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2017年ウェルフェアオフィサー研修会報告 ~サッカーの活動における暴力根絶に向けてVol.83~
2019年06月07日
2017年11月18日に東京都で、同25日に大阪府で計126人の参加を得て、ウェルフェアオフィサー(WO)研修会を開催しました。WO制度が立ち上がり3年目。1年目はWO全般、2年目はマッチWO、そして今回はクラブWOについて研修しました。
研修会に先立ち、2016年に引き続き、各都道府県サッカー協会(FA)や連盟におけるWO活動の進捗についてアンケートを取りました。その回答のうち、「活動が(かなり、ある程度)進んでいる」は34%、「活動が(あまり、全く)進んでいない」は66%でした。2016年のアンケート結果(32%、68%)とあまり変わりませんでしたが、「あまり進んでいない」の回答でも、実際はWO研修会を数回開催するなど、活動は随分進んでいると感じられます。関係者の皆さんに感謝しております。
WOは、サッカーを楽しむサッカーファミリーの安心・安全を守る担当者です。WOジェネラルが組織や地域でのリスペクト・フェアプレー、安心・安全を全体的に整備していくのに対して、マッチWOやクラブWOの活動の場は、まさに現場。試合会場で、選手や指導者、保護者などと調整も行いつつ、より良いサッカー環境を整えます。
2013年6月、JFAは暴力等根絶相談窓口を設置しました。スポーツ指導での暴力の横行が社会問題となっており、サッカーの活動現場における、組織的または個人的な暴力行為の早期発見と是正、再発防止に努めなければならないと考えたからです。2017年10月末までの相談件数は389件で、1年あたり約80件の相談があります。そのうち、4種年代に関するものが179件(全体の46%)と半数近くになっています。
子どもたちは大人に対して直接発言もできず、また大人は子どもに対しては強く出る。その結果、暴言・暴力に至ってしまうのかもしれません。指導者が「練習を休むやつはクズだ」と選手に言ったり、言う通りにプレーできない選手に罰走をさせている。練習や練習試合で上手にプレーできない選手の肩や頭を小突いているという報告もあります。また、他の保護者も指導方法に疑問は持っているものの、自分の子どもに対する態度が悪化することを考えると指摘できないといった課題もあります。
これらの課題を踏まえ、研修会では主に4種年代のクラブを想定し、クラブWOの設置促進についてグループでディスカッションしていただきました。
手法は、品質管理業務に携わっている方にはおなじみのフィッシュボーン分析。ディスカッションのテーマを魚の頭に見立て、そこに至るさまざまな要因を書き出して魚の大骨・小骨に分類し、体系化します。WO研修会では、「暴力・暴言の発生要因」の分析、各組織として「クラブWO推進」するためには何をすべきか、どうすれば良いかをテーマとしました。
こうしたディスカッションは、常に時間が足りなくなるものです。どのグループも熱く真剣に取り組み、暴力などの発生要因を深く細かく抽出・分析。そして、その解決方法も探ることができました。参加者はWOジェネラルのため、知識や経験は豊かです。さまざまなアングルからのディスカッションで、その引き出しや引き出し方法は大きくアップグレードされたと思います。
好事例として紹介された長野県FAの取り組みは非常に参考になりました。クラブのための「健全育成ガイドラインチェックリスト」を作成し、トライアルながら育成年代のクラブに対し、在籍する選手や指導者がより安全に、安心して活動できるクラブ環境にあるかどうかをチェックしています。例えば、「クラブとしての規約、活動方針・運営方針を文書化し示しているか」「指導者・スタッフ全員が暴力根絶宣言をしているか」など、全部で50項目。常に自らを振り返り、より良いクラブをつくることができます。
JFAは掲げている理念にまい進するため、ビジョンを掲げ、バリューも確認しています。「関わりのある全てを大切に思うこと:リスペクト」は、日本サッカーのバリュー(価値)です。WO制度は、それを推進する一つのすべであり、大きな柱です。そのために、各FAや連盟でさまざまな努力をしていただいています。
もちろん課題もあります。実施にあたっての予算や人員確保、体制(リスペクト・フェアプレーへの取り組み)です。多くのFAにおいて、プライオリティーは決して高くありません。しかし、本研修会の参加者の誰もが日本サッカーにリスペクト・フェアプレーは必要で、暴力・暴言、差別は根絶されるべきだという信念を持って活動していただいていると感じました。
転ばぬ先の杖。試合会場や日々のクラブ活動という現場で問題が起きないように、一つ一つ先に手を打っておくこと。それはマッチWOであり、クラブWOの仕事です。一方、JFAはもとより、WOジェネラルは現場で活動するWOのための環境を早く整備しなければならないと強く感じます。
三つ子の魂百まで。ゴールデンエイジの選手が所属する4種年代であればなおさらです。暴力・暴言、差別がないことは言わずもがな。リスペクト・フェアプレーの精神や行動が、選手・指導者、またクラブ関係者に自然と身に付く風土を目指したいと思います。
【報告者】松崎康弘(JFAリスペクト・フェアプレー委員長)
※日本サッカー協会は現在「リスペクトのある風景~リスペクトアウォーズ2019~」と題し、エピソードを募集しています。ぜひご参加ください。
(詳細はこちら http://www.jfa.jp/respect/news/00021436/)
※このコラムは、公益財団法人日本サッカー協会『テクニカルニュース』2018年1月号より転載しています。
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