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リスペクトの体現 フェアプレーは日本の誇り 前編
2018年08月30日
公益財団法人日本サッカー協会は、サッカーやスポーツの現場で顕在化する様々な差別や暴力に断固反対し、差別や暴力のない世界をつくるべく様々な取組みを行っています。
本年も、「JFAリスペクトフェアプレーデイズ2018」を9月1日(土)から10日(月)まで設置し、期間中はさまざまな活動を通して、リスペクト(大切に思うこと)、フェアプレー精神を共有し、差別や暴力に断固反対するメッセージを広く伝えていきます。
今回は2017年9月2日に行われたリスペクトF.C. JAPANシンポジウムの冒頭に登壇し、自らの経験を基に「大切に思うこと」への熱い思いを語った田嶋幸三会長の基調講演の前編をご紹介します。
サッカーの面白さは勝ち負けだけではない
リスペクトF.C.JAPANシンポジウムが継続して開催されていること、多くの方にご来場いただいていることを、日本サッカーの宝のように思っています。
試合に勝つことは重要です。しかし、それ以上に大切なものがあるということを認識しなければなりません。その考えを広めていくことがスポーツの価値を高めることにつながります。これをサッカーのみならず、あらゆるスポーツ、そして社会に浸透させていきたい。ぜひ、皆さんと共有できればと思っています。
JFAとJリーグは2008年にリスペクトプロジェクトを立ち上げました。私たちは「リスペクト大切に思うこと」というスローガンのもとにこのプロジェクトを展開しています。仲間、相手、指導者、審判員、サポーター、運営者、サッカーそのもの、ルールを順守すること、施設や用具を大切にすることなど、全てが対象です。
日本代表が試合に勝てば、ファンや登録者が増えるという話ではありません。本当にサッカーファミリーを増やそうというのなら、「スポーツを楽しむことは素晴らしい」とみんなに認識してもらう必要がある。そうでないと応援してもらえないでしょう。裏を返すと、サッカーの面白さは、勝ち負けだけではないということ。だからこそ、老若男女の支持を集めているのだと思います。
いい行動とは何か理解が進んでいる
2003年、JFAはグリーンカードを導入しました。当時、UEFA(欧州サッカー連盟)の技術委員長だったアンディ・ロクスブルクさんが、フィンランドのサッカー界に浸透しているこの取り組みを紹介してくれたことがきっかけです。日本にレッドカードとイエローカードが広がったのは、1993年にJリーグが誕生したとき。この2枚のカードは警告や罰を与えるツールということで一般に知れ渡りました。今度はポジティブな評価をしようというアイデアのもとにグリーンカードを取り入れました。
一家に一枚、いや数枚はグリーンカードを持ってほしいと願っていたのですが、簡単には浸透しませんでした。ピッチ上でも同じです。U-12年代の大会でグリーンカードを採用し始めたときは、主審もいつ選手を褒めればよいか分からず、なかなか出せなかった。それでも、ここ最近は1試合に10~20枚のグリーンカードが示されるようになりました。「大切に思うこと」の重要性を伝えるのには時間がかかりますが、続けてきてよかったと思っています。
常に褒めて、ポジティブな評価をしてあげる。良い行動とは何なのか、みんなが等しく理解することは素晴らしいことです。相手がけがをしているとき、ラインの外にボールを出してあげることもそうです。サッカーを知らない人が見たら、この行為の意味が分からないかもしれませんが、今ではそういう人も減っています。リスペクトすることの大切さが共有された証しではないでしょうか。
われわれがモデルにしているUEFAには、EURO(欧州サッカー選手権)やUEFAチャンピオンズリーグという大会があります。年間2000億円近くの放映権料が得られる大会です。その大会の広告看板、つまり観客から見て最も目立つところにはスポンサーの広告ではなく、「Respect」の看板が出されています。ヨーロッパの人たちは、スポーツの価値を高めるには何が必要かを理解しているからです。日本サッカー界がUEFA同様の価値観を持つようになれたらと思いますし、そうなるように事業を進めていきます。
※本記事はJFAnews2017年10月情報号(No.402)に掲載されたものです。
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