーチ・エデュケーター)が参加しています。参加者たちはEラーニングコースとオンラインコースを受講した上で、初の実践形式によるオンサイトコースに臨みました。また、開催にあたってFIFAからはコーチエデュケーション部門を統括するBranimir Ujevic氏(FIFAヘッド・オブ・コーチング・ディベロップメント)、FIFAシニアマネジャーのMohamed Basir氏、FIFAテクニカルエキスパートのDany Ryser氏が来日しました。
コースの冒頭では、JFA技術委員会の小野剛副委員長が「このプログラムで学ぶだけでなく、われわれ(日本側)の絆も大切にして、一人一人が刺激し合ってさらに成長し続けることができる、そんなコースにしていきましょう」とあいさつ。Ujevic氏は「FIFAはプログラムを与えることを目的としているわけではありません。皆さん一人一人が成長することを望んでいます。各地域に戻れば、今度は皆さんがわれわれの立場になる。皆さんのためにわれわれがいます。一緒に成長していきましょう」と参加者に呼びかけました。
1日目はEラーニングとオンラインコースの振り返りをはじめとして、オンサイトコースの概要を説明。その後、C級コーチ養成講習会を教材にして、実際に講習会をどう組み立てて全体をマネジメントしていくか、講習会におけるチューターの役割などがFIFAから共有されました。その中で「皆さんがやっている内容とは違うかもしれないが、大事なのはコンテンツではなく、どのように目の前の講習会の参加者に適用(アダプト)していくかということ」「参加者が決められたルートを登るのではなく、迷ってもいいので自分にとって最適なルートを見つけられるよう寄り添ってサポートすること。それがチューターの役割」とFIFAは強調します。シニアチューターからチューターへのフィードバックのデモンストレーションでは、シニアチューターが細かくヒアリング。チューターの狙いや考え、気づきを引き出すための「質問スキルを磨く」実践などを通して、その重要性が伝えられました。
1日目の最後のセッションでは、実際にピッチに出て地元の高校生を対象にFIFAによる指導実践のデモンストレーションを実施。1日目を踏まえて、2日目からはJFAの参加者たちが2グループに分かれて実践形式でプログラムが進められました。
指導者や選手の成長を促すための三つのポイント、フィードアップ(目的設定)、フィードバック(振り返り)、フィードフォワード(未来に向けて)については、「フィードバックで重要なのはメンターがグッドリスナー(良き聞き手)であることが重要」とFIFAは強調。4人一組でのロールプレーイング、その中でのアクティブ・リスニングの実習やプレゼンテーションなどを通して、講習会の向上を図り、チューター、シニアチューターとしての役割について参加者たちは理解を深めていきました。
講習会の内容や伝達方法について振り返るセッションでは「参加者同士が話し合える時間を持てるようにした」というチューターの意見に対して、「対象者が中心になるよう、持ち得るものをシェアする時間を大事にしていたのは良かった」とシニアチューターがフィードバック。発言のバランスやタイムマネジメントなど現場に寄り添ったアドバイスを送っていました。そうした一連の流れを見てFIFAは「みんなが持っている知識をシェアして学ぶことが大事。フィードバックから次に生かしていくことを続けてほしい」とアドバイス。ピッチでの指導実践も4日間にわたって行われました。
5日間にわたるプログラムを終え、FIFAのRyser氏は「これまで行ってきたコースの中でもプログラムのマネジメント含め、間違いなく世界チャンピオン。その日に学んだことを必ず次の日に実践していた。学ぶ姿勢を含めて一歩一歩の積み重ねで素晴らしい機会になった」と振り返りました。そしてBasir氏からは「ここから先は実際のコーチングコースに入っていく。トライし続けることで全国の指導者たちに素晴らしい経験を与えてほしいし、日常でも実践していってもらいたい」とメッセージが送られました。
シニアチューターとして参加したJFAの指導者養成事業を統括する西川誠太JFA指導者養成ダイレクターは、「クリエイティブな選手を育成するために、指導者、そしてわれわれチューターがもっとクリエイティブになっていく必要がある。今回のプログラムを通してさまざまなトライができた。地域にも同じ志を持つ仲間を増やして、引き続き一緒に取り組んでいきましょう」と呼び掛けました。
本コースは今後、オンラインメンタリングとオンサイトメンタリングが予定されており、それらを経てコース修了となります。
FIFAコメント
Mohamed Basirさん(FIFA コーチング・ディベロップメント・シニアマネージャー)
これまでと同様に、FIFA/JFA Coach Educators’ Development Pathway Programmeの企画、運営、実施は大変素晴らしいものでした。これは小野剛氏率いるJFAのシニアコーチ・エデュケーター、サポートスタッフ、参加コーチ・エデュケーター、事務局からなるJFAチームとの緊密な協力関係の賜物です。
FIFA Coaching Development Departmentチームから多大なサポートを受けながら、AFC在任中の2003年以来、そして現在はFIFAコーチ・エデュケーター開発者として、加盟協会におけるフットボール・エデュケーションを強化するために、日本との緊密な協力関係を継続できたことを大変嬉しく思っています。
組織面だけでなく、参加したコーチ・エデュケーターのパフォーマンスと貢献は傑出しており、素晴らしいコミットメントを示し、オンサイトコースの課題に立ち向かいました。また、JFAはシニアコーチ・エデュケーターの参加を最大化するため、彼らを戦略的にコースに参加させました。
JFAの今後のメンタリングフェーズでの成功を祈るとともに、またのコラボレーションを楽しみにしています。
JFAコメント
小野剛さん(JFA技術委員会 副技術委員長)
“Give every talent a chance(全ての才能にチャンスを!)“、これは現在FIFAがサッカー発展の主軸としている合言葉で、そのための柱の1つが、今回のこのプログラムです。
指導者養成に関しては、我々も古くから築き上げブラッシュアップしてきたものがありますが、才能を引き出すことのできる指導者を育てることのできる「コーチ・エデュケーターの育成」となると、手探りのことばかりというのが正直なところです。その結果、ついついコンテンツの落とし込みになりがちだったところを、「コーチ・エデュケーターにはどのような能力が必要で、それをどのように高めていくか」という点で、実践を繰り返しながら、ともに学んでいける今回の機会は非常に貴重な経験でした。
コースは我々JFAのシニア・チューターがFIFAチームと協力して、各地域から選ばれた20人のポテンシャルチューターたちを育てていくという2段階の非常にユニークな構成で、それとともに、常にみんなが参加しながら創り上げていくという「アクティブ・ラーニング」の手法もとても刺激的であったと思います。
今後は、これら学んだことをどれだけ多くの方と共有していけるかが、我々参加者の課題だと認識しています。
全国から参加して研鑽に励んでいただいた参加者の方々、そして我々に貴重な学びの機会を与えてくださったBrancoさん、Basirさん、Danyさんに心から感謝したいと思います。
参加者コメント
畠山正樹さん(北海道FA/市立札幌開成中等教育学校)
学習者中心(Learner's centered )。実際のC級コースでは、参加者1人1人が指導者としての「ありたき姿」を目指します。チューターは彼らの成長の鍵を握っています。本研修では、成長を促す効果的な成人学習について、チューター間でロールプレイをしながら協働的に学び合うことができました。今後も「学習者中心」を胸に、日本の指導者養成制度が選手・サッカーファミリーの幸せ(well-being)に還元されるよう、地域の47FAチューターと共に活動していきます。最後に、世界基準のチューター育成プログラムへ参加させてくださったFIFA/JFAならびにチューターの皆様に心より感謝いたします。
梨和実さん(広島県FA/サンフレッチェびんごジュニアユースF.C.)
まずこのような素晴らしいコースに参加させていただいたことを心より感謝申し上げます。そして、eラーニングから始まりオンラインコース、そしてオンサイトコースに至るまでに多くの尽力をされサポートしていただいたFIFA、JFA関係者の皆様に感謝いたします。
私自身にとって非常に学びの多い5日間となりました。緊張感のある中でオープニングとなりましたが、安心できる場の雰囲気作り、工夫された多くのアクティビティのおかげで緊張感が良い意味で薄れていきました。
そして与えられた課題にチャレンジしていく中で自分自身の思考の変化にも気づきました。どのように課題をクリアしていくかという自分へ向いていた矢印から、この課題を活用してどのように対象者に気づきを与えられるか、成長してもらえるのか、という思考に変化していきました。学習者中心、双方向性などのキーワードが自分の中で腹落ちしていく感覚がありました。
正直、今回の学びの全てをまだまだ整理、理解できていません。ここから改めて大人の学びにチャレンジしていきたいと思います。NEXT TRY!
阿部麗さん(JFA/活水女子大学)
今回のコースを通じて、素晴らしい講師陣、コーチ、スタッフの皆さまと一緒に、濃く、熱い貴重な時間を共有させて頂いたことに心より感謝いたします。
大人の学びをベースに、双方向かつ主体的に学ぶことのできる環境の中で、WhatではなくHowにチャレンジする皆さんの姿から、良い刺激をたくさんいただきました。
今回の学びと繋がりを大切にしながら、地域、FAの指導者の方々、その先の選手のために尽力していきたいと思います。