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【最後の青春ドラマ】仲間と過ごした日々は「私の青春」~JFA 全日本U-18 女子サッカー選手権大会・林穂之香(ウェストハム・ユナイテッド)後編
2022年12月29日
JFA 第26回全日本U-18 女子サッカー選手権大会が2023年1月3日(火)に開幕します。U-18年代の女子日本一を決する大会に出場した選手はどのような青春時代を過ごしてきたのか。ここではなでしこジャパン(日本女子代表)でも活躍する林穂之香選手のアカデミー時代のストーリーをお届けします。
○オンライン取材日:2022年12月13日
連覇を目指して最後の大会へ
京都府宇治市で生まれ育ち、中学進学のタイミングとなる2011年にセレッソ大阪レディースU-15(2012年にセレッソ大阪レディース、2013年にセレッソ大阪堺レディースに改称)の一員となった林穂之香。2年次には下部組織にあたるセレッソ大阪堺ガールズの一員として第19回全日本女子ユース(U-18)サッカー選手権大会(現、JFA 全日本U-18 女子サッカー選手権大会)に出場し、チームは初出場初優勝の快挙を成し遂げた。
普段、チャレンジリーグ(2部)やチャレンジリーグWEST(3部)など成人女子のカテゴリーで戦っていただけに、「同年代のチームには負けられない」という強い思いで臨んでいた。その言葉どおり大差をつけて勝利する試合もあったが、準決勝の浦和レッズレディースユース(現、三菱重工浦和レッズレディースユース)戦、そして決勝の日テレ・メニーナ(現、日テレ・東京ヴェルディメニーナ)戦は「自分たちが先制できたから流れをつかんで勝つことができましたが、負けていてもおかしくなかった」ほど苦戦を強いられたという。
「優勝したのはもちろんすごくうれしかった」と振り返る一方、「個人的には実力差を感じた」という林は2016年、高校生活最後の1年間でその差を着実に埋めていった。C大阪堺レディースは前年度にチャレンジリーグWESTで優勝し、プレーオフでも2位となって昇格を決めたため、この年はそれまで以上にレベルの高いなでしこリーグ2部が主戦場となった。「強い相手に食らいついて、それに引っ張られるように自分たちのレベルが上がっていったと思います」という充実の日々だった。
また、この年にはU-20日本女子代表にも選出され、11月にはパプアニューギニアで行われたFIFA U-20女子ワールドカップに出場した。林は「うまい選手のプレーを体感することができて新しい世界が広がりましたし、自分にとって得るものが大きかったです」と語っている。
年が明けて2017年1月、林はC大阪堺ガールズのキャプテンとして全日本女子ユースの第20回大会に挑んだ。「最後の大会でしたし、チーム内では『絶対に連覇しよう』という空気が自然にでき上がっていました」と回顧する林だが、彼女自身は「けっこう緊張するタイプ」のため、多少ナーバスになっている部分があった。それでも、大会を楽しもう、連覇にチャレンジしようと意気込むチームメートたちの雰囲気によって彼女の緊張もほぐれ、気負うことなく大会に挑むことができたという。
初戦はヴィクサーレ沖縄FCナビィータに16-0、2回戦はアルビレックス新潟レディースU-18に6-0とそれぞれ大勝。林も2試合連続ゴールを決めている。準決勝はジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18にやや苦戦したものの、2-1と勝利を収めて決勝へ。相手は前年、準決勝で下した浦和レッズレディースユースだった。
2度目の決勝で成長を実感
全日本U-18 女子サッカー選手権は、2012年度の第16回大会から大阪府堺市のJ-GREEN堺で行われている。C大阪堺ガールズにとってはまさにホームだ。この決勝戦も、C大阪のファン・サポーターやアカデミーの下の年代の選手たち、アカデミーOGなどが多く会場に足を運び、スタンドから熱い声援を送っていた。
「大勢の方が見に来てくれたのでホーム感がすごくあって力をもらいましたし、みんなの目の前で優勝したいという気持ちが強まりました」と林が振り返るように、C大阪堺ガールズは前年度、2-1と苦戦した相手に実力差を見せつける。23分に先制に成功すると、30分には林のCKから宝田沙織(現、リンシェーピングFC/スウェーデン)がヘディングシュートを決めてリードを広げる。主導権を握ったC大阪堺ガールズは後半にも2点を追加し、4-0の快勝で見事、連覇を達成したのである。
大会を通じて4試合で28ゴールを奪い、喫した失点はわずかに1。「負けていてもおかしくなかった」という前年度から大きく成長できたのは、なでしこ2部でシーズンを戦い抜いたことと無関係ではないと林は分析する。
「なでしこ2部で1年間やってきましたが、リーグ戦を戦っている間は自分たちが成長していることをはっきり自覚できていませんでした。この大会で同年代のチームと戦うことでそれが目に見えて分かりました。2年生のときより3年生のときのほうが主導権を握れましたし、前からのプレスもハマって、自分たちのプレーがより洗練されている感覚がありました」
自分たちの成長を実感し、自信を持って戦いながらつかんだ連覇という栄誉。林は表彰式でトロフィーを受け取り、それを掲げた瞬間をこう振り返っている。
「トロフィーを持ってみんなで記念撮影している瞬間は最高でした。日々のトレーニングは厳しかったですが、こういう大会で優勝するために頑張ってきた部分もありましたし、それを自分たちの力でつかみ取ることができたのは、チームメートたちと共有できる素敵な思い出です。仲間たちと過ごしてきた日々がそこに詰め込まれているような感覚でした」
林はC大阪堺ガールズで過ごした日々を「私の青春」と語る。長時間かけてグラウンドに通い、厳しいトレーニングに耐え、ハイレベルな相手と戦った日々。そのなかでチームメートたちと何気ない会話を交わし、時には真剣に語らいながら多くの時間を共有した。その集大成とも言える全日本女子ユースもまた、忘れがたい思い出だったようだ。
「ノックアウト方式特有の緊張感やワクワク感がありましたし、全部がうまくいったわけではなかったですけど、努力してきたことが連覇という目に見える結果につながったことで自信につながりましたし、短期間の一発勝負のなかでギュッと力強くまとまって、チーム力やチームワークを発揮することができて、自分たちを成長させてくれた大会でした」
大会期間:2023年1月3日(火)~2023年1月9日(月・祝)
大会会場:大阪府/J-GREEN堺