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vol.010「サッカーは格闘技。だからこそリスペクトの精神が不可欠」
2012年10月12日
日本サッカー協会 規律・フェアプレー委員 Jリーグ規律委員長 野村 六彦
Jリーグでは、試合前と終了後に、両チームと審判が握手をしています。導入直後は、握手をしない選手が多かったり、形式的な儀式となっていたりしましたが、最近は、心からのリスペクトがよく伝わってきます。Jリーグが開幕して20年が経っていますが、これは大きな進歩だと捉えています。
しかし残念ながら、今でも試合中、見苦しいと受け取られる意図的なファウルや時間稼ぎなどがゼロではありませんし、ベンチスタッフが判定に対し執拗に異議を示すシーンも散見されます。
リスペクトの精神が完全に浸透しているかといわれたら、まだまだ発展途上であるといえます。Jリーグの選手たちは、プロフェッショナルとして試合を行い、観客の入場料収入などから報酬を得て成り立っているわけですから、お客様に魅力的な試合を提供しなければなりません。
レフェリーがいくら流れを切らぬよう努めていても、選手が冷静さを失ってリスペクトの心を見失い、心ない意図的なファウルを犯した場合、レフェリーは流れを止めて笛を吹かなければなりません。
けがの状況では、プレーが再開されるまでに、かなりの時間を要します。けががひどい場合は、相手選手のサッカー人生を終わらせてしまう事もありえます。
流れを切らさず、スピードに乗って相手ゴールに迫り、またそれを守備陣が止めようとする、この攻防の迫力がドラマとなり、観客をピッチに釘付けにするのです。
この攻防の迫力の中で、流れが切れずにゴールにつながると、会場は盛り上がります。このような、激しさの中でフェアプレーが見えるさわやかな試合がお客様に見せられれば、お客様はリピーターとして何度も足を運んでくださるでしょう。私は、Jリーグのすべての試合がそうなることを願っています。
FIFAでは、世界各国で審判員の希望者が減じている傾向にある事に警鐘を鳴らし、リスペクトの重要性を発信しています。
審判がいなくなったらゲームが成立しなくなる訳ですから、急務な課題です。審判を一度でも経験したことのある方はよくおわかりかと思いますが、試合において審判は求められる要求も高く、厳しい役割です。特に主審は、副審と第4の審判員と連携を取りながら、公平でかつ毅然とした姿勢で、90分間、選手と同じスピードで走りながら、ボールと反則の発生場所を近くで見られるよう予測をして動き、ゲームコントロールに努めています。選手またチームの指導をされている皆さんも弛まぬ努力でピッチに立っていることでしょう。レフェリーもまた同じであることを十分に理解して試合に臨んでほしいと思います。
サッカーは球技の格闘技と言われています。だからこそ、リスペクトの精神は必要不可欠です。
Jリーグは今シーズンから「+Qualityプロジェクト」と称して、よりいっそうフェアでクリーンでスピーディーかつタフな試合の実現を目指しています。
私は、規律委員長として、選手やチームがそれを実現できるよう、しっかりフォローしていきたいと思います。(了)
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