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アジアのピッチから ~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第6回 鈴木大地 チャイニーズ・タイペイ女子代表GKコーチ

2015年06月08日

アジアのピッチから ~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第6回 鈴木大地 チャイニーズ・タイペイ女子代表GKコーチ

アジアの各国で活躍する指導者達の声を伝える「アジアのピッチから」。第6回は、チャイニーズ・タイペイ女子代表チームでゴールキーパー(以下GK)コーチを務めている鈴木大地氏のレポートです。
同じく日本から派遣されている柳楽雅幸監督と共に、9月に行われるリオ五輪アジア2次予選に挑みます。

チャイニーズ・タイペイにおけるサッカー

赴任して1年が過ぎました。台湾の人々は本当に親切ですが、彼らの自由すぎる交通マナーから「ルールを守ってくれない」等、サッカーにも通じる事を日々の生活で学んでいます。サッカー自体の注目度はあまり高いとは言えず、盛り上がりが少ないのが現状です。女子も含めたサッカー界全体が認知されるように結果も出しつつ、サッカー自体が社会に貢献できるようにしたいです。

現在指導しているチャイニーズ・タイペイのGKの特徴として、長所はパワーと体格に恵まれていること、課題はボールのない局面での準備や予測をする概念がないことです。優先順位がつけられないために戦術行動をとれず、ボールが来てからプレーを開始するため、ゲーム中GK一人では解決できない局面が多く見られます。一方、こちらの予想を超えるプレーでゴールを防ぐようなシーンも見られます。おかげで新たな発想が生まれ、現在は、短所や欠点を補えるくらい長所や特徴を伸ばせるようなトレーニング構成を意識しています。サッカーを通じて、問題解決能力や逆算して物事を考える能力を身につけるきっかけを与えたいです。

チャイニーズ・タイペイでの指導、そして「GKコーチ」の専門性

国が違えば選手の物事の考え方や捉え方も違うので、トレーニングのオーガナイズ、伝え方には工夫が必要です。基本的に英語で会話しますが、こちらの本意が伝わりづらい事があるため、選手の疑問や意見を優先して聞き、双方向のコミュニケーションを心がけています。テニスボールなど様々な道具を使って楽しみながらトレーニングに集中できるよう工夫しています。

GKコーチが必要とされる理由は、制限された区域内で手を使うことが許された「たった一人」の選手であるGK特有の技術や個人戦術、フィールドプレーヤー(以下FP)にはない「手を使うか使わないか」という決断能力を向上させることです。

GKは一つのミスがゲームの勝敗に影響を及ぼします。確実かつ安定したプレーをするために、常に高い集中力を持続させ、強度の高いトレーニングをすることがGK練習の大きな特徴です。GKコーチはGKだけでなく、GKとFP間の連携も分析し、チームの改善にも携わるため、GKだけでなくFPを含むサッカー全体を理解していなくてはなりません。GKコーチは、サッカーに対する知識や指導力、引き出しが最も必要だと個人的には感じています。

私自身が考えるGKに必要な条件は、「選手自身がGKというポジションが最も好きでやりがいを感じている」ことです。必要な資質は、プレーしていく中で培われるものであり、身体的に恵まれているとか、性格が向いているだけでは不十分です。GKは困難なことが多い役割ですが、これほどやりがいのあるポジションは他にはありません。一つのプレーでゲーム結果を左右し、味方の失敗を救える唯一のポジションであり、GKとしてプレーできることが光栄だと感じてもらえるよう指導しています。

リオ五輪アジア2次予選に向けて

3月に行われた1次予選、初戦のラオス戦では勝ち点3を得ましたが、得失点差の関係で予選突破には2戦目のイラク戦での勝ち点3が必須となりました。引き分け以上で予選を通過出来るイラクが強固な守備を形成してカウンターを狙ってくることは予想していました。前半開始早々PKを献上してしまったにも関わらず、GKが防いでくれたおかげで落ち着いたゲーム展開となり、1-0で勝利を収めることができました。スカウティングの情報を選手たちと共有出来ていたことがこのPKに役立ち、更に2試合を通じて無失点で終えられたこともあり、出場していない選手も含めた“GKグループ”としてチームの勝利に貢献できました。2次予選に向けて更なる改善に取り組んでいきます。

5月に日本で行った合宿では、チームの課題や長所を分析することが出来ました。台湾国内では、女子チームとゲームを組むことが非常に難しいため、一定のレベル以上の対戦相手との試合を通じ、チーム戦術を浸透させることが出来たことが最大の成果です。ご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。

9月に行われる2次予選の初戦では、日本から派遣されている乗松隆史監督率いるベトナムと対戦します。ライバルではありますが、同じ日本人監督同士のチームとして、お互いにアジアのサッカーを盛り上げつつ、日本人指導者の質の高さをアジアや世界に認められるきっかけになればと考えています。

今後取り組んで行きたいこと

代表チームの結果ももちろんですが、GK指導者養成、育成年代のGK指導環境の改善も課題です。台湾国内でサッカーをやる子供たちにとって、GKというポジションが1番人気になってもらえるよう、GKとGKコーチの価値を高めることが目標です。今年、台湾国内で初めてのGKコーチングライセンスコースがスタートし、私は幸いにもそのプロジェクトに携わる機会をいただきました。台湾がアジアでトップクラスのGK輩出国になれるよう貢献していきます。

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