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【最後の青春ドラマ】2度の日本一を経験した選手権は「人生の宝物」~第101回全国高校サッカー選手権大会・平山相太(筑波大学コーチ)後編
2022年12月27日
第101回全国高校サッカー選手権大会が12月28日(水)に開幕します。高校年代の大舞台に立った選手はどのような青春時代を過ごしてきたのか。ここでは国見高校で3大会連続出場を果たし、2度の優勝を経験した平山相太さん(現、筑波大学コーチ)の高校時代のストーリーをお届けします。
○オンライン取材日:2022年12月14日
大会得点王も準優勝も「喜びは全くなかった」
サッカープレーヤーとしてだけでなく、人間としても成長することを目指して国見高校に入学した平山相太。1年時からAチームのレギュラーを務めると、第80回全国高校サッカー選手権大会では準決勝で1ゴールを挙げるなど才能の片鱗を見せつけ、優勝メンバーの一員になった。
迎えた2年時も国見は当然のように第81回大会の選手権に出場し、平山のゴール量産もあって決勝へと駒を進めた。しかし市立船橋高校との決勝戦は、平山にとっては苦い記憶として残ることとなる。
準決勝までの4試合で7ゴールを挙げていた平山だったが、決勝では市立船橋の堅守を前に沈黙した。「相手の4バックの選手はみんな競り合いに強く、さらにボランチもプレスバックしてくるので、何もできないな、と思いながらプレーしていました」と平山は振り返る。相手のハードマークを受けながらポストプレーやラストパスの供給に従事し、シュートを放つ場面もあったものの、当人の感覚は「何もできなかった」。チームも後半にロングシュートを決められて0-1で敗れ、大久保嘉人(元サッカー日本代表)の代から続いていた選手権3連覇を逃した。
平山自身は7ゴールで大会得点王となったが、「喜びは全くなかった」という。連覇を逃して「やってしまった……」という思い、そして今後、激しさを増すことが確実視されるトレーニングへの懸念が敗戦の悔しさを上回るほどだったという。
最高学年となり、さまざまな意味でチームをけん引する立場になった平山は、並々ならぬ決意でこの1年を過ごした。今まで以上のハードトレーニングを乗り越え、心身をさらに強化した。「優勝は義務。優勝以外は何の意味もないという感覚だった」という選手権に向け、最高潮のモチベーションを維持したまま突き進んだ。
夏頃には筑波大学への進学を決めて将来への不安を払拭し、11月にはFIFAワールドユース選手権(現、FIFA U-20ワールドカップ)に出場して2ゴールを挙げる活躍を見せて自信をさらに深めた。
青春時代を語れる仲間と2度目の選手権制覇
そして迎えた第82回の選手権で、平山は圧倒的なパフォーマンスを見せる。2回戦の水戸商業高校戦(2-0)で2得点、3回戦の広島皆実高校戦(2-1)、準々決勝の四日市中央工業高校戦(1-0)で1得点ずつを挙げ、準決勝の滝川第二高校戦(4-0)ではハットトリックを達成。相手の2年生FW岡崎慎司(現、シント=トロイデンVV/ベルギー)が「FWとしてのレベルが2段階ぐらい違った」と脱帽するほどの実力差を見せつけ、自身3年連続の決勝進出を果たした。
1年時、2年時は味方のクロスボールにヘディングで合わせる形のゴールが多かったが、この年は胸トラップからの巧みな足技で相手をかわしたり、緩急をつけたドリブルで抜き去ったりと、得点パターンも多様化している。本人によると「中学時代はそういうタイプのプレーヤーで、ヘディングは国見に進んでから磨いた」そうで、本来の武器と新たな武器をコツコツと磨いたことにより、平山はより完成度の高いストライカーへと成長を遂げたのだろう。
準決勝までに7ゴールを挙げ、選手権での通算得点数は「15」に。市立船橋時代の北嶋秀朗が記録した通算最多得点記録「16」にあと1点と迫った。平山も当然、記録のことは意識していたようで、「記録を塗り替えるにはあと2点、取らなければいけないんだな、と思っていた」という。
決勝は筑陽学園高校との九州勢対決。国見は終始、主導権を握って次々にゴールを奪い、そのなかで平山も躍動する。「試合が始まってからは国見のサッカーを実践するための任務を遂行することに集中していた」というが、前半と後半に1点ずつを奪い、通算得点記録を更新する。チームも6-0と快勝し、見事に前年のリベンジを果たしたのだった。
試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、平山の目からは涙があふれ出てきた。「何の感情なのかは分からない」とは本人の談。優勝のうれしさか、リベンジを果たした安堵か、3年間をやり切った達成感か、はたまた「もう走らなくていいんだ」という喜びか――。大記録を達成する一方、悔しさも味わった平山の選手権は、さまざまな感情が入り混じった涙とともに幕を閉じたのだった。
高校時代を振り返り、平山は「生まれ変わって高校に行くとしたら、違うところに行くかもしれない」と苦笑いする。一方で「仲間たちと寮でご飯を食べてお風呂に入って寝て、楽しいことも辛いことも一緒に経験した。青春時代を語れる仲間がたくさんいるのは国見に行ったからこそだと思います」とも回顧している。国見でサッカーに取り組んだからこそ得られたものも、かなり多いと言えるだろう。
国見のエースストライカーとして3年連続で選手権の決勝まで進み、通算17得点という大記録を打ち立てた“怪物”平山相太。選手権を「人生の宝物」と表現する一方、自身の記録については「記録は破られるものなので、いつかすごいFWが現れて塗り替えてくれると思う」と語る。「選手権に出場して得点王になって、この記録も更新して、ワールドカップで活躍するようなFWが出てきてほしい」。平山を超える“怪物”は、いつ現れるのだろうか。
第101回全国高校サッカー選手権大会
大会期間:2022/12/28(水)~2023/1/9(月・祝)
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