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アジアのピッチから ~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第14回 久保真一 ベトナム代表チーム トレーナー
2016年02月18日
アジアの各国で活躍する指導者達の声を伝える「アジアのピッチから」。第14回は、ベトナム代表チームのトレーナーを務めた久保真一氏のレポートです。
ベトナム代表チームについて
2015年の2月から数回に渡り三浦俊也監督率いるベトナム代表チームにトレーナーとして帯同しました。ベトナムではサッカーが一番人気のスポーツなので代表チームもとても人気があります。ただ、一部の選手がアイドル化しているため、サッカーとは関係ないところで盛り上がっている感じは否めません。サポーターやメディアも試合内容ではなく、特定の選手がボールを持てば盛り上がる、といった具合です。
日本が優勝したAFC U-23選手権2016カタール大会はグループステージで敗退しましたが、ベトナム国内での事前合宿中は連日メディアの取材攻勢で国民の関心は高かったです。カタールに入ってから開幕までは地理的影響のせいかベトナムメディアが不在で練習に集中するには好都合でした。
普段から三浦監督はベトナム国内リーグ戦の視察を頻繁に行っており、今まで代表に縁のなかった選手も多く呼ばれていました。そういう選手たちは目がキラキラしていて、とても忠実に監督の指示に従っていたのが印象的でした。監督は、あまり冗談を言ったり、選手と話したりするタイプではありません。練習中は厳しく叱咤する場面もあり、選手から監督に話しかけることはほとんどなく、例外はレ・コンビン選手※くらいでした。※「ベトナムの英雄」と呼ばれるストライカー。東南アジア初のJリーガーとしてコンサドーレ札幌でもプレー
代表チームへの帯同
「自分は日本人を代表してここに来ている」ということを常に意識していました。「自分の行動=日本人」と思われるため、日本のチームで行っていたことを可能な限り再現しました。やり方はベトナム人向けにアレンジしつつ、対等な立場で話し合いをしながら進めるように心がけていました。数回に分けての帯同でしたが最初の頃に比べると、セルフトレーニングやセルフケアを行う選手たちが増えました。代表の活動期間だけでなく、自分のクラブに戻っても継続的にメンテナンスをしている選手たちは明らかに強く大きくなっており、メンテナンスをしていない選手との違いが顕著に表れていました。スタッフも、選手のために先を予測し、率先して自ら行動できるようになったと思います。
ベトナムでの思い出
文化が違えば生活習慣も何もかも違うので、最初に赴任した時はほとんどのことに衝撃を受けました。バイクの多さから食習慣まで色々あったと思うのですが、約1年関わっているとすべてが普通になり、何に衝撃を受けたか忘れる程すっかりベトナムに順応しました(笑)
そんな中で最も印象に残っていることは、無くした携帯電話が戻ってきたこと。日本に帰国するため空港に向かうタクシーに日本で使用していたスマートフォンを落としたのです。ダメ元で捜索した結果、タクシーの運転手がホテルに届けてくれたことが判明、ベトナムにもこんなに優しい人がいるのだと驚きました。実はこの日が我が家の第2子誕生と重なり、そんな日に各所への連絡が不可能となったため、余計に思い出深い出来事となりました。
海外で仕事をすると、日本という国、そして日本人の長所・短所を認識することができます。国が違えば人も考え方も違います。それらを実際に経験しながら目的を遂行しようと努力することを通じ、人として本当に成長できると感じました。ありきたりですが、チャンスがあればどんどん海外へ出ていくべきだと思います。最後に、このような機会を与えて下さった日本サッカー協会と三浦俊也監督に感謝致します。
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