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チェンジメーカー 第13回 丸子修司(まるこ・しゅうじ) 特定非営利活動法人廿日市(はつかいち)スポーツクラブ理事長

2012年09月19日

チェンジメーカー 第13回 丸子修司(まるこ・しゅうじ) 特定非営利活動法人廿日市(はつかいち)スポーツクラブ理事長

Profile

丸子 修司 / MARUKO Syuji さん
特定非営利活動法人廿日市スポーツクラブ理事長
2005年度SMC本講座修了(2期生)

1959年4月、広島県生まれ。
広島県立国泰寺高校卒業後、建設会社で職人として約10年間勤務後、結婚を機に廿日市市に移り、国家資格である土地家屋調査士の資格を取得し独立起業。
1997年にフジタサッカースクールの閉鎖により、行き場をなくした子どもたちの受け皿として廿日市スポーツクラブを設立し、現職。
今は総合型のクラブになり、会員数は500人を超える。

その1 受け皿として立ち上げた

坂口:よろしくお願いいたします!

丸子:よろしくお願いいたします!

坂口:では、今のお仕事について教えてください。

丸子:NPO法人廿日市スポーツクラブのマネージャーです。クラブの経営者ですね。
クラブの経営の仕事を9割5分やっています。残り5%で土地家屋調査士という仕事をやってます。土地家屋調査士という仕事は27歳からやっていて今53歳ですから、26年やっています。もう辞めたいんですけど、最後やってくれっていう仕事がちょこちょこくるんでそれをしょうがなしでやってます。
ですから、ほとんどの仕事は断ってる。ほぼ専業のクラブマネージャーですね。

坂口:廿日市スポーツクラブは、いつ頃からどんなふうに始まったのですか。

丸子:フジタ工業というゼネコンが、フジタドルフィンクラブというスポーツクラブをやっていて、そのグラウンドでフジタサッカースクールを立ち上げて17、8年活動されていました。

Jリーグが始まったころはすごい人数のクラブでしたが、15年前バブル崩壊後、フジタ工業が傾いたときにサッカー部門をやめることになりました。
当時いた選手たちの行き場所がなくなったので、その受け皿として立ち上げたのが廿日市SCのスタートです。

説明会をして、200人ばかりいた子どもたちの半分は地元の少年団とか、ほかのチームに移られて、半分は残られた。最初は100人いなかったと思います。50、60人だったと思うんですけど、小学生のチームと中学生のチームと高校生のチームがそれぞれ1チーム、やっと組めるぐらいのチームでスタートしました。

坂口:それが15年前ですね。そのときは、丸子さんおひとりだったんですか?
それとも、何人か仲間がいらっしゃったんですか。

丸子:フジタスクールのコーチが1人と、そのコーチの友人というか、私の友人がたまたま広島に帰ってきて、その3人でスタートしました。

坂口:もうそのときから、丸子さんの中では、クラブをやるぞ、ってご自分なりのビジョンというか・・・、今のイメージがあったのでしょうか?

丸子:全然。
そんなことを思ってやり始めたのではなくて、ただ子どもたちの受け皿を作って、というだけでした。本音をいえば、いい受け入れ先ができるまでの中継ぎでやるつもりでした。けど、なかなかいないものですね。今までひとりも現れなくてじゃあ、まぁ、やるか、みたいなことで、だらだらやっていました。

坂口:なんか、こう、やるぞ!って本格的に、やっていこう、って変わったのは、いつごろですか。

丸子:7年か8年くらい前ですね。

坂口:では、これまでの半分くらいの期間は、丸子さんの中でも迷いながらやってきたって感じなんですか。

丸子:そうですね。一生の仕事にしてやるっていう覚悟はなかったように思います。今思えば。

どこかに逃げがあって、新しい受け皿ができたら譲ろうとか、一緒にやり始めたコーチが独立するって言ってくれれば、おれもお役御免で逃げられるな、とか、そんなことを考えながら、7、8年はやってたような気がしますね。

坂口:そうなんですね。丸子さんご自身も指導者として、やってらっしゃったんですか?

丸子:僕はほとんど指導はできないんで、マネージャーとしてずっとやっています。指導の真似ごとはすることはありますけど、あんまりうまくないんで、お任せするというか、まあ、できないです。

坂口:今の廿日市SCの活動内容や、クラブの人数、概要について教えてください。

丸子:サッカーが中心なんですけどね。
サッカー全体で、4月で500人ぐらいだったのでちょっと増えて、520、530人はいると思います。幼稚園児から大人までですね。大人が100人ぐらいいますから、それ以外が子どもたちということですね。

あとは、キッズのスポーツ教室が14、5人、テニスが30人くらいとバトミントンも30人くらい、ヒップホップも同じくらい。フィットネス事業っていってピラティス、ヨガとか太極拳が、これも結構います、140とか150人だったと思います。あと、グランドゴルフが30人ぐらい。

今増えてるんで、全体で750か760だと思います。それがだいたいの概要です。

その2 しゃべれなくていい指導者

坂口:活動はどんなところを使っているんですか?

丸子:クラブの事務所が宮園団地というところにあるんで、その近所の公園の宮園公園と宮園小学校も貸してもらっています。それと、サッカー部門はここのグリーンフィールドという廿日市サッカー場と、サンチェリーという廿日市市の体育館の外のちっちゃいグランドも使って。ヨガとかフィットネス事業はサンチェリーの体育館でやっています。

坂口:わかりました。会員数750、760人って、かなりの数だと思います。指導者は、どうされてるんですか。

丸子:指導者は、サッカーは専任で雇用関係を結んでいるのが12名です。そのメンバーが中心で、あとの指導者はアルバイト的またはパートタイム的な感じです。

ヒップホップとか、テニス、バドミントンとかは、2、3人がパートタイムでやってもらっています。ヨガとか、ピラティスとかフィットネス系は、提携してる派遣会社から派遣してもらっています。

太極拳もそうです。協会に派遣してもらってまして、自前ではないです。

坂口:ありがとうございます。あと、久保竜彦さんとコーチとして契約されましたよね。どんな活動をされているのか教えてください。

丸子:久保さんは、日本を代表するストライカーだった選手です。彼は、子どもたちにストライカーの大事な部分、センスを教えたいと。彼がよく言っていることは、自然な動きの中で、振りの速さとか、体幹をブラさないとか、そういうことを研究したい、ということ。それを子どもたちに教えることで、ストライカーとして自分ができなかったことをできるようになってもらいたいと思っているようです。

自分はちょっと無理な体勢でシュートを打つストライカーでケガが多かったんだけど、ケガの少ないブラジルの選手なんかは体幹をブラさずに振りの速さだけで決めちゃう。そういうプレーを目指させたい、そういうふうな活動がしたいってことなんです。なので、彼にはストライカー教室の専任のコーチとして、小学生と中学生年代の指導に関わってもらっています。

坂口:どれくらいの頻度でいらっしゃってるんですか?

丸子:週2回ですね。子どもたちにはすごくいいと思います。久保さんの効果でマスコミの露出も多いんで、会員さんが増えてます。本当にいい人に来てもらったなって思っています。

坂口:サンフレッチェでプレーしている期間も長かったですものね。

丸子:広島に馴染み深い選手ですので、とにかく人気があります。ぼくとつとしたイメージなんですけど、意外と好感度、好印象っていうか、そう受け取られてるようです。受け答えも楽しいというか。

坂口:現役時代は、あんまり余計なことはしゃべらない印象ですよね。

丸子:そのせいで、子どもの前で何かしゃべってるんですか?
みたいなことはよく聞かれます。しゃべらないですよ。しゃべるだけが指導じゃないっていうポリシーですよって説明するとみなさん納得します。新しいタイプの指導者だと思いますね。しゃべれなくていい指導者みたいな。

坂口:見てみたいですね。

丸子:ちょっと不思議な感じですよ。あんまり感情込めないで、ぼそっと「いいぞ」って。普通高いトーンで言われるじゃないですか、コーチって。久保さんは高いトーンにならない。

坂口:面白いですね。

丸子:面白いですよ。突然、ちょっとしたデモンストレーションをやるときがあるんですけども、そのときの緩急がスゴイですよね。あらゆる意味で緩急がついてる。ぼくとつとしたイメージから、急に「こう動くんだよ!」みたいな感じで、デモンストレーションを見せる。なんで、もう、パンッ!て、イメージが頭に入ると思いますよ、子供たちも。裏を取るって、こういうことなんだ!って。
ぼくらも勉強になりますよね。

その3 やさしさを育てる

坂口:クラブの活動で、最近変わったところはありますか。

丸子:そうですね。ずっとサッカー中心のスポーツクラブというイメージでやってきたんですけども、最近になって、サッカーじゃないな、大事なのは。って考えています。
そう変わってきたのは、自分が歳をとってきたのもあるけど、ヨガをする人たちとか、ぶらぶら歩きというかウォーキングしているおじいちゃん、おばあちゃんと接することも多くなったし、グランドゴルフの人にもお友だちがいっぱいできて、サッカーが中心だっていうのは自分たちが思い込んでいた幻想なんだなと気づきました。

自分の中で、そこら辺の見方が変わってきたというか。スポーツっていうのはサッカーが中心ではないんだな、と。

坂口:もっとスポーツとか運動の幅を広く考えようってことですか。

丸子:はい。
ちょっと広げ過ぎかもしれませんが、「一生、自分の脚で歩くことって素晴らしいですよね」っていうテーマで発信して、クラブ化を図っていくことが本筋じゃないかと思うようになってきました。

子どもたちが脚を鍛えるとか、スポーツ好きになるとか、走ることが好きになるとか、歩くことが好きになるとか、っていう視点ですね。人類が二足歩行を始めたときのことをあらためて見つめ直したい。ちょっと漠然としてますが。そんなスポーツの捉え方をしながら、クラブを少しずつ変化させていきたいなと。

坂口:そういうふうに考え始めた理由は何なのでしょう?

丸子:プライベートなことで申し訳ないんですけども、自分の両親ですね。親父は歩けなくなって、お袋も歩けなくなる直前の状態。私自身もちょっと足の病気を患っていて。そんな、ほんとに個人的な理由です。それがきっかけで、病院に行けばそんな人たちはいっぱいいるし、そんな人たちと話したりして、その人たちにとってのサッカーって、どうあるべきかということを考えました。

そういう人たちがサッカーを観たときに、自分もずっと走りたいと思ってもらえるとか、ずっと自分の力で歩きたいと感じてもらえるような、サッカー選手やチームを育成することのほうが大切なんかなって。そういうスポーツ選手を育てるっていうことをクラブの理念として掲げてクラブ運営をしていく必要があるんじゃないかって変わってきました。

ぼく、変わったと思いますよ。ここ1年、2年で。
それまではね、サッカーを守りあげて、強いチームを作ってみんなに応援してもらう、っていうイメージを持っていたんですけど、すごく変わったと思います。ぼくが変わりました。

坂口:個人的な感想ですが、いまの世の中の潮流に合ったいい方向に向かってらっしゃるなって思います。地域のクラブは、勝った負けたとか、有名選手を輩出するとかって競技的な尺度だけが存在価値ではないですよね。負けたらダメなクラブなのかっていうと、そんなことは絶対にないと思います。あと、サッカーという競技ができる年齢の幅も、人も限られていますよね。それは丸子さんがおっしゃるとおり、ほんと一部の人たちだけが対象ですよね。

街とか地域コミュニティの中での、スポーツクラブとしての価値や存在意義を考えると、サッカーに限定するほうがもったいなく思いますね。

丸子:それをぼくは、50歳過ぎて感じ始めたというか、やっとわかったってことだと思うんです。

なぜかというと、ぼくも下手の横好きで、草サッカーの時代も含めてずっとサッカーばっかりやってきたんですよね。だから、サッカー以外の人たちと接する機会がなかった。他の競技の人たちとお友達になることも少なかったし、歩けない人と話すこともなかった。そういう人を意識することもなかったし、そういう人たちにファンになってほしいってことも思わなかったんで。

それは環境だと思うんですよ。その環境を作ることによって、自然にその人たちを意識できれば、プレーとかコミュニケーションは変わってくるんじゃないかなって、ぼくは、やっと気づいた。50歳過ぎて、そういうことを感じ始めた。

今は、障害者の方にもすぐ話かけるし、この人たちにとってのスポーツってことを考えるし、同じ目線で語りかければ、共有できるんですよね、気持ちを。それは、環境だと思うし、その環境を作るのがクラブの仕事じゃないかなと。スポーツクラブの仕事は、そこへ踏み込まないと。応援したい、応援されたいっていうのは、気持ちを共有することだと思うんで、そういう、やさしさを育てる、ようなことが目標に変わってきた、のかな。

坂口:すごく本質的なことだと思いますね、いま、お話しされたこと。これからの廿日市SCが楽しみです。

その4 三代続いてのクラブのファン

坂口:丸子さんはSMCを2005年に受講されましたよね。2期生でした。受講されていかがでしたか?
もうだいぶ前の話ですが。

丸子:はじめの7、8年間、いつでも逃げられるぞ、ってスタンスでクラブをやってたのが、本気になってやろう、って思ったのが、その・・・

坂口:受講のときだったんですね。

丸子:いや、そのときに、決めないといけないなって思って、県協会に行かせてくれって頼みましたクラブとしても大したことなかったから、もうやめたほうがいいかなって思ったりしてたぐらいだったので。「SMCに行って本気でやろう」って決めた分岐点だったと思いますね。

坂口:SMCに来て決意をしたんじゃなくて、決意をして参加されたってことですよね。

丸子:そうですね。決意して行ったと思います。

坂口:中身のこと、覚えてらっしゃいますか?

丸子:よく覚えていますよ。

坂口:なにか今、役に立ってることはありますか?

丸子:ぼく、SMCでいちばん、為になったことは、スポーツをマーケットと考えることを教えてもらったことだなと。マーケットとして捉えて、そのマーケットに対して価値のあるものを提供することが大事と、坂口さんがおっしゃったのを素直にきいて、 笑
それだな、と。マーケットに対して価値のある商品のつくり方、見せ方とかを工夫したらぜんぜん市場の反応が変わってくるよってことを勉強させてもらいました。

あと、いろんな人が受講していましたから、こんな人もいるんだ!っていう驚きもあったし、自分もちょっと変人と思ってたんですけど、案外まともなんだなって思いました。 笑

坂口:あの・・・。2期生がたぶん、いちばん変わった人が多かったんじゃないかなと。

丸子:こういう考え方をしてもいいんだ、みたいなことで、刺激になったというか。 笑

坂口:あと、最後の質問にしますけど、丸子さんが、今後やっていこうってことがあれば、お話ししていただけますか。

丸子:ぼくは、あと10年は、クラブを必死になってやりたいですね。この仕事をね。スポーツクラブというものをこれまで15年やってきて、自分の考え方も変わってきたし、クラブも変化してきました。10年後にどう変化してるか、どう進化してるかっていうことが、どう変化するかわからないですけど、ぼくはすごく楽しみです。

クラブの変化ももちろん楽しみですけど、クラブを成長させることで、自分も成長したいなって。あと、仲間ともいっしょに成長したいなって思います。マネジメントができる人間を育てたい。そこがカギになると思うんですよ。クラブの成長の。だから、マネジメントができる人間を育てられるだけの、マネジメントができる人間にならないといけないなと思っています。そこがもっと勉強しないといけない部分。まだ極めきれてない。まだぜんぜんだなって、自分でも思います。

理想像がパーンとあって、それに向かってるって言えれば、かっこいいと思うんですけど、どこまでどう進化、成長するかっていうのは自分でも見えていません。やれるところまで成長させたい。枠は決めてないので。

SMCで勉強させてもらった市場をどう捉えるかっていう話なんですけど、ぼくは、やっぱり廿日市という地域で考えています。自分の拠点、大切にしたいこの地域に、通って来られる人たちを市場として捉えて、その市場に対して商品価値を高められる活動をしていきたいですね。そこはぶらさないで、そのあと、どう変化していくかは、自分でもわかりませんし、決めてないです。

坂口:たとえば、クラブとしての成長っていうのが、どうなったら成長なんだってイメージはありますか。人数が増えただけじゃないなっていうのは、ここまでの話で分かりますけど。

丸子:種目をいろいろと増やしました。ひとつひとつの事業も多種目にして、その種目も増えて、やる人たちも増えてます。参加者、増えてます。でも、全部、単体なんですよ。まったく単体で、つながっていない。

理想をいうと、クラブのファンになった家族が全員、廿日市スポーツクラブの会員になって、お姉ちゃんはヒップホップ、妹はバドミントン、弟はサッカー、お父さんもシニアのサッカーしてる、ってイメージを持っていて、そんなクラブライフを提供しようと思って商品を開発しとるんですけど、実際そんな風にはまったくなってないんですよ。

みんな、自分のやりたいスポーツを、廿日市SCさんのほうが都合がよかったから入って、ほかに都合のいいものがあれば、そちらのほうに入って、家族はみんな違うスポーツクラブに入ってる、少年団に入ってるっていうのが現状。そこを脱したいなと。
脱したい理由は先ほどお話ししたとおり、クラブがいろんな人を巻き込んで、お互いが関わることで、スポーツだけじゃない、いろんな学びや成長をサポートできるってことに気づいたんで、そういう場を作りたいっていうことなんです。これは、本当に難しい作業だなって感じてます。

口で言うのは簡単ですし、形を作るのも簡単ですし、紙に書いて宣伝するのも簡単なんです。フェイスブックに書くのも簡単です。書いたら、いいね!ボタンがいっぱい来ますから、なんとなくできたような気持ちになりますけど、実際、現場はそうはなっていない。「このクラブがあって、幸せになった」って言ってくれる人が数家族いますけど、まだまだ限られてます。

坂口:それをもっと増やしたい。

丸子:そこを増やして、三代続いてのクラブのファンだよ、会員だよ、って家族が増えたらみんなハッピー、幸せだなーって。そこを目標にしたいですね。

 

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