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【国立の名シーン】横浜フリューゲルス、最後の試合(1999年1月1日/第78回天皇杯全日本サッカー選手権 決勝)

2019年12月16日

【国立の名シーン】横浜フリューゲルス、最後の試合(1999年1月1日/第78回天皇杯全日本サッカー選手権 決勝)

天皇杯 JFA 第99回全日本サッカー選手権大会の決勝が2020年1月1日(水・祝)に、新しく生まれ変わった国立競技場で開催されます。ここでは元サッカー選手や記者といったサッカーファミリーの皆さんに「私が思う国立の名シーン」を振り返ってもらいます。

1999年1月1日/第78回天皇杯全日本サッカー選手権 決勝 横浜フリューゲルス vs 清水エスパルス
横浜フリューゲルス、最後の試合
山口 素弘(名古屋グランパス執行役員フットボール統括兼アカデミーダイレクター)

僕は国立競技場で行われた天皇杯で3度優勝していますが、やはり横浜フリューゲルス最後の試合が一番印象に残っています。天皇杯自体、負けたら終わりのトーナメント方式ですが、あの大会は負けたらチームが消滅するという状況でした。勝ち続けることで正直、まだ何か延命する可能性があるのではないか、自分たちが何かを残さないといけない、と難しいモチベーションの中で決勝戦にたどり着きました。

あの時のフリューゲルスはメンバーも若かったし、前年も決勝戦まで勝ち上がって鹿島アントラーズに敗れていましたから、実力的にも高かったと思います。決勝の朝は、朝食やミーティングの時にゲルト・エンゲルス監督かセザール・サンパイオがビデオを回していて、みんな「ハッピーニューイヤー!」みたいな感じで騒いでいたことを覚えています。いつも和気あいあいとしていた良いチームでした。

決勝は同期入団の薩川了洋が出場停止で「どうして最後に一緒にできないんだよ」と言ったら、「まぁ、しょうがねぇよ」と彼はいつもの調子で言っていましたが、薩川がいない分、前半は多少我慢しないといけないなと思っていました。決勝の相手だった清水エスパルスも勢いがあり完成度の高いチームで、先制された時は素直に「すごいな」と感じました。

前半のうちに同点にしますが、僕のラストパスの前に永井秀樹とワンツーをしています。僕もそうだし永井もそういうプレーが好きだったので絶対にパスが戻ってくるという確信がありました。戻ってきたときにはDFの裏にボールを落としたら面白いと思っていて、そこに久保山由清が走り込んでいました。久保山はそれまであまり得点を取っていなくて、「お前そろそろ点を取れよ」と話をしていたところだったので、余計に良い流れで後半に入りましたね。

その後、勝ち越しましたけど、本当にこのチームのサッカーが楽しかったし、「延長戦になったらもうちょっとできる。それも面白いかな」とか、変なことを考えながらプレーしていたことを覚えています。

そして、試合終了のホイッスルが鳴った瞬間に必死でボールを取りに行きました。誰かが後ろから抱きついてきたけど誰か分からないくらいでした。後から薩川だと分かりましたけど、このボールは誰にも渡したくなかった。当然試合中に何個もボールを使っていますが、最後にみんなが使っていたボールはあのボールだけ。今でも家に置いてあります。でも日付とか何も書いてないですし、いま見たらただの天皇杯のボールですね(笑)。でも僕にとってはどんなメダルよりも大切な“証”です。

表彰台からの景色も忘れがたい瞬間です。実はJリーグ開幕戦も対戦相手は清水エスパルスで、その時は三ツ沢球技場でホームゲームだったのですが、2対8くらいの割合でエスパルスサポーターの方が多くいました。それが国立で最後の試合は6対4くらいでフリューゲルスファンの方が多かった。もちろん最後ということもありますけど、「こんなにファンが増えたんだな」と、圧巻の風景でした。

今の時代だったらフリューゲルスを助けてくれる企業があったのかもしれません。でも、時代だからしょうがない。あの2カ月は、密室で決められたことがどんどん進んでいって、怒ったり、喜んだり、悲しんだり、感情の起伏が大きく揺れ動きました。でも、みんながいろいろな感情をぶつけ合って本気で前に進んでいった。それはある意味みんなの財産になっていると思います。こうした悲しい歴史があったことを伝えていかないといけません。

今回は新しい国立競技場になって最初の天皇杯決勝戦です。国立競技場の第一歩として必ず歴史に残る試合になると思うので、選手にはそういう重みを受け止めながらプレーしてほしいですね。今後、国立競技場が改築されるなんてほぼないことでしょう。元日にサッカーができて、しかもタイトルが懸かっているのは、世界でたぶんここだけ。永久に歴史に残ると思うので、見ている人の記憶に残るような戦いを期待しています。

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