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[特集]GKへの理解 川俣則幸JFA GKプロジェクトリーダーインタビュー 前編
2020年06月03日
JFA GKプロジェクトの先導役として、GKの普及や育成・強化、指導者養成に力を注ぐ川俣則幸リーダー。長らくGKの活動に携わる中で感じている変化、GK活動全般の成果や課題、今後プロジェクトで取り組んでいきたいことなどを聞いた。
インタビュー日:2019年12月23日
※本記事はJFAnews2020年2月に
掲載されたものです
GKに対するポジティブなイメージが生まれている
――サッカーではGKを志す選手も増えてきていると思いますが、その現状をどうご覧になっていますか。
川俣 サッカーと出合う入り口の部分で、GKに特化したスクールを開催している方がいたり、スポーツクラブの活動の1コマでGKを扱ったりするなど、全国の皆さんの地道な活動によってその数は確実に増えていると思います。また、Jクラブでも低年齢を対象としたGKスクールなどを開催するところが増えています。その背景には、GKの重要性が認知されてきたことがあります。2018FIFAワールドカップロシアでもGKに関する話題が多数ありましたし、GKへの注目度が上がっていることも良い作用をもたらしています。また、人工芝などグラウンドの整備が進んだ結果、プレー中のけがのリスクが下がるなど、もともとあったネガティブなイメージも払しょくされつつあります。さまざまな要素でGKというポジションを始めやすい素地ができてきたと思います。
ただ、われわれとしては、GKをやりたいと思う選手をもっと増やして、「みんながGKをやりたい」と思えるような、人気のポジションにしていきたいと思っています。
―― 昔はよく見られた、あまり身体能力の高くない選手にGKを任せるという風潮も解消されつつあるということでしょうか。
川俣 U-12年代では2011年から8人制サッカーが導入され、GKが攻守共に関わる場面が格段に増えました。その結果として、GKの足元のテクニックや予測を伴った準備の質、プレーに常に関わり続けるためのサッカー理解などが飛躍的に向上しています。話を戻すと、8人制サッカーではGKのウェイトが大きくなるため、良いGKがいないと勝つことが難しくなってきています。ですから運動能力が比較的高い選手がGKになる傾向が見られます。実際にU-12年代の日本一を決める「JFA 全日本U-12サッカー選手権大会」では、GKが活躍するチームが勝ち上がってきています。その一方で、GKの責任が問われる傾向にあるため、「自分がミスをして点を取られるのは嫌だ」と敬遠する選手がいることも事実です。指導者や保護者など大人が、失点した際にGKを批判したり、責任を転嫁することがまだあるからだと思います。GKは「勝った、負けた」「点が入った、入らなかった」に直結するポジションのため、批判の的になりやすい。ですが、GKの責任ではない場合もありますし、そもそも大人がそれを助長してはいけません。
GKを増やしていくために今後必要なこと
――そうした現状を打破していくために必要なことは?
川俣 サッカーの現場では、主役は選手であり、育成年代の選手に対する大人の関わり方は非常に重要だと思います。
また、サッカー界全体として、GKに対する理解度をもっと上げていかなければならないと思います。これまでは試合のハイライトといえばゴールシーンが中心でしたが、Jリーグの試合をDAZNが放映するようになり、「スーパーセーブ」を取り上げています。こうしたポジティブな発信はGKのステータスを上げるためにも大事です。
――GKをさらに人気のポジションにしていくためのポイントは何でしょうか。
川俣 世界のトップで活躍する日本人GKが出てきて、それを子どもたちが見て、「ああいう選手になりたい」と憧れを抱くようなロールモデルが出てくるといいと思います。強豪国であるイングランドでも、トップで活躍するGKが出てくると、GKをやりたいという子が一気に増えるそうです。世界のトップで活躍するGKを育てつつ、すそ野を広げる取り組みを同時進行でやっていく必要があります。
――GKの育成・強化の面で、日本人GKの現在地をどのように捉えていますか。
川俣 2018年のFIFAワールドカップ(ロシア)ではベスト16となりましたが、上位16チームのGKの中で日本がどのくらいの位置にいるかというと、大会でのデータ(シュートの阻止、パス成功率、クロスに出て行く頻度など)にも裏付けられている通り、やはりまだベスト16の域を出ていないと思います。
Jリーグでは近年、外国籍選手のGKが増えて「日本人GKの育成はどうなっているんだ」という話を聞くこともあります。しかし、継続した選手育成の中で、今後は日本からバラエティー豊かなGKが数多く出てくるはずです。そうした選手が海外にチャレンジしたり、Jリーグでどんどん活躍していけば流れは変わっていくと思います。
――多種多様なロールモデルが出てくることが理想ということですね。
川俣 過去のワールドカップに出場しているのは、川口能活さん、楢﨑正剛さん、川島永嗣選手の3人しかいません。彼らを参考にして、日本人GKとして明確なGK像を打ち出せないかと聞かれることがありますが、われわれが目指しているのは過去の分析から目標をつくるのではなく、未来を予想して世界で通用するGKを育てることです。ですから、「日本人GKはこうでなければならない」と言うつもりもありません。異なる特長を持った有能なGKがたくさん出てくる。そのGKたちがロールモデルになればもっとレベルは上がっていくと思います。
海外のクラブで活躍する選手も増えるなど、
日本でもさまざまなタイプのGKが輩出されてきた
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