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沖縄県で初となるスポーツ救命ライセンス講習会が開催
2019年09月03日
日本サッカー協会(JFA)は、ピッチ上の選手の安全を守ることを目的とした「スポーツ救命ライセンス講習会」を8月18日(日)、沖縄県浦添市の浦添総合病院で開催しました。
2017年から全国各地で実施されている「スポーツ救命ライセンス講習会」ですが、沖縄での開催は今回が初めて。当日は、(一社)沖縄県サッカー協会医学委員会の協力のもと、スポーツ救命プロジェクトメンバーの古家信介先生(大阪市立総合医療センター救命救急センター)、福島理文先生(順天堂大学 循環器内科)や沖縄県サッカー協会医学委員長の大城朋之先生、プロスポーツチームのチームドクターを務める浦添総合病院の石塚光太郎先生、などが講師となり、医師や看護師、柔道整復師など医療分野に携わる13名の受講生を対象に実施しました。
講習会ではピッチ上での選手の安全を守り、不測の事態に備えるため心肺蘇生法(CPR)や人形を使った自動体外式除細動器(AED)の正しい使用方法を実技で修得。またスポーツの現場で起こり得る可能性の高い脳振盪(のうしんとう)や熱中症、アナフィラキシー、窒息などによる応急処置法について講義が行われました。
そして全身を固定し搬送する「バックボード」と呼ばれる担架を使い、講師の指示に従いながら受講者が声を掛け合って安静に搬送するための方法を学びました。実技は搬送する役と患者役に分かれて実践し、仰向け、うつ伏せで倒れている場合や異なる痛みの箇所での搬送法をシミュレーションし、全員が同じことを考えて行動することが人命救助で大事であるということを身をもって体験してもらいました。
この講習会は、(公財)日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー資格を更新する際に必要とされるBasic Life Support(=BLS ※一次救命処置)資格取得のための講習会として認められており、今回参加した受講生は実技と筆記試験を経て、全員合格となりました。
講師コメント
石塚光太郎 さん(浦添総合病院 医師/FC琉球チームドクター)
日本のスポーツドクターと言われる医師の多くは整形外科を専門としています。理学療法士や柔道整復師、アスレティックトレーナーの方々も基本的には運動器分野のことをメインに習ってきているのですが、実際の現場で命が危ない状況になったときの対処法を専門的にしっかり系統立てて習ったことがある人はそんなに多くはないと思われます。
心肺蘇生法のコースは多くの団体でコース化されており、一般化され、修了者もスポーツ現場に増えています。しかしスポーツ現場に即した心肺蘇生の他に、外傷対応や熱中症、アナフィラキシーなどの救急疾患の初期治療までを含んでコース化している団体は国内ではありません。
その中で日本サッカー協会からスポーツ救命ライセンス講習会が出来たため、是非とも県内での開催をと考え、今回、県内第1回を開催することが出来きました。
古家先生や福島先生、沖縄県サッカー協会医学委員長の大城先生をはじめ沖縄県サッカー協会の担当者、ならびに会場となった浦添総合病院の関係者、そしてお手伝いに来ていただいたインストラクターの方々、本当に多くの人にお世話になり心より感謝申し上げます。今回の参加者は皆様現場で既に活躍されている方々ばかりであり、とても会がスムーズに進んだ印象です。
沖縄県には様々なスポーツが根付いており、今後はサッカー協会以外のスポーツ団体やスポーツ運営の方々、学校教員など多くの人々がこの講習会を受講し、もしもの時の初期対応が出来る人が1人でも多く現場におり、スポーツ現場の安全を守ることに寄与できればと思います。
受講生コメント
上原史成さん(ハートライフ病院 整形外科 医師/FC琉球チームドクター)
以前BLSの講習を受けたことがあったのですが、あらためて知識の整理をすることができました。講義の内容も充実していて、講師の皆さんも話が上手くポイントも抑えられており、短い時間でしたが分かりやすく感じました。実際に参加して良かったのが搬送。普段はバックボードの固定を外す側なんですが、締めるのはほとんどやったことがなかったので実践できてためになりました。あと搬送では患者の役もさせていただいたのですが、なかなか運ばれる側になることは無いので貴重な経験ができましたし、当事者目線に立った時に初めて分かることもあったので良かったです。こういう経験を積むことで一人でも命が救われると思いますし、今回受けたことをどんどん広めていくことも大事だと感じています。
上間美香さん(すながわ内科クリニック 理学療法士)
沖縄県サッカー協会の勉強会に月に1回行っていて、それに参加したときに石塚先生からこの会のお話をいただき参加しました。一般的なことから先生たちがこれまで経験されたことまで具体的に聞かせてもらい勉強になりました。私も何度か救急の講習会は受けていたのですが、今回救急救命士の方もいて、現場で起こったことを実際に聞けたり、あとは実践しながらさまざまな状況での判断力も問われ、とても勉強になりました。実際にバックボードを使った搬送では、目で見ているのとやっているとでは全然違っていて、触ってみてここの操作が難しかったり、患者さんのここを動かしたら危ないなというところがあって、そこを直に感じることができました。今後スポーツの現場に立って緊急の事態に遭遇した際は少しでも手助けできればと思います。
石川大輔さん(バークレー整形外科スポーツクリニック/理学療法士)
これまでにも救命講習を受講した経験がありますが、サッカー特有の事例を実際の動画やメディア情報を提示してもらうことで、現場をイメージしやすい内容となっていました。また、人命を左右する現場を想像すると毎回緊張感を持って取り組んでいかなければならないと、身の引き締まる思いにもなりました。所々忘れてしまっていた細かな部分や傷病者への配慮などを再確認でき、様々な事象をシミュレートすることの大事さや、現場に居合わせた人と協力、連携して処置にあたるためにはリーダーシップをとることも重要であると痛感しました。脳振盪(のうしんとう)に対する評価や対処については、SCAT5(脳振盪評価ツール)の紹介があり、プレー続行の可否や復帰までのプログラムについて細かくご教示いただきました。今回学んだことを今後も定期的に振り返り、改変されていく評価ツールなどの情報を逃さないように沖縄県サッカー協会のメンバーで協力していきたいと思います。今回このような機会を設けていただいた、JFAスポーツ救命プロジェクトメンバーの古家先生、福島先生をはじめ、スタッフの皆様ありがとうございました。