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アジアのピッチから ~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第2回 壱岐友輔 カンボジアフットボールアカデミー・U-15カンボジア代表監督
2015年02月06日
アジアの各国で活動する指導者の声を伝える「アジアのピッチから」第2回は、カンボジアフットボールアカデミー・U-15カンボジア代表監督の壱岐友輔氏のレポートです。
「カンボジアフットボールアカデミー」は、選手の衣食住及びサッカーに関する費用が全て補助される全寮制のアカデミーとして2014年2月に開校しました。また、ディベロップメントトレセンが開始されるなど、2023年に開催される「SEA Games(東南アジア競技大会)」に向けたプロジェクトが進行しています。
カンボジアでの暮らしについて
カンボジアに来る前は、この国に対してあまりポジティブな印象を持っていませんでしたが、1年間生活してみて、国民はとても陽気で温かい人が多いと思っています。首都プノンペンでは多国籍の食事を堪能することが出来ますし、ショッピングモールも昨年オープンしたので生活面で困ることはほとんどありません。むしろ私の性格に合った国です。
「日本の常識は世界の非常識」というスタンスで活動をスタートさせたので、大きな衝撃といったものはありませんでした。ただ安心・安全は自分自身で確保するように、常時、気を配っています。交通ルールはあってないようなもので、バイクに平気で4人くらいで乗りますし、積載オーバー、定員オーバー、逆走は当たり前。でも、意外とお互いに文句を言いません。
選手の家族との関係における日本との違い
カンボジアでは中学生年代のこどもが、親元を離れて暮らすという習慣は全くありません。そして、学校に行かず、仕事をしているこどもたちもたくさんいます。ですから、最初は、全寮制の「カンボジアフットボールアカデミー」について理解してもらえず、苦労しました。ホームシックで帰りたいと言う選手も数人いましたね。しかし、時間が経過すると共に我々の活動に関して家族は大きな理解を示してくれるようになりました。選手も精神的にも大人になり、今ではお互い良い関係を築いています。
カンボジアの選手の特徴
得意なことに対しては一生懸命取り組むのですが、苦手なことや、出来ないことに対しては知っているのに知らないふりをします。ですから、練習や試合の映像を皆で観るようにして、出来ること、出来ないことを全員で共有するようにしました。その甲斐もあり、今では、お互いの良し悪しを把握し得意、不得意関係なく取り組む姿勢が出てきました。全員がサッカーに対して本気になってきた証拠です。
一番苦労したエピソード
カンボジアはFIFAランキングにおいて下位であることもあり、選手たちは自国のサッカーに自信を持てていません。内弁慶の性格に加え国際経験がほとんどないため、国際大会になると勝負弱さが露骨に出てきます。
アカデミーの選手たちも、開校当初は「負けて当然」のメンタリティーが存在していて、強い相手に対して勇気を持って立ち向かえず、一旦崩れると大量失点に繋がることがよくありました。しかし公式戦や海外キャンプなど国際経験を積み、勝者のメンタリティーを植え付けられるように取り組んできた甲斐があり、以前より勝負に対しての欲が出てくるようになりました。昨年12月にタイで実施された国際大会では、どの相手に対しても物怖じすることなく勇敢に立ち向かい、国際大会初勝利をあげることができました。
ディベロップメントトレセンについて
JICA(国際協力機構)のご協力で3ヶ月に渡り毎週日曜日、午前中にユースリーグ、午後にディベロップメントトレセンを実施しました。やはり所属するチームに関わらず代表への門戸が広がったことが一番大きかったと思います。加えてレベルの拮抗した選手同士で練習をすることは、とても良い刺激にもなりますし、我々にとっても選手のスカウティングの機会になります。また昼食を補助することにより食育活動を兼ねることができたこと、そして、全てナショナルフットボールセンター(天然芝4面)で開催したことにより、サッカーをするだけでなく、多くの人の「みる」「かたる」場としてフットボールセンターを活用出来たことはとても好評でした。是非、今年も継続して実施したいと思います。
今後カンボジアで取り組んで行きたいこと
全て手探りの状況でスタートした1年目でしたが、最初に思い描いていたほとんどのことをたくさんの方のご協力により実施することができました。2年目は、指導者講習会を実施し、1人でも多くの人にカンボジアフットボールアカデミーを知ってもらい、育成の重要性を伝えることができればと考えています。そして、昨年の事業をベースに継続と進化を考え、より充実した活動となるよう取り組んで行きます。9月にはAFC U-16選手権の予選を戦います。まずは、1勝、そして、1次予選を突破し、カンボジアサッカーを盛り上げることに貢献できればと思います。
壱岐友輔(略歴)
ベガルタ仙台でアカデミーコーチを15年間務める。ベガルタ仙台に所属のまま、2014年からJICA及びJFAを通じてカンボジアに派遣中。
次回の「アジアのピッチから」は、3月上旬掲載予定です。
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