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リスペクト研修会について ~サッカーの活動における暴力根絶に向けてVol.88~
2019年09月20日
昨今のスポーツ界では、「暴力」「暴言」などが日常茶飯事で取り上げられています。昭和に生まれ育った人間は、体罰などが当たり前の時代でした。精神論が優先され、体罰により選手の能力を伸ばすことが正論の時代でもありました。
今の時代から見ると賛否両論ですが、「昔は良かったではないか」「それくらいは良いではないか」などと思ってしまうこともあります。指導者は勝つことにこだわり、「勝利至上主義」になってしまうことが多々見られました。選手の意思は無視され、指導者が勝ちにこだわり過ぎて、思うような結果が出ないことにいら立ち、ついつい選手に手を上げてしまったり、選手のふてくされた態度に頭にきたりなど理由はさまざまですが、全ての諸悪の根源がここにあります。これでは、選手たちのことを本当に大切な存在と考えて、向き合っているとは思えません。もうそんなことを言えない時代です。一つの行為の背中合わせには、「法律」という言葉があることを忘れてはいけません。近年、情報網が発達し、SNSなどで何でも情報が得られる便利な世の中になり、良くも悪くもの時代になりました。
指導者は選手に対して、「絶対的権力」を持っていることを忘れてはいけません。選手を「自立した個人」と考え、選手が主体的に判断して行動できるように促し、選手の権利や尊厳、人格を尊重し、公平に接することが、暴力や暴言などを排除できると確信しています。
日本サッカー協会(JFA)が目指す「サッカーに携わる全ての人々を『サッカーファミリー』として迎え入れ、その拡大を図るために、悪いことは罰すれば良いだけでなく、その前に『その行動をなぜしないといけなかったのか』『そうさせたのは何が原因だったのか』を考える」ために、規律・フェアプレー委員会の組織の充実を図る目的で、以下の3つの部会を発足しました。各部会は、部会長を中心に活動しています。
(1)ウェルフェアオフィサー部会
リスペクトやフェアプレーを啓発・促進し、暴力や差別などの防止活動を通じて、問題を未然に防ぐ、あるいは顕在化した問題の解決を図るとともに、問題の内容や重大さによっては、司法機関や諸関連組織への橋渡しの役割を担います。各カテゴリーで認定講習会を開催し、理解を求める啓蒙活動を行い、将来的には指導者全員にウェルフェアオフィサーの資格を取得してもらおうと考えています。
(2)マッチコミッショナー部会
JリーグやFリーグ、47都道府県サッカー協会(FA)で資格者がおり、取得した資格を生かし、各カテゴリーの大会でマッチコミッショナーを配置する大会運営を目指しています。
(3)規律・フェアプレー部会
鹿児島県は、南北で600kmあり、離島もあります。各地でリスペクトの精神を根付かせることを目標に、罰することだけでなく、U-12年代のときにフェアプレー賞を与え、反則をしたらイエローカードやレッドカード、思いやりのあること(リスペクト)をしたらグリーンカードを提示し、この年代の特権でもあるグリーンカードの力で、サッカーを通じて子どもたちに家庭内でもリスペクトの精神を指導しています。
暴力や暴言を根絶するためには、U-12以下の保護者に対し、リスペクトの意味を理解してもらうことが第一義であると考え、今年度からリスペクト研修会を開催しています。今年度は沖永良部、種子島、奄美大島で開催。奄美大島では、松崎康弘JFA常務理事とJFA事務局の永井雅史氏にも参加いただき、地元の保護者約100名に対して無事に目的を達成することができました。今後も年2回、離島での研修会を開催する計画です。
【報告者】上久保孝志(鹿児島県サッカー協会規律フェアプレー委員会委員長)
※このコラムは、公益財団法人日本サッカー協会『テクニカルニュース』2018年11月号より転載しています。
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