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アジアのピッチから~JFA公認海外派遣指導者通信~第28回 黒田和生チャイニーズタイペイ代表監督

2017年07月19日

アジアのピッチから~JFA公認海外派遣指導者通信~第28回 黒田和生チャイニーズタイペイ代表監督

アジアの各国で活躍する指導者達の声を伝える「アジアのピッチから」。
第28回は、チャイニーズタイペイサッカー協会(CTFA)で代表監督を務める黒田和生氏のレポートです。

育成統括から代表監督へ

2017年の5月で台湾滞在が足掛け5年になりました。U-18の監督に始まり、U-15、14、13の監督、指導者養成にグラスルーツ、トレーニングセンターの立ち上げなど楽しく台湾全土を巡回してきました。「教育は国家百年の計」と言います。サッカー界の少年育成は50年の計でしょうか。どこまでお手伝いが出来ているかは未知ですが、希望の種は蒔くことができたかと自己評価しています。

2016年の夏、男子代表監督が不在となり、不肖私に任が回ってきました。これまでこの地で受けた多くの恩を胸に、11月にこの大役を引き受けてからの約半年を振り返ってみます。

代表監督としてのチャレンジ

就任直後の11月に香港で行われた「EAFF E-1フットボールチャンピオンシップ2017ラウンド2」では、個々の選手の能力が正確に把握しきれていないため前任者の意向を尊重しながら公式戦に臨みました。初戦の朝鮮民主主義人民共和国に0-2、第2戦は香港に2-4と連敗後、第3戦はグアムに2-0。これが私の代表監督就任後の公式戦初勝利、ジーンと感激の1勝でした。2017年の年明け、アルビレックス新潟戦では、J1クラブの胸を借りて若い力を伸ばすことができました。
自身、年齢制限が無い選手達の指導経験が少ないため、いかに統率していくのかが悩みでした。就任後の3ヶ月間で感じたことは「できることしかできない。それは率先してやることと、素直に自分の考えをぶつけること」と開き直り、スタッフとの協力を第一に考えました。

目標:
アジア4強!
サッカーの地位向上(スポーツマンとしての言動、Good gameを追及する事)

人としての基本3つ:
①人の話を聴くときは目で聴く、②人のせいにしない、③人の悪口を言わない。

人として成長するための6つの心:
①明るい心、あいさつは気持ちよく自分から、②素直な心、③感謝の心、④反省の心、⑤リスペクトの心、⑥謙虚な心。

選手達にはこの6つを徹底して話したところ、最初は照れていた握手も笑顔で出来るようになりました。ありがとうも言えるようになってくるとチームの雰囲気がガラッと明るくなり、良い効果が表れてきたのです。

目指すサッカー:
台湾人の特徴を生かし、1+1が3になるようなサッカー。言われてやるサッカーでなく自らやることで、自らが楽しもう。

ミーティングの回数と時間も増やし、読書の時間も多く取り入れました。予想通り一部の選手からは反発もありましたが、若手選手の反応や勢いに乗って、チームの雰囲気がどんどん明るく変わっていきました。合宿が、そして変化が楽しくなりました。

AFCアジアカップUAE2019予選

3月、予選の第1戦となるトルクメニスタン戦を前に、ベトナムサッカー連盟からハノイでの交流戦の話をいただきました。いい機会なので試合の1週間前からベトナムで合宿を行いアウェイながら1-1で引き分け。その後トルクメニスタンを迎えてのホーム戦まで4日間、海外組の5選手が合流したのが試合3日前。コンディションも士気も上がらず、1戦目は1-3で敗れてしまいました。

この反省をもとに、国内組のレベルを上げること、海外組をなるべく早くチームに合流させる計画を立て、代表チームのスタッフ達と細部にわたるミーティングを繰り返しました。第2戦となる6月アウェイのシンガポール戦に向けて、CTFAには、現地1週間のキャンプから海外組を合流させることと、台湾での合宿用に人工芝のピッチの2週間確保を依頼。更にベルギーリーグで活躍中のシャビエル選手の招聘も実現していただきました。シンガポール入り後は、アルビレックス新潟の人工芝ピッチを利用することができたことも有益でした。

サッカーはチームプレーを忘れては成り立ちません。海外組8人がスタメンの場合、3人しか先発で出られない15名の国内組との溝をいかに埋めていくかは大きな課題でした。国内組の持つ差別感や嫉妬感をなくすため、チームの規範(約束事)を平等に守ることを徹底しました。つまり、前述の「人としての基本3つと6つの心」です。幸い海外組はレベルの高いスポーツマンとしてよく理解してくれました。あとは戦術の徹底です。私はできる限りシンプルな言葉で考えました。その結果、ゲームプランは「先取点」、戦術は「①パスは人を飛ばすこと(サイドチェンジやロングパス等、ダイナミックなパスを意識)、②お互いに褒めあうこと」です。あとは目に見えないスタッフ達の努力をサッカーの神様が見ていてくれたように思います。ベンチとピッチの11人が一体となり、まるで高校サッカーのような時間が過ぎ、ついに我々は2-1で勝利のホイッスルの音を聴くことができました。しかもアウェイでの見事な逆転勝ちです。リン会長をはじめとするCTFAスタッフと現場が一体となった歴史的勝利、思わず選手の涙にもらい泣きしました。勝って泣く試合は本当に久しぶりでした。

アジアカップ予選ラウンドの6試合中、終わったのは2試合だけ。大事なのは次だよと言い聞かせながらこのドリームチームは一旦解散です。しかしまた会おう。再見!

JFA公認海外派遣指導者

黒田和生チャイニーズタイペイ代表監督

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