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第69回サッカードクターセミナー オンライン開催
2021年11月01日
全国の医師・歯科医師を対象としたサッカードクターセミナーが10月23日(土)、オンラインにて開催されました。
今回のセミナーでは、東京オリンピック・パラリンピック関連の話題を中心に、大会に参画したドクターらによる講義が行われました。「選手やその関係者を支援するためのスポーツ歯学」を東京医科歯科大学大学院総合研究科スポーツ歯学分野助教の中禮宏先生に、「聴覚障がい者サッカーのメディカルサポートの現状と課題」を筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター教授の中島幸則先生にご講演いただきました。整形外科の先生方が多く参加される本セミナーにとっては、どちらも普段なかなか聞くことのできない分野の貴重な話となりました。
その後は、東京オリンピックの男女日本代表の世話人ドクターである立石智彦先生、山口奈美先生からの帯同報告があり、国立スポーツ科学センター(JISS)スポーツ科学研究部研究員の中村真理子氏からは暑熱対策において科学的にチーム・選手をサポートした内容について説明がありました。特別講演は、JFAユース育成ダイレクターの影山雅永氏が「現場の求めるメディカル」をテーマに、これまで国内外のチームで指導をした経験から話をしました。
次回(第70回サッカードクターセミナー)は、2022年3月5日(土)~6日(日)に、大阪のJ-GREEN堺での集合形式を予定しています。
主催者コメント
森川嗣夫 先生(JFA医学委員会)
当初は千葉県FA担当で、高円宮記念JFA夢フィールドにて開催する予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、前回に引き続きオンラインでの開催となりました。これまで準備をしてくださった千葉県FAの皆様にはご迷惑をおかけしました。対面での開催が可能になった場合には、千葉県FA担当によりJFA夢フィールドでの開催を再度依頼したいと考えています
全国から約130名の受講者が参加し、中禮宏先生から「選手やその関係者を支援するためのスポーツ歯学」、中島幸則先生から「聴覚障がい者サッカーのメディカルサポートの現状と課題」、中村真理子先生から「競技現場における暑熱対策」の講義があり、特別講演としてJFAユース育成ダイレクターの影山雅永氏から「現場の求めるメディカル」という演題で熱い現場のお話がありました。また、立石智彦先生からU-24日本代表チームと、山口奈美先生からなでしこジャパンのオリンピック帯同報告をしていただきました。
今回も日本シグマックス株式会社、カールストルツ・エンドスコピー・ジャパン株式会社が協賛していただき、深謝いたします。
講師コメント
中禮宏 先生(東京医科歯科大学大学院歯学総合研究科)
今回、長くサッカードクターセミナーに参加させていただいていたことで、講演をする貴重な機会をいただきました。コロナ禍にもかかわらず主催していただいたJFA、協賛各社、関係各位にまず感謝します。
「選手やその関係者を支援するためのスポーツ歯学」には、現場に歯科医師がいないことも多いので、選手のみならずそれを支える関係者のお役に立ちたいという思いを込めました。内容は、「TOKYO 2020でのサッカーファミリーサポート(歯科)」から見えた、今後の派遣前準備でのポイントを手始めに、選手世代における一般的な「歯科疾患の管理(むし歯、親知らず、顎関節症)」と「現場での歯科外傷対応」に対する情報提供をさせていただきました。また、歯科関係に関するアンチ・ドーピング規程の変更(主な「口内炎」治療用の軟膏や貼付剤など)の再確認と、審判員へのアンケート調査に基づく「審判員の給水に積極的にご協力を!」という個人的な思いも追加させていただきました。
Web開催で多くの参加があり、より多くの先生にお伝え出来たかなという思いとともに、次のJ-GREEN堺では直接お会いしてお話しできることを願っています。
受講者コメント
兵頭康次郎 先生(筑波大学整形外科)
前回に引き続きオンライン開催となった第69回サッカードクターセミナーに参加させていただきました。
中禮宏先生のご講演では、実際に起きた時に困る歯科口腔関連の外傷での対応を学ばせていただきました。中島幸則先生のご講演では、今まで正確に理解していなかった聴覚障がい者サッカーについて、改めて勉強させていただきました。立石智彦先生と山口奈美先生、そして中村真理子先生からは、おそらく最も特殊な環境下で行われたオリンピックの帯同報告をお聞きしました。コロナ対策を含めて、これまで以上に大変なメディカルサポートだったことが理解でき、参考にさせていただくとともに敬意を表します。
そして特別公演の影山雅永氏からは、「現場の求めるメディカル」というタイトルでお話をいただきました。「こう思いますが、最後は監督が決めてくださいという言葉は嫌いです」「信頼は一度失うと取り戻すことは短期間の遠征では不可能」、その他たくさんの現場のダイレクトに感じていることを聞くことができました。改めてチームドクターの役割と責任を再考させていただきました。
今回はオンライン開催でしたが、移動などの拘束が無く、他では聞くことができない講演を聴講でき、サッカードクターとして成長できる機会があることは本当に貴重だと実感しました。今後も開催方式で難渋すると思いますが、選択肢の一つに入れていただければ幸いです。一方、これまでの対面でのディスカッションや、普段講演会では質問しづらい内容を懇親会で直接聞き、実技でのサッカーを通して、素晴らしいネットワークを構築できる場が無いことが本当に残念です。そのような形でサッカードクターセミナーを再開できることを切に願っています。
渥美覚 先生(JCHO京都鞍馬口医療センター)
今回のセミナーは千葉県サッカー協会医学委員会のご尽力で高円宮記念JFA夢フィールドでの開催予定でしたが、コロナ禍の影響からオンライン開催へ変更となりました。この変更にもかかわらず、ほぼ予定通りの内容で企画いただいた講義や帯同報告はどれも興味深い内容でした。
中村先生より暑熱対策としてアイスバスやアイススラリーだけでなく、手掌前腕冷却やアイスベストといった手法の有効性を臨床データに基づいてご講義いただきました。私が関わっているチームにもこれらの手法をぜひ取り入れたいと思いました。影山氏からはメディカルの選手との距離感や指導者の一員としての役割などについて現場目線でご講演頂き、その考え方に共感し感銘を受けました。JFAのユース育成ダイレクターより直接このような話を伺えたことは非常に有意義でした。
現地開催であれば懇親会や実技を通して、同じ志を持った先生方と交流し、代表ドクターや地域を超えた先輩からいただくアドバイスは心に響き、刺激的で本セミナーの楽しみのひとつですが、これはまた今度の機会としたいと思います。オンライン開催でしたが、日本サッカー界に私ができることをこれからも積み重ねていきたいという思いを深めることができました。