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メディカル通信

第6回 Jリーグと整形外科医/JFAスポーツ医学委員会 福岡 重雄―

 現在、競技スポーツと整形外科医は様々な形で関係を持っていますが、本業の片手間ではやはり限界があります。十年ほど前からプロスポーツクラブと専属契約を結んで常駐ドクターとして関わるというケースが、J リーグのいくつかのチームで始まりました。わたくしもその一人です。その業務としては、外傷と障害の治療という点では通常の医師と全く変わりありませんが、その数はさほど多くなく、むしろ仕事の主体は障害の予防と言うことになります。フィジカルコンディションを上げるためには、どのような形にせよ練習の量を増やす必要がありますが、それによって肉離れが多発したり、過労性の障害(疲労骨折など)が増えたりすると、全体としてチーム力は減少します。一方では十分に持久走をしないと肉離れが増えるという見方もあります。この相反する命題を監督、フィジィカルコーチと共同で克服することが要求されます。また、選手の生活指導までは無理としても、食事の内容の指導とその管理、ひいては体脂肪率を主な指標とした体型の管理なども重要な仕事です。

 プロサッカーチームのドクターの仕事は、練習前の選手のチェックから始まります。監督によって練習開始時間は違いますが、通常は朝10時からの練習ですので、約1時間前の9時頃にクラブハウスのトレーナー室に行き、練習の前に問題のある選手のチェックをします。少しでも問題のある選手は練習開始の1時間前には来ることになっています。問題のない選手は15分前に来ればよいことになっています。その他トレーナーから選手についての様々な情報を報告してもらいます。

 そして約30分前には監督に選手の状態についてブリーフィングを行います。 具体的には、フルに全体練習をするグループ、一部練習は合流するが別メニューで調整が必要なグループそして完全にリハビリ対照のグループに分けます。それから監督がその日の練習メニューを決めます。

 試合の前日には18名の試合出場メンバーの選定を行います。故障選手についての意見交換をして、ドクターストップ以外の選手については痛みの具合とゲームでのパフォーマンスを総合的に考慮して、監督と選手自身が直接試合出場について話し合います。監督もしくは選手のどちらかが必要と判断したら、その場にドクターが同席します。監督としては痛くても是非とも出場して欲しい場合もあり、選手としては選手寿命を考えて休みたい場合もあります。しかし一方では選手の年棒には出場給というものがあって試合に出られなければそれだけ収入が減ると言うことになります。実際には監督が無理してでも出てもらいたい場合や、選手は出たいけど監督としては他の選手をむしろ使いたい場合などいろいろですが、いずれにしてもドクターの意見を理由付けにして選定すると言うことになります。つまるところこの場合のドクターの役割はプロフェッショナルである監督と選手との間の本来は中立であるべきだが、その後の選手生命に関わらない痛みの場合には、監督が痛みのためにパフォーマンスが落ちても出場して欲しいと考えている選手については、実際はやや監督よりの調停役ということになります。

 ケガに対する応急処置はトレーナーで十分であり私の出る幕はほとんどありません。スタッフは理学療法士2名・日体協アスティックトレーナー1名(鍼灸資格)・トレーナー2名(鍼灸資格)で、トレーナーはマッサージバランス訓練などで日頃からの選手の体調管理を主に行っています。一方ドクターと理学療法士は、長期離脱組(リハビリ組)の病院でのメディカルリハビリテーションとクラブハウスで行うアスレティックリハビリテーションのスムーズな移行に心がけています。ドクターが正確な診断を下して、治療プログラムを決めます。手術適応がある場合には速やかに手術を行います。その後は、アイシング、交代浴を治療の基本にして、必要ならば薬物治療も併用します。リハビリとしては疲労性炎症、足関節靱帯損傷、肉離れなどの定型的なもの加えて近年は骨盤周囲のコアな筋力整訓練を行うようになっています。

2011年3月
福岡重雄 (清水エスパルス)

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